中日ニュース第288号
夏のいろどり(北海道・栃木・東京・神奈川・名古屋・京都)
盛夏がやって来ました。ここ北海道は真夏といっても水はつめたく、河童たちは、たき火にあたる始末です。
こちら東京の江の島は、カミナリ族やハイティーンがまかり通って、おまわりさんはてんてこ舞。暑さがこうずるに及んで東京では殺人事件が続発。アパートの老婆殺し、更に、本屋の主人殺しと狂った世相の断面です。
江戸名物の花火大会が雨をついてくりひろげられ、しめて二千万円が夜空に消えました。
西に下って名古屋場所の優勝者栃錦の市中パレード。京都では、伝統の祇園まつりが都大路をねり歩き、真夏の絵巻をくりひろげました。
奥日光では、皇太子さまをお迎えして、第一回の国立公園大会。若人の楽しいリクレーションでした。
二十日から三日間東京の神宮プールで、日米水上対抗が行われました。五つの世界新記録がとびだす大熱戦となりましたが、殊に山中選手は四百メートルで、宿敵ローズを破るなど、八面六ぴの大活躍。スタンド一杯に埋め
た一万の大観衆を熱狂させました。
カメラ・ルポ
南紀のあけぼの(三重・和歌山)
“陸の孤島”といわれた近畿のヘキ地、紀伊半島を東と西から結ぶ紀勢線がこの程完成しました。七月十五日、祝賀列車急行“那智”はヂーゼルの響きも軽く尾鷲駅を出発。新線区間の三木里、新鹿間をすべるようにひた走
り、やがて熊野駅に到着です。
この日十河国鉄総裁ら一行を迎えた熊野市は、父祖三代。四七年の夢もみのり、終日祝賀行事にいろどられました。こうしたおめでたい話のかげに、人々に親しまれてきた“省営バス”が姿を消すことになりました。尾鷲と
木本を結んで四十五キロ、二十三年間無事故を誇る国鉄ご自慢のバス路線です。矢の川峠では、上下線の乗務員が感激の握手、茶屋のおばさんにも最後のお別れです。
こうして転任してゆく乗務員ともつきない別れ、静かに二十三年の歳月の流れを見送るのでした。
一方、沿線では早くもシノギをけずる観光ブーム。一旗挙げようと抜け目のない資本家が殺到。こうして袋小路をかこっていたこの地方も、東西に窓をひらき中京、京阪神の“奥座敷”としてはなばなしく発展していくこと
でしょう。
Chunichi news No.288