青春のキャンパス~50年前の学生生活~
〔未来に生かす記憶〕
戦前の大学はエリート教育の頂点。もちろん、通う学生たちもエリートの象徴で、詰め襟の学生服に学帽をかぶったスタイルは憧れの存在だった。戦後、学校制度があたらしくなり4年生の新制大学、今でいう「大学」がたくさん生まれた。専門学校扱いだった女子大学も大学として認められるなど、多くの若者により広く学びの門が開かれる時代がきた。
今回は、そんな戦後大学生の学生時代を描いた2つの作品にタイムトラベルする。50年前のキャンパス、今は懐かしい「青春」の時代だ。
まずは1952年に制作された「光ある日まで」。京都大学や同志社大学などの学生たちが出演するドキュメンタリー風の作品だ。父親の反対をおして大学へ進んだ農家の次男を主人公に、当時の大学生活をリアルに描いている。新しい友達、アルバイト・・・。一見今と変わらないように見えるが、自らの意思で学ぶ学生の九郎は堪えない。働かなければ、勉強どころか食べることさえままならない生活の中で、主人公はついに体を壊し、志なかばにして、大学を後にする。
実際、1953年の文部省調査でも、シシン等当時の大学生50万人のうち約43%がアルバイトをしなければ学業を続けていくことが難しいという報告があったほど。自分の血を打ったり、伝染病の実験台になって学費を稼ぐ学生もいたというから、遊ぶためにやる今のアルバイトとは比べようもない。
もうひとつは1954年制作の関西大学のPRフィルム。入学式から卒業式まで、1年を通じた様々な学生生活を紹介している。この頃の大学進学率は10%で、現在は在学生が2万8000人を超えるマンモス校の関西大学も、当時は約半分の1万3000人ほど。全国で見ても大学生は50万人に満たなかった。
何でも簡単に手に入る現代で、当時の若者たちの苦労とその内にある喜びは、どう理解されるだろうか。今を生きる若者たちこそ見てもらいたい時代の記録だ。
1.「光ある日まで アルバイト学生の手記」
(昭和27年頃制作 提供:世界学生奉仕団 解説:芥川比呂志(文学座))
・農家の次男 大学進学を希望
・土間 炊事 食事風景
・進学のため出発をする次男を見送る家族
・汽車で京都へ
・下宿先で働く
・入学試験
・合格発表 角帽をかぶる学生
・寮生活
・タバコをくゆらせながらディスカッションを楽しむ学生たち
・学生帽を買いに
・女子学生
・入学祝賀会
2.「光ある日まで アルバイト学生の手記」続
・牛乳配達のアルバイト
・路面電車に乗車する学生
・講義風景
・印刷工場でのアルバイト
・供血
・デモの打ち合わせ
・皿洗いのアルバイト
・マフラーとコートを質屋へおさめる学生
・花見
・万年筆の販売
・本屋で立ち読みで勉強
・過労による体調不良
・下宿先に友人が見舞いへ
・友人の入院費をかせぐため喫茶店でアルバイトをする女子学生
・入院
・学生サナトリウム(川崎市稲田登戸)昭和30年4月完成
3.「関西大学~学生生活~」
(昭和29年制作)
・阪急大学前駅(現:関大前駅)
・入学式
・学生課 学生寮
・講義
・桜の下で談笑する学生たち
・図書館で本を借りる学生
・ディスカッション
・文化祭 演奏 演劇
・阪急電車 大学前駅 夏期休暇
・無料法律相談所
・応援団 野球 関関戦(関西大学対関西学院大学)
・大学祭 パン食い競争 ファイヤー
・卒業試験
・卒業式 卒業証書授与
資料提供:同志社大学 関西大学