中日ニュース第346号

六甲で三十三名生埋め（兵庫）
　　台風十六号が上陸した七月二十九日、西宮市芦有開発会社の道路工事現場で起った土砂崩れは、大林組の作業員宿舎二棟を押つぶし、三十三名が生埋めになりました。
　　工事現場は、六甲山系中最も土質がもろく、作業員宿舎はそのガケ下にあったのです。
　　すでに十名の遺体を収容、残る十四名の生存も絶望と見られています。
スポーツ
ローマオリンピック花やかに開幕
　　十七回オリンピック大会は八月二十五日ローマのオリンピックスタジアムで花やかにその幕を切りました。
　　十万の観衆の歓呼のうちにまず入場行進が始りギリシャを先頭に、最後のイタリアまで八十四ヵ国四千六百人が勢揃いしました。日本代表団は三十番目。南欧イタリアの燃えるような太陽の下で白一色の服装はまことにあざ　やかでした。今年はガーナ、スーダン、モロッコなど黒人選手団も多く、史上最大といわれる大会の雰囲気はまことにいろとりどり。
　　五時半、オリンピック発祥の地、オリンピアから延々千五百キロを運ばれた聖火がジャン・カルロ・ペリス少年の手にかかげられて到着。開会式典は最高潮に達しました。熱戦のはじまる前のこの壮厳な式典の模様をごらん　下さい。
高山、善戦むなし　世界フェザー級選手権
　　プロ・ボクシング世界フェザー級タイトルマッチ、チャンピオン、アメリカのデビー・ムーアに対し全日本チャンピオン高山一夫との十五回戦が八月二十九日夜、東京後楽園球場で行なわれました。
　　試合は前半、ムーアの左ジャブから右のロングフック攻撃に対し高山は果敢にインファイトを示し左右のフックで応戦、しかし後半に入り十二ラウンド、ムーアの右アッパーを受けた高山はロープを背に全くの棒立ち、カウ　ント四のロープダウンをきっし、更に十三回にはムーアの雨アラレの如く打ち込む左右パンチに高山は棒立ち、しかし、高山の恐るべき斗志で気力を尽した死斗も遂に判定負、かくしてムーア二度目のチャンピオン防衛に成功
　すると共に、高山に期待した世界の王座も又夢と破れたのでした。
日本の群像
越前平野の人びと（福井）
　　北陸の米どころ越前平野は今年も豊かに稔っています。照れば豊作、吹けば凶作と米しかつくれない米どころの農民は、毎年の天候に運命を委ねてきました。こうした風土はいつのまにか強い信仰心を植えつけ、やがて仏教　が生活のすべてを支配するようになったのです。そのため農家の造りまで仏様本位にできています。一〇〇万円もする豪華な仏壇もめずらしくない有様。仏壇の産地、三国町には十五軒あまりの木地屋塗屋が立ち並び、代々世
　襲の名人たちが伝統を受け継いでいるのです。仏事といえば金もいとわぬ土地柄だけに、一五〇〇万円もする鉄筋コンクリートのお寺が建設されています。
　　農閑期には一月十数回の念仏講が開かれますが、今日は、この夏最後の説教を聞こうと老人たちが集まってきました。ここは老人たちにとって唯一の社交場であり、休息の場所でもあるわけです。
　　こうして、米と念仏の因縁に結ばれた越前平野の人びとは、今日も秋の取り入れにはげんでいます。

Chunichi news No.346