中日ニュース第207号
一、明けましておめでとう
宇宙時代も壱年目を迎えて、世界の動きも大きな変動をつづけるものと思われていますが、中でも東と西の対立はますますきびしくなるものと思われ、首相の岸さんも、科学の振興をはかる反面、原水爆の実験禁止など、日本の立場をおしすすめたいと言っています。
しかし、社会党の浅沼さんは、岸内閣の対米従属を批判し、今年こそは国会を早く解散して国民に信を問うべきだと言い、ファイトを燃やしています。
一、雲に生きる
恒例の御歌会始めの今年の御題は、四季それぞれに雄大な、しかも優美な姿をみせる「雲」。
これを誰よりも喜んでいる老学徒がいます。その一人は、今まで三十数年間、富士山をバックにわき起る雲に目を注ぎ、気流との関係を研究し続けてきた理学博士阿部正直氏、毎月二、三度、鎌倉の自宅から御殿場にある研究所へ足を運ぶ博士は"ウソを云わぬ友”雲の研究に残った生涯をも打ち込んでゆこうというのが、新年の希望だということです。
また、三重県四日市の伊藤洋三さんも雲とともに生きている人です。啄木の詩を愛している伊藤さんは、寝たり起きたりの病弱ですが、恩師の阿部博士に励まされながらひたすら雲の研究をつづけています。
一、わが輩は犬である
私は犬のお守りです。
奈良の法華寺では、今年が私の年だと言うので、尼僧さんたちが、私たちを大量生産していますが、善男善女たちは私たちの御利厄にあやかるつもりなのでしょうね。
僕はお正月がきたので、理髪店へ行きました。理髪店には多勢の友だちがつめかけていましたが、隣の椅子でヒゲをそっている小父さんの料金は百円、僕の方は七百円です。
僕は相にく食べ過ぎておなかをこわし、正月早々病院へ入院しました。
健康保険はありませんが、へたな人間の病院より立派だと思います。
僕はさるお邸のシェパードです。御主人は僕が散歩するためにアルバイトの大学生をやとってくれましたが、少々、もたもたしているので、彼は手古ずっているかも知れません。
わが輩は、土佐の斗犬の中では最強横綱小天狗である。斗犬多しといえども、わが輩にむかう敵はおらん。そのわが輩も御主人の可愛らしいお嬢さんの前では至極おとなしい。お嬢さんが好きだからである。
私は土佐犬ですが、女ですから喧嘩はきらいです。そのかわり牛や馬の代りに畑を耕やしますが、野良で働らく犬は日本中で私くらいなものではないでしょうか。
Chunichi news No.207