中日ニュース第243号
カメラ風土記
一、木曽路の秋――長野・岐阜
秋の七草もめっきり色を増したこゝは中仙道木曽の谷合い。
「木曽路はすべて山の中にある」と有名な冒頭ではじまる“夜明け前”の文豪島崎藤村のふる里です。
山路をゆく木曽馬の往来のはげしくなる秋は、また馬市のシーズンでもあるのです。
丹精こめて二万円。仔馬の寂しそうな瞳がいつまでも飼主の足を止めているようです。
然し平和なこの神坂村も、岐阜県中津川への合併をめぐって激しい利害の対立を見せています。
長野の藤村を岐阜の藤村にしたくないという長野県側。時代から取残されて経済文化の孤児になるなという岐阜県側。静かな山合いの地区はいま押寄せる新しい時代の波に苦悶の表情を見せています。
一、週間話題
★ポール・アンカ来日――東京
おなじみの歌手ポール・アンカが八月六日、日本を訪れました。
世界のハイティーンの胸をときめかしたポールはまだ十七才。キッスでにぎやかな歓迎陣に愛嬌をふりまきました。
★街の闘牛――南フランス
南フランスはパリヨンヌで雌牛レースが今年も一万人の見物人を集めて行われました。
街の真ん中で暴れ牛を追いまわす陽気であらっぽい年に一度のお祭りです。
一、妥協のない闘争
九月六日の早朝。文部省の前から道徳教育の研習を受ける関東ブロックの校長先生が特別仕立のバスに乗り込みました。
会場の御茶の水女子大には話合いでこれを阻止しようとする日教組の先生達がつめかけバスの到着を待っています。しかし文部省は先生達の裏をかいて、突如会場を変更して上野の博物館に入りました。
こうして道徳教育の研習会ははじめられましたが、文部省の強引な作戦に講義を受ける校長先生は割り切れない表情。この頃、裏門では全学連の学生が警官隊と衝突、四日間にわたって異常な迄の争いが続けられました。
こうした中で社会党は勤評斗争のあっせんに乗りだしましたが岸総理がこれを拒否したため、解決の途は全く閉ざされました。国会でも社会党が勤評斗争に対する警察当局の介入を鋭く追及しました。
妥協のない勤評斗争は泥沼の様相を見せています。
Chunichi news No.243