小唄解説
いつしかに
初出見よとて
はやつぐる
春がすみ
橋本へつけるや
晴れて雲間に
はるがすみ
とめてもかへる
地まはりは
茶のとがか
ぬけがらや
ぬれて見たさに
ぬしと二人で
ぬしさんと
おゝい山王の
お互ひに
わしが在所は
わしが思ひは
われがすみか
春日野の
がん首の
桂川お半を背に
枯柳いとも
かぐらばやし
夜ざくらや
よみ流す
たれと根岸の
空ほのぐらき
空や久しく
つがひはなれぬ
露は尾花と
月あかり
情もしみる
浪の上
向ふ通るは
無理な首尾して
無理な首尾してわくせきと
虫の音を
梅は咲いたか
うからうからと
梅が香を
梅の實も
梅一輪
浮氣同士が
鶯の身を
うらの背戶や
うたたねの
打水の
のび上り
雲にかけ橋
菅相亟は
柳橋から
八重一重
野暮なやしきの
ままになるなら
まちわびて
又の御見を
船に船頭
舟ぢや寒かろ
降る雪に
ぶらり瓢簞
筆のかさ
ふたりづれ
小諸出て見よ
紺の前だれ
こひしき人は
心でとめて
今宵は雨か
木枯らしの
ござれや
これ泊らんせ
五萬石でも
江戶の人
あすはお立ちか
あけぼのに
あさ黃染
有明の
あうて別れて
あひたい病ひ
逢うてうれしや
雨や大風が
あちらはあちら
朝顏のあした
酒の一つが
さんさしぐれ
さとを離れし
されば浮世を
ささのきげん
酒と女
さくら見よとて
山谷の小舟
さぎをからすと
西行さんはじめて
さみだれに
さみだれや
さてもやさしや
伽羅のかほり
きみは今ごろ
銀のびらびら
雪のだるまに
雪はしんしん
夕立ちや
雪のあした
雪は巴と
夕立のあまり
行こかもどろか
目見えそめしは
めぐる日の
みなここに
見わたせば
都はなれて
三日月の
三つの車
水の出ばな
水さしの
道は二筋
四條の橋
島田金谷
しげく逢ふのは
しぐれして
一聲は
ひとり寢の
人に意見を
人とちぎるなら
ひろい世界を
ひろい世界に
緋鹿の子の
緋ざくらや
もちの月
默阿彌さんの
誓紙書くたび
世辭でまるめて
翠帳紅閏に
すきやちぢみと
好いたお方に
いさましや
いはぬはいふに
いざさらば
意氣なからす
色氣ないとて
一生つれそふ
石川や濱の眞砂は
因果同士は
木小屋
蓮の葉に
葉ざくらや
半月に
春の夜の
初雪に
春風さんや
春の野に
半染めの
腹の立つ時
晩に忍ばば
はんなりと
はなし白けて
はをり着せかけ
ほととぎす
ほれて通ふに
當代珍らし
とんとん唐辛子
とめては見たが
どうぞかなへて
土手にとびかふ
ぬれて來た
おつと合點
お伊勢まいり
お前あるゆえ
お前まへ髮
おしどりの
おゝい田吾作
思ふこと
からくりの
からかさの
からす啼きでも
風折烏帽子
かのたれやらが
よりかかりし
よしの川に
夜やふけて
與作思へば
竹に雀は
竹になりたや尺八
竹になりたや
たまさかに
辰巳やよいとこ
それで濟まうと
月はおぼろに
月はおぼろに冴えもせず
つれてのかんせ
つつみになびく
長い浮世に
淚かくして
ながき夜の
うがひのあと
殘る月
待つているより
待ちわびて
風鈴の音に
ふたり一緖に
ふたりして
こり性で
こひしこひしが
このやうに
あまり辛さに
あひ持ちで
あごで知らせて
秋風さそふ
あふは別れの
あきらめて
あの花が
あら心なの
さなきだに
着せる羽織を