中日ニュース第338号
五輪陸上代表決る
ローマオリンピック兼第44回日本陸上競技選手権大会は、七月一日から三日間東京の国立競技場で行われました。
各種目にわたり、ローマ大会標準記録突破を目ざして争われましたが、低調なトラック陣に対し、フィールド陣はハンマー投げ岡本の六四米〇二の日本新記録を筆頭に走り高とびの杉岡、女子走り巾とびの伊藤、男子走り巾と
びの安間、そして三段とびには桜井を始め六人が標準記録にめじろおしと盛況を示し、結局代表選考会では先きに決ったマラソンの三人を始め男女二〇人が晴れの代表に決定、ローマでの健闘が期待されます。
カメラ風土記
知多の島々(愛知)
東に伊良湖畔、西に知多半島の丘陵を望み、出船入船でにぎわうここは愛知の篠島です。僅か五キロにみたない周囲に三千五百人が住み、土地が狭いため十坪の土台に十二坪の上部構造という変った建築が見られます。
この土地には、「若い衆やど」という昔ながらの習慣があり、結婚前の青年が今日でも組織化された集団生活をおくっています。また、娘遊びも公認され、合意による結婚は、旧い形式の中に新しさを見ることができます。
一方築見島のヒヒの放し飼いは、世界でも珍しいとされ、このように、昨今の知多の島々は、社会学と動物学の生きた教材になっているようです。
日本の群像
政治記者(東京)
たった一つしかないその椅子をめざして、大野・石井・池田の三氏が名のり出て、早や十日がたちました。ゆうつそうな顔つきで記者クラブにやってきた川島幹事長もまとめ役の苦労が身にしみているようだ。日曜日の朝、 大野さんが南平台の首相公邸にやってきた。岸主流派が池田支持に廻ったという噂がある。人情家伴睦氏は、今、それをたしかめることができるだろうか。
問題のカギを求めて大野系の記者たちは一斉に追っかけをはじめる。次の日、大野はと石井派は帝国ホテルに落ち合い公選に共同戦線をとることになった。夕方になると記者たちは情報の交換に集まり話し合います。そして 取材は暗転して夜の舞台へ―。
多数派工作の行方を追って大物の私邸へ夜廻りが続けられる佐藤付きは夜更け単身世田ヶ谷の知り合いの国会議員を訪ねました。この人は佐藤派に属しているからその方の情報が掴めるかも知れません。しかし、時には相手 の迷惑を考えれば書くこともできず収穫を前に、奇妙なジレンマに落ち入ることもある。
家に帰るのは真夜中。楽しかるべきわが家も簡易宿泊所に過ぎない。今までもそうであったように、政治部記者である限り家庭サービスをすることができないだろう。
松村邸へは朝がけです。散歩中の主と話し合いながら情報を掴みます。こうして、派閥が派閥と噛み合い思惑が思惑とかみ合う首班工作に、政治部記者は政治の実態に芽瑠を加えながら昼となく夜となく働きつづけるのだ。
Chunichi news No.338