目指すは映像詩~1960年代~
〔見ればむかし〕
昭和30年代、8ミリカメラが流行し、家族の記録などを撮りはじめた人はすくなくない。今回紹介するのは、8ミリにのめり込み、セミプロとしてたくさんの作品を制作、ついには朝日放送のカメラマンにまでなってしまった島田敏宏さんだ。たくさんの作品の中から「山の湖といで湯を巡る」「丹波路の秋」「水郷」の3つを通じて1960年代の美しい日本にタイムトラベルすると同時に、単なる旅の記録から始めて、映像詩を目指していた若き日の島田さんの意気込みに触れていく。
ある山の映画を見て感動した島田さんはそれを作ったのがセミプロと聞き、それまで映画などは特別の人が作るものだと思っていたので目からウロコ。自分にもできると思い早速勉強を始めた。毎月出る「小型映画」など8ミリの雑誌を読み、基礎を学んで2年がかりでカメラを購入した。月給は1万5千円、カメラは4万8千円の時代だった。コダクロームのカラーフィルムは1本2千5百円~3千円。宝物のようなフィルムで初めてカラー映画を撮影したのがこの富士五湖と伊豆の旅。これは無声なので島田さんをスタジオに招き当時の貴重な話を聞いている。
「丹波路の秋」と「水郷」はその後4年ほどで制作された作品だが、音楽・ナレーションもつけて完全な「小型映画」に仕上がっている。丹波路はフジのカラーフィルム、水郷はモノクロの作品だ。特に水郷はシネポエムというに相応しい美しさ。この時も普通の旅の記録として撮影したが水郷の光と影の美しさに魅せられて、撮ったものの大方を捨て、この作品を作り上げたという。今では見られない水郷情緒をはじめ、美しかった日本の自然にたっぷりとひたることのできるタイムトラベルだ。
1.「山の湖といで湯を巡る」
談話・撮影者:島田敏宏さん
・昭和35年制作
・大阪駅 富士駅 富士五湖めぐり 観光バス 富士山本宮 白糸の滝 土産物屋 本栖湖(上九一色村) 富岳風穴 紅葉台 樹海 精進湖 河口湖 観光船 河口湖ホテル モーターボート 富士博物館 長尾峠トンネル 強羅 ケーブルカー 強羅公園 熱海 熱川 バナナ園 ワニ園 源泉 ホテル 石廊崎灯台 下田 浄蓮の滝 天城峠 修善寺温泉 旅館 土産物屋 漁港 沼津駅
2.「丹波路の秋」
・昭和39年制作
・丹波篠山 民謡 篠山城 青山神社 武家屋敷 丹波焼 丹波栗 篠山口駅 弁当売り 鉄道
3.「水郷」
・昭和39年制作
・水郷国定公園 水路 和船 鮒の雀焼き 船頭
資料協力:島田敏宏