中日ニュース第310号
世界の潮・日本の潮 一九五九年
今年の世界の話題は何といってもソ連の月ロケットの成功でしょう。輝かしい世界の話題をひっさげたフルシチョフ首相のアメリカ訪問は、東西の雪どけに大きな役割を果しました。
国内では統一地方選挙から参議院選挙にも自民党は社会党を破って大勝。然し相変らずの選挙違反で鮎川派の五千キロ逃避行は世間を驚かせました。世論を二分した安保条約の改訂は、今年の原爆大会、基地問題等に大きな反響を見せ、注目の最高裁砂川判決は、東京地裁へ差し戻しとなって、平和運動も大きな曲りかどに立ったのです。こうした中で総評でも、社会党支持をめぐって紛糾。西尾末広氏の総評批判から社会党は遂に分裂の事態を招きました。源田調査団による次期戦闘機ロッキードの決定、そしてヴェトナム賠償問題までが国会で大きな波乱を見せましたが、デモ隊の国会乱入事件によって社会党はますます苦境に立つことになったのです。
世情騒然だる中にも、皇太子と美智子さんの御成婚の、華やかな式典は大変な人気をさらいました。ミスユニバースに出場した児島明子さんも見事当選。プロ野球も大変なブームの中で南海が宿敵巨人を破って日本シリーズに初優勝をとげるなど数多いスポーツ界の話題の中でIOC総会は五年後の東京オリンピックのビッグニュースをもらしました。
一方社会面では、カミナリ族、神風登山の遭難、そして全学連の暴走まで、若人たちの話題が注目されました。南へ帰るか、北へ帰るか、三十八度線の姿そのままにもめつづけた朝鮮人の北鮮帰還も押しつまった十二月にやっと陽の目を見て第一船が新潟港から出港しましたが、民間自衛船までくり出した李ラインは、今年も不安な雲行きがつづきました。不況と企業整備に明け暮れ、首切りをめぐって労使が一歩もひかれぬドロ沼闘争の様相を見せはじめた炭鉱争議も新春へ長期闘争の構えです。
魔の九月――死者六千余り、史上空前の大被害をもたらした伊勢湾台風の被災者たちもまだ打ちひしがれた姿のまま新しい年を迎えようとしています。
こうして、一九六〇年代前期最後の年はさまざまな波乱を描いて幕を閉じたのです。
Chunichi news No.310