中日ニュース第356号
悩みの十才(青森・茨城・東京・新島・静岡・愛知)
自衛隊は今年で十年目を迎えました。ひかげものといわれながらもいまでは総勢二十五万人。十一月一日の記念日には、池田首相を迎えて、神宮外苑一杯に大パレードを繰りひろげました。
しかし「戦力なき軍隊」も貧乏国にとっては、大変なぜいたく品、何よりも納税者へのPRが大切と浜松航空基地では連日兵隊さんのガイドつきで見学をさせ、サービスにこれつとめています。災害には必ず出動、時には中 学校のグランド作りのお手伝いに出かけるなど、仲々の人気を集めているようです。
しかし、こうした苦労の甲斐もなく、新島のミサイル基地騒動は地元民の猛反対が続いて未だ立往生しています。
こうした中で隊員の中には複雑な立場の中で肩身のせまい思いをするよりはと、昨今の好景気にのって自衛隊で技術を覚えると、さっさと民間会社へくらがえする人が増えて来ました。赤旗ノイローゼの会社にはひっぱりだ このようです。しかも新隊員の応募者は少なくなるばかりで、募集係は中学校の中にまでスカウトにのりこむなど人員確保に頭痛ハチマキ。
この二十五万の若者たちのほとんどは戦後派。武装することをのぞけばただのサラリーマンとわり切ってか、土曜の午後ともなればどっと町へくりだします。スマートボールにパチンコ、映画、一杯のみやかランデブーと若 さを勢一杯に楽しんでいます。
精神教育を叫ぶ防衛庁のおえら方をしりめにそれぞれの道をゆく若者たち。悩み多き十代を迎えた「戦力なき軍隊」をルポルタージュしました。
日本の群像
大衆とともに
十一月三日は文化の日、
恒例の文化勲章に大衆文壇から初めて吉川英治氏が選ばれ紫綬勲章には、喜劇役者の榎本健一氏が晴れの受賞に輝きました。文化勲章も皆さんのお蔭げですと謙虚な吉川氏。
そして過去の暗い社会の中で笑いとペーソスで人々と歩んできたエノケンの受賞は、こうした世界に生きる人々に大きな希望を与えたことでしょう。
こうした一面、未だ何んの楽しみもない、山合いの寒村を文字通り村から村へ渡り歩く旅芸人たち、彼らは古くからドサ廻りの愛称で素朴な人々に愛され親しまれてきました。
三年振りにかかったお芝居だけに村の人たちはまだ陽の高いうちからつめかけ、幕の開くのを待っています。舞台はご存じ清水港は音で聞える次郎長物語そしてともすれば笑いを忘れがちな貧しい村々をめぐり歩き、ささや かな愉しみを共に分ち合ってゆくことでしょう。
Chunichi news No.356