新日本ニュース第12号
1.民主日本の建設に投票を
4月10日の戦後初の総選挙を前に日本ニュースの画面に棄権防止のキャンペーンが上映された。字幕の中には民主的な選挙を妨害する者は進駐軍に届けるようにと求める文字があった。
2.埋没近し黒神部落 ‒櫻島爆発‒
鹿児島県の桜島が3月15日、大正15年以来20年ぶりに大爆発を起こした。溶岩は幅1.5キロにわたって流れ、東海岸の黒神地区の168戸は全滅の危機にさらされた。(注朝日新聞・毎日年鑑などでは噴火は3月11日と記録されている。
噴煙を上げる桜島。飛び散る火山弾と噴煙。山腹をころげ落ちる岩石。溶岩流で燃える山林。火山灰で白くなったつばきの葉・花や立ち枯れした麦畑。全員が避難して無人となった黒神地区の家々。
3.時の話題
・ソ連作家シーモノフ氏 北海道へ
独ソ線をテーマにした「ロシアの人々」の著者コンスタンチン・シーモノフ氏(30)ら4人は20年暮来日し、日本各地を視察していたが、新進作家のシーモノフ氏は3月16日北海道石狩町を訪れ、地元青年らと懇談した。雪道を馬そりで石狩町を訪れたシーモノフ氏。ストーブを囲んで地元の青年たちと話し合うシーモノフ氏。
4.欧州から引揚船 外交官ら帰国(浦賀)
欧州在住の外交官や報道関係者を乗せた引揚船筑紫丸は3月26日浦賀に入港したが、米第8軍は帰国した日高イタリア大使ら外交官が日本の海外資産である500万ドルに上がる現金・宝石を持ち帰ったとして荷物を調査した。このため日高大使らの上陸は翌日以降となった。
乗用車で久里浜の引揚援護局に到着した外交官。出迎えの家族や外務省関係者らと対面する引揚外交官と洋装の夫人ら家族たち。
5.帝室博物館 再開へ(※音声欠落)
帝室博物館(現 東京国立博物館)の美術工芸品は戦時中奈良・福島・岩手などに疎開し休館していたが、終戦とともに再び上野にもどり、3月26日から2年ぶりに一般に公開されることになった。
貨車からトラックに積まれるこん包された美術工芸品。博物館の外景と館内に陳列される仏像や絵画。
6.皆さんの声
・深刻な住宅難
東京など各都市は戦災によって焦土となり、住宅難は深刻だった。住宅の建設は資材などの不足で進まず、戦災者や引揚者は焼け残った知人の家に実を寄せ、1軒の家に数世帯が暮らしていた。
7.“カムカム”英会話に人気集まる(※音声欠落)
米軍の日本進駐とともに英会話熱が高まり、「日米会話手帖」が360万部発行されたり、各地に英会話じゅくが出現した。ラジオも20年9月から「実用英会話」の放送を開始したが、21年2月1日から始まった平川唯一さんの「英語会話」は“カムカムエブリボディ・・・・・・”のテーマソングとともに人気が上昇し、ファンの自主組織であるカムカムクラブは全国に1.000支部誕生した。
8.卒業式に「蛍の光」復活(※音声欠落)
戦時中、米英など敵性国の音楽は横文字とともに禁止され、「蛍の光」もスコットランド民謡であるとして卒業式では歌われなかったが、焦土と化した21年春、再び卒業式に「蛍の光」の歌声が流れた。
9.旧円の行方
インフレ抑制の非常手段として新円切換えが実施されたが、旧円の発行額は封鎖を実施した2月18日には618億円に達した。旧円は日銀本店に回収され、再び日銀券に生まれ変わった。
10.強権供米 絶対反対の叫び(栃木県)
供米不振に強権を発動することになり、全国に先駆けて栃木県では3月16日から成績不良の農家1万500戸を対象に収用を開始した。強制供米の執行官に暴行する者もあったが、説得に応じる農家が多く、16日から20日までの5日間の供米は10万俵を超えた。一方、共産党県委員会は農民組合と反対運動を起こし、3月22日に6.000人が、さらに25日には数千人の農民が栃木県庁に押しかけ、小川喜一知事と交渉した。
収用令書を持って農家を訪れた執行官とそれを見守る農民たち。栃木県庁前を強権発動と書かれたのぼりを持ってデモ行進する農民。県庁前の農民大会で説明する小川知事。知事室で農民代表と話し合う小川知事。交渉の経過を県庁前で待機する農民たちに説明する代表。
New Nippon news No.12