情報戦の敗北
はじめに
第一章 グローバルな戦略情報を得た日露戦争
一、お庭番的情報組織
花和尚の沈黙
新旧思想の衝突
二、作戦と情報の未分化
日露戦争前の改編
作戦・情報未分化の弊害
三、野の花に助けられて
石光正清大尉の潜入
シベリアからゆきさん
写真館開設計画
カイゼルひげのスパイ
参謀本部員の軽率な言動
菊地写真館の大繁盛
諜報勤務の未熟
四、グローバルな情報網
通訳上がりの情報部長
シベリア鉄道建設を探る
英情報網利用に着目
柔軟だった明治陸軍
五、目標はシベリア鉄道
情報収集は主要目標
ほぼ正確だった兵力判断
ハチ合わせで冷汗
六、予想裏切ったシベリア鉄道強化
シベリア鉄道の状況判断
ロシア側の努力
輸送力急上昇
沿線にスパイ配置
七、開戦前後の情報網組織
在外武官の配置
江木少佐の南満潜入
松川大佐の情報部不信
馬賊情報の限界
地図の不備
解読されていた外交暗号
八、情報皆無に近かった旅順攻略戦
日清戦時の古地図
守兵も砲も予想の三倍
ロシア軍の防諜厳重
九、要塞戦術に対する認識不足
竹矢来説
始末に困るマカロフ戦法
バルチック艦隊来援の報
英情報を利用できず
野戦偏重の罪
新鋭重砲に耐える設計
お化け屋敷
参謀の戦場情報収集不熱心
一〇、バルチック艦隊東航情報と二〇三高地
東北正面に固執した乃木軍
二〇三高地の価値に鈍感
二〇三高地にソッポ
旅順攻略のニ目的
東郷長官の最後通牒
バルチック艦隊追跡
英海軍と新聞が情報源
無用に急がせた?
急速に強化された二〇三高地
一一、情報軽視と作戦の独善が招いた黒溝台の危機
手薄な戦線左翼
在外武官の警告
タカをくくった松川大佐
騎兵排斥の報告も無視
歴史浅い日本騎兵
露軍首脳の対立で危機免れる
最後の予備兵団投入
日露戦情報活動の長所と欠点
一二、当事者が忘れた日露戦の戦訓
戦訓の受け止め方
戦訓忘れた本家本元
第二章 第一次大戦の戦訓をどう学んだか
一、米軍とは比較にならない戦訓を学ぶ努力
観戦武官の役割
戦訓の学び方で立ち遅れ
二、近代戦争の性格を見落とした責任
軍拡期の立ち遅れ
経済動員
三、軍事作戦に関する見落とし
戦術、戦法
護衛作戦・対潜作戦
空軍
四、国内政治体制と戦争
政治と軍事との関係
学者の責任
硬直した政治体制が戦訓の摂取を阻止した
第三章 日中戦争と情報活動
一、確定した路線を持てなかった日本の中国政策
日露戦争勝利と中国
中国民族主義への日本の反発
日本の干渉
内政と結びついた中国政策
二、深刻な情報不足
戦略情報の不足
戦場情報の不足
三、認識できなかった中国の新しい情勢
中共軍の過小評価
政治工作の失敗
第四章 情報を"無視"したノモンハン事件
一、戦略情報と作戦の遊離
情報軽視というより無視
ソ軍近代化の情報
驕慢な「国境処理要綱」
二、攻撃失敗にもめざめぬ頑迷ぶり
過少兵力を"牛刀"と錯覚
エンピツと観念だけの「徹底的殲滅」
辻、土居大佐を脅迫
三、火力と戦車の差で攻勢失敗
秘密ではなかったピアノ線
敵を知らず己を知らず
悲しい宿命
四、ソ連の攻撃を察知できず壊滅
成功しなかった砲兵戦
時代遅れの気球で偵察
五、物量不足上回る情報不足
ゾルゲ・スパイ団の暗躍
ソ軍の作戦準備進む
ニセ情報にひっかかる
見れども見えず偵察の熱意不足
生かされなかった戦訓
第五章 "知恵の戦い"にも敗れた太平洋戦争
一、読まれていた日本暗号
外交暗号筒ぬけ
パープル暗号と取り組む
暗号解読で敗れたミッドウェー
山本長官機撃墜でもめざめず
船舶暗号の完全解読
米の主要暗号は解読不能
伝統のなさとスタッフの差
二、情報に"飢えた"ガダルカナル戦
反攻と判断せず
白兵戦の精鋭、一木支隊
活かされなかった「東」情報
ジャングルに迷う
兵要地誌なし、地図もなし
同じ過ちを繰り返す
三、情報収集・分析・判断のシステムを欠いた日本陸海軍
写真情報の活用怠たる
要員養成の立ち遅れ
機材の性能不足
情報組織自体の弱体
情報教育の不足
CIC作れず作戦混乱
国家戦略情報の評価誤る
空気
独ソ戦を予測できず
ヤルタ密約の情報無視
第六章 国際情勢の理解不足
一、常識的な情勢判断の欠如
第一次大戦との差
文民政治家の軽視
二、軍人政治の欠陥
軍人の狭い視野
経済情勢の判断
歴史の知識不足
言論の自由の重要さ