映像チュウニチニュースダイ273ゴウ V1H1920000015

中日ニュース第273号

撮影年月
1959年(昭和34年)4月頃
コレクション(提供者)
中日ニュース
撮影
発行
中部日本ニュース映画社
製作
中部日本ニュース映画社
配給
時間
10分35秒
米国国立公文書館オリジナル番号
館内限定公開 色彩無 音声有 貸出不可
内容

皇太子さまご結婚
★ 晴れの祝宴を間近にひかえ、大内山の松の緑もひときは眼にしみる今日この頃、皇居内広場では礼装に威儀を正した本番そっくりの馬車行列が行われています。
 皇太子ご夫妻の乗るアズキ色のご料車は昭和三年天皇即位の際皇后が乗られたもの。二台の供奉儀装車に乗るぎょ者は赤いニッカー・ズボンに白いソックスをはき白いガチョウの羽を三角帽にはためかせてさながら中世の軍人を思わせるきらびやかな姿です。
 他方、美智子さんが着る十二単衣も公開、新らしく織るには四ヵ月以上もかゝるといわれ、今回は皇后さまのお手持のものが使用されるが長袴だけは新調されることはなりました。
裳、唐衣、単衣、長袴など平安調のみやびやかな色彩が晴れの姿を飾ることでしょう。
 こうして、五日には美智子さんのお嫁入り道具が三台の大型トラックにつまれて、渋谷常盤松の東宮仮御所へ運ばれました。和、洋整理タンス各三本、長モチ二本など約五十個、一千万円というお支度でした。
こうしたなかで御両人が伊勢神宮参拝のご旅行にお使いになる“御料車第二号”の改装がこの程できあがりました。これは昭和八年、皇后陛下用の車輌を九百八十万かけて改装したもの。直径五十センチの菊の紋、ステップ、ドアの握り手などすべて金メッキという豪華なものです。
 一方、これを迎える伊勢でも準備は全く完了。お二人が旅装を解いてくつろがれる部屋は木の香もかぐわしく装いを新たにしました。
 折から外国からくりこむ花の観光団にまじって、元皇太子さまの家庭教師でもあったエリザベス・グレイ・バイニング夫人が来日、小泉信三郎博士やかっての教え子に囲まれて喜こびのほどを語っています。
 こうして町から村から慶祝気分が日毎に高まりを見せている五日、馬車の皇后の予行演習が行われました。先頭の露払いから一四〇米の華麗な行列が皇居から東宮仮御所へと向い、当日の盛儀もさこそと思われる壮観なものです。
★ かくて四月十日、静かに明けるれい明の皇后。午前六時三十分、ものものしい警備と報道陣に囲まれた正田家から晴姿も美しい美智子さんが両親に伴われて皇居へ向います。車はやがて二重橋から呉竹寮へ到着。一方皇太子さまも午前九時三十分、常盤松の東仮御所から皇居へ。午前十時には岸首相、衆参両院議長はじめ宮様方も続々と参集。やがて、美智子さんつづいて皇太子さまがそれぞれ呉竹寮から綾綺殿へと進みます。
 この日、正田家の郷里群馬県館林でも小学生が旗行列するなど、盛沢山の奉祝行事が行われました。
 かくて午前十時、いよいよ賢所でおごそかに「大前の儀」がとり行われます。つづいて十時四十分から「神殿の儀」「朝見の儀」と進み、簡素な中にも厳しゆくなお二人の結びの儀式はこれで滞りなく終わります。
 つづいてお喜びの両陛下と両殿下は表三の間に並んでカメラの前に立たれます。無事に式典を終って感慨深げに語る正田夫妻。宮内庁玄関で記念撮影に立たれたお二人は、やがて、きらめく馬車に乗って百万人の歓呼が待つ沿道を東宮御所へと、新緑もえいずる二重橋から出られます。
どっとあがる歓呼の声。馬車の上から手をふってこたえる晴れのお二人。皇居前から水青いお堀端に沿って走る馬車は、沿道を真黒に埋めた群衆に送られながら、やがて半蔵門から四谷へ。家々の窓という窓、屋根という屋根は鈴なりの群衆。神宮外苑絵画館前のイチョウ並木と絵画館ドームを背に、日本の未来の象徴として若いお二人を乗せた馬車は、歓呼にうずまく中をひときわひずめの音も高らかに進みます。
 延八キロの沿道を約五〇分、やがて馬車は、無事に青山御所に御到着。こうして世紀の式典は静かな夜の東宮御所の灯りと共に幕を下しました。

原文

Chunichi news No.273