中日ニュース第299号
特集 伊勢湾台風―第二報―
伊勢湾台風は死者五千人、被害総額一千億円という空前の被害を残したまま去ってゆきました。
五年前の洞爺丸事件、昨年の狩野川台風と奇しくも一致した魔の九月二十六日から十数日。名古屋市南部、愛知県海部郡、三重県長島、木曽岬等の浸水地帯は、ドロ水に没したまま、排水のめどもつかず、住民達は食うや食わ
ずの孤立生活をつづけて来ました。
しかも救援活動ははかどらず伝染病は増加の一方という最悪状態に加えて、非常の雨が降りつづき、ついには、老人や女子供を集団避難させることになりました。うしろがみをひかれる思いで故郷を去った人達は、見知らぬ 土地での集団生活をはじめました。潔く水の恐怖も失せ、食足りたものの、将来の希望は何一つなく表情もうつろになりがちです。
水の漸く引いた地域ではその惨状が一層目立ちます。被災達は雨の日は水のため場所を求めて、晴れの日は肉親の遺体を求めて悪臭のただよう街をさまよい歩きます。
こうした中で国をあげての救援活動がつづけられていますが、被災地が余りにも広い為か充分に手がまわりません。一方の倉庫には救援物資が山積みされ、一方ではほとんど救援の手が差し延べられていないという手違いも ありました。
一方破壊された堤防の潮止め工事には勤労奉仕の学生達まで加えて必死の作業が開始されています、しかし破壊の爪あとは余りにも大きく、復旧のめどは立たぬままです。
今度の台風が人災であるか天災であるかの議論はともあれ、従来の台風対策にいろいろ批判がでて来ています。今度の惨事の原因となった堤防決壊について建設省土木研究所から一つの実験資料を与えられました。これによ
れば同じ災害の危険にさらされた地区は全国に数十カ所を数えます。
十月五日現在地を視察した岸総理は復旧のため全力をつくすことを約しましたが、更には台風対策自体の強化にも力をつくされることが望まれています。
Chunichi news No.299