中日ニュース第332号

スポーツ
米倉またも王座を逸す
　　日本で初の世界バンタム級選手権試合は初夏の風もさわやかな二十三日夜東京後楽園でチャンピオンメキシコのベセラに日本の米倉が挑戦して行われました。
　　米倉の軽快なフットワークはチャンピオンを最後迄苦しめましたが結局判定でチャンピオンが選手権を防衛、米倉又も世界の王座を逸した一戦でした。
追いつめられた岸内閣
　　政府自民党が警官を入れて新安保条約を強行成立させた翌日社会党議員団は大挙して、南平台の首相公邸にのりこみ、岸首相との会見を要求しました。双方の会見は場所を官邸に移して行われたものの、岸首相は批准が終るまでは、解散も総辞職もする気はないと、きわめて高姿勢で、社会党もとりつくしまもない有様でした。
　　この日、首相官邸をとりまいた抗議のデモ隊は、南平台の公邸にも殺到し警官対と激しく衝突、公邸も官邸もデモに囲まれた岸首相は出るに出られず、えんえん七時間もの間官邸の中に閉じこめられていました。こうした中で、自民党内の各派は、岸首相と心中することを恐れて、あいまいな態度をとり、反主流の各派は、首相の退陣を求める有様です。岸内閣は全く孤立することになりましたが、内閣が自らの責任においてすみやかに事態の収拾を図ることが望まれています。
恐怖の誘かい殺人
　　“無事に返して下さい”と涙で訴える両親の願いも空しく、三百万円の引きかえに誘かいされた、東京世田谷の尾関雅樹ちゃんは、五月十九日朝、乗りすてられた自動車の中から、無残な俵詰めの死体となって発見されました。捜査本部では　自動車の持ち主、東京杉並の歯科医本山茂久を有力容疑者と断定、何故罪もない幼い命まで奪わねばならなかったか、世の親たちの怒りが集中した誘かい殺人犯本山を追って、当局のきびしい追求がつづけられています。
大津波太平洋沿岸をおそう（北海道・青森・岩手・宮城・三重）
　　二十四日未明、日本の太平洋岸全域を襲った「チリ津波」は、三陸北海道方面を中心にして、ばく大な被害を与え、死者行方不明一七五人、被害家屋は約五万戸に達しました。
恐怖の波が襲ってから五時間後、最大の被災地五ヵ所へ―北海道厚岸部、青森県八戸市、岩手県大船渡市、宮城県志津川町、三重県尾鷲市―本社特別機を中心に空陸両面から特派員を派遣。大津波の爪跡もなまなましい現地の模様速報をとりあつめました。全国三万世帯の被災者たちは泥土に埋めつくされた廃墟の中からようやく跡かたづけに立ち上りはじめました。しかし津波の恐怖も未ださめやらず、人々の表情もうつろ、死の街の様子は悲惨そのものです。一刻も早く政府の万全な救援と復興の対策実施が望まれています。

Chunichi news No.332