動き始めた“民主”日本~1950年前後~
〔未来に生かす記憶〕
昭和25年を中心とする数年間は、波瀾万丈の時代だった。米軍の記録した戦後日本の映像と個人の16ミリフィルムでその時代を旅する。
新憲法が施行され、日本国民はアメリカの民主化政策を受け入れて新しい国作りにまい進し始めていた。しかし、昭和23年の福井大地震の自然災害が立ち上がりかけた日本国民を打ちのめす。労働者がようやく権利を獲得し、組合活動が盛んになったのもつかの間、連合軍総司令部(GHQ)による弾圧が始まる。昭和25年には朝鮮戦争が始まり、アメリカは対日政策を変更、軍備を捨てたはずの日本に「警察予備隊」を設置した。これが現在の自衛隊の始まりだった。
昭和23年には東京裁判(極東軍事法廷)の判決が下った。昭和21年5月から始まった裁判で、多くの知られざる戦争犯罪が明らかになり、東条英機以下7人が絞首刑になった。一方、岸信介や児玉誉志夫らA級戦犯で、釈放されたものもおり、彼らはその後の正解や財界に返り咲きしている。海外からの引揚げも続き、昭和25年にはソ連からの本格的な引揚げが始まり、向こうの規律を学んだ復員兵たちが帰国したその足で共産党に入党するなど、話題となった。
楽しい話題もある。昭和25年には、前年に発足したセ・パ両リーグのうち、パ・リーグの開幕イベントを見ることが出来る。いかにもアメリカ内図されたセレモニーが楽しい。大阪の上田順一さんの所蔵フィルムで、珍しい奈良・興福寺の文殊会を紹介する。かわいいお稚児さんの行列や、奉納車(お経を周りに書いた山車のようなもの)のお練りが貴重シーンだ。他に、お正月の晴れ着ばかりを撮影した映像など、復興する日本の姿がよく分かるタイムトラベルだ。
1.昭和23年
5月3日 憲法施行1周年記念の祝典 参議院本会議場
6月28日 福井大地震
8月19日 東宝争議 砧撮影所
2.昭和23年~25年
10月19日 第二次吉田内閣成立 吉田茂
民主自由党同交会大会
衆議院議長松岡駒吉・社会党書記長浅沼稲次郎
11月12日 東京裁判判決(昭和21年5月~)法廷
極東国際軍事法廷 ウェッブ裁判長 キーナン主席検事 荒木貞夫 土肥原賢二 板垣征四郎 木戸幸一 小磯国昭 松井石根 東条英機
12月23日 巣鴨留置所 戦犯絞首刑執行
12月24日 A級戦犯釈放
昭和22年10月24日 外地からの引揚げ
名古屋港 DDT 復員列車
昭和25年1月22日 ソ連からの引揚げ
舞鶴港 国立舞鶴病院 傷痍軍人
昭和25年3月18日 プロ野球 パ・リーグ開幕 後楽園球場
3.昭和25年~32年
昭和25年6月25日~朝鮮戦争
マッカーサー元帥韓国訪問
昭和26年7月10日 和平会談のため韓国入りしたリッジウェー中将
昭和25年1月7日 1000円札発行 紙幣ができるまで 内閣印刷局
昭和28年4月25日 奈良・興福寺文殊会 稚児行列 奉額車 維摩経の文字
カラーストーリー・オブ・ジャパン
昭和32年1月1日正月 鎌倉 明治神宮 浅草仲見世 浅草寺
資料協力:米国国立公文書館・毎日新聞社・上田順一