創られた「神国日本」
太平洋戦争直後、アメリカの没収した日本のフィルムの中から、非常に珍しい作品が見つかった。
昭和12年、日中全面戦争に突入して間もなく、国民精神総動員運動がスタートした。国の非常時に備えて全国民が心を合わせなければならない。そのために何をするべきかで国の考えたことが、国民ノ精神のより所ともなる国体に対する強い信仰心を植えつけたことだった。このフィルムはそのために制作されたものと思われるが、当時の日本の歴史教育を動く映像に仕上げたもの。
日本という国が神によって創られ万世一系の天皇が統治する国である、と大宣伝上したものだ。当時の日本は、日本独自の紀元年を持っていた。それは、神代から始まる。天照大神の孫ニニギノミコトが、高天ケ原から九州の高千穂に降臨した、と古事記や日本書記にあるが、まさに当時の日本の歴史はここから始まり、日本こそ世界にまたとない神の国であると国民を教育したのだ。
現代の若者には、理解の外であり、噴飯ものだろう。しかし、当時の国民の多くがこれを真面目に受け入れていたことを思うと、教育の恐ろしさが迫ってくる。日本の1時期の一つの証言として現代人に見てもらい、当時を判断する材料にしてもらいたい。
1.タイトル、オープニング
満洲を進軍する日本軍
2.「皇道日本」
東宝国策映画協会
撮影及編集 円谷英二
序章
堅忍持久の垂れ幕、国家精神総動員運動のポスター
「天壌無窮」
万歳楽 雅楽の演奏と舞
空の映像に日本神話のナレーション、伊勢神宮内宮、熱田神宮。
「天孫降臨」
高千穂神社、霧島高千穂、桜島、阿蘇山
3.神話に見る国のはじめ
可愛山稜、霧島神宮、高屋山稜、鹿児島神宮、吾平山稜、鵜戸神宮。
「建国大業」
神武天皇、宮崎神宮、竃山神社、紀伊勝浦、那智の滝、瀞八丁、吉野山、橿原神宮、紀元節、久米舞。
「万世一系」
崇神天皇御陵、垂仁天皇御陵、景行天皇御陵、仁徳天皇、高津神社、仁徳天皇陵、後醍醐天皇、笠置山皇居址、隠岐島黒木御所址、吉野吉水院、後醍醐天皇御陵、吉野神宮址、後奈良天皇、醍醐寺、孝明天皇、京都御所。
4.歴代天皇
明治天皇、明治神宮、 聖徳記念絵画館、歴代天皇の御陵、大正天皇御陵、太平楽、元寇のレリーフ、石清水八幡宮、平重盛、藤田東湖、乃木希典、富士山、詠富岳。
5.エンディング
中国、満洲での日本軍
(米国国立公文書館提供)