中日ニュース第255号
ようこそ北から南から(東京)
ソビエト御自慢のジェット機で、この程「モスクワ芸術座」の一行が羽田に着きました。
一行は「桜の園」「ドン底」で名高い名優揃いの豪華な顔ぶれです。
またこれより先、南の国フィリピンからガルシア大統領夫妻が来日。
お出迎えの天皇、皇后両陛下と親しく御挨拶を交されました。
翌二日には、衆参両院の歓迎会に出席。外国のお客様が国会で演説をしたのはこれがはじめて。
こうして大統領夫妻は数日を日本ですごされる予定になっています。
曽根五段初優勝―世界柔道選手権―
第二回世界柔道選手権は、十一月三十日東京体育館で開かれ、世界十八ヵ国から三十八選手が出場して熱戦を繰り展げました。
大会は日本代表曽根五段の初優勝で幕を閉じましたが、外国選手の実力も目を見張らせるほどの進歩ぶり。最近の欧米での柔道ブームがうかがわれます。
人気さらった美智子さん――東京
皇太子さまの清らかなロマンスで、いまどこもかしこもミッチブームです。十一月二十八日当の美智子さんはご婚約後、はじめて常盤松の東宮仮御所へ。
ところが、門前は待ちかまえていた群衆で車は立往じょうするさわぎ。
美智子さんは皇太子さまと将来の設計に楽しい一時をすごされました。このあと宮家を訪問するなど、婚約者としてのあいさつ廻りに忙しい美智子さんのスタートです。
カメラ・ルポ
師走のかげに(東京・静岡)
十二月一日からいよいよ一万円紙幣がおめみえして、町では早くも歳末大売出しが始まりました。
今年は去年よりも一割五分は上廻るだろうと景気のいい皮算用をたてていますが、こうした歳末景気のかげに、自殺をする人が増えています。妻子を残して死んだ人、あまりにもきびしい師走の断面です。
水害のツメ跡も生々しい伊豆では、避難所生活のまま寒い冬を迎えようとしています。狩野川の流域では、今なお遺体の捜索がつづけられ、行方不明のままの肉親を求める遺族たちの痛ましい姿がみられました。
引揚者一時宿泊所の貧しい仮住居のまま冬を迎えたのは、中共からの里帰り婦人たちです。多数の子どもを抱えて働きにも出られず、中共にいる夫が日本に来るのを唯一のたよりにしていますが、それも許可にならず、苦しい生活の中から、夫の入国許可を訴えています。
師走の風は、不幸な人びとの上にも容赦なく吹いているのです。
Chunichi news No.255