田中角栄の昭和
まえがき
序章 記憶のなかの指導者
昭和五十八年夏の不気味さ/『越山』投稿者を追う
軍隊から抜けだす三つの道/仮病の兵士/無作為の国体破壊者
米国人研究者への布石/百六冊の「角栄本」を分析すると
「欲望の充足」を追って
第一章 戦わざる兵士の原風景
限定版レコードで説く「義理と人情」/父親角次の生き方
「農村の嫁」母フメ/小学生から芽生えた三つの気質
卒業後、不安定な社会へ/時代状況下の生活意識
四つの職場と理化学研究所/自らの事務所で数十倍の収入
「こんなところで死んでたまるか」/戦争体験を語らぬ田中
「理研」とともに拡大する事業/敗戦―虚脱感なき出発へ
第二章 新時代の登場と挫折
記憶力を誇示する語り口/占領下での新党結成/GHQと最初の総選挙
「成金」候補の「若き血の叫び」/「三国峠を切り崩してしまう」
新鮮に映った姿、声/早くも吉田の評、「刑務所の塀の上を・・・・・・」
炭管汚職の発端/「炭管法に反対」を声高に叫ぶ/検察当局との闘いの原型
政界の「アプリゲール」/A級戦犯七人の処刑と拘置所からの立候補
「司法に抗する代議士」のイメージづくり/懲役六カ月、執行猶予二年
裁判から得た三つの教訓/長岡鉄道の経営にのりだす/事業と政治、巧妙な人物配置/「太平の言葉は心を打たない」
打算と実益の選挙システム
第三章 権謀術数の渦中で
時代転換期という幸運/「大臣の座をカネで買った」との噂
悪しき官僚主義の改革を促す/「テレビ時代」前夜
テレビ局の大量認可とメディア対応/恩人で「ライバル」曳田の死
ひたすら権力を追及する政治家タイプ/保守本流の定義
大平正芳と手を結ぶ/「田中・大平のクーデター」に河野一郎が激怒
大蔵官僚への甘言と恫喝/高度成長政策での池田勇人との違い
佐藤栄作首相の田中観/「豪雪は災害である」/山一証券に日銀特融
「日韓国会」を差配して得た自信/錬金術の方程式――越後交通発足
昭和三十六年からの「危ない橋」/ファミリー企業という仕掛け
日本の共同社会の凝縮/マッチポンプと黒い霧
第四章 庶民宰相への道
都市政策大綱の観点/「都市対農村」の構図を解体
佐藤の後継者に成長させた幹事長時代
「百万円の餞別は間違いでは・・・・・・?」/「選挙の神様」との異名
課せられた三つの歴史的使命/佐藤が仕かけた巧妙な罠
欲望の肥大と甘えの構造/佐藤の沖縄返却密約
一歩退き、「日米繊維交渉へ」/共同体回帰という国民心理
『日本列島改造論』をどう評価するか/はじめての「三角大福中」
第五章 田中内閣の歴史的功罪
異形の首相に昭和天皇が困惑?/「角福戦争」の予兆
二本柱、列島改造と中国/農本主義者に通じる思想
周恩来首相との回路/したたかな周恩来と対峙
中国側の戦略と田中の国際感覚/突然、毛沢東と面会
日中共同声明の歴史的意義/官僚のいる田中邸の年始風景/異様な高支持率
『自民党戦国史』が明かす、側近の静かな退場/二十五万都市構想の行方
地価上昇で歪んだ倫理観/政治生命を賭けた総選挙/「選挙上手」の不覚
物価高騰に募る不安/記憶されるべき「日ソ」外交
第六章 落城、そして院生の日々へ
石油危機で迫られた「決断」/田中発言が拍車をかける「狂乱物価」
全国四万キロにも及ぶ選挙応援/「金権選挙」と「企業ぐるみ選挙」
三木、福田辞任で揺らぐ足元/立花隆・児玉隆也レポートの激震
竹下登が読み上げた「「退陣表明」/機関紙『越山』に記した本音
「ピーナツ」で始まったロッキード事件/事件進展の三要点
三木首相との熾烈な攻防戦/死命を制する「コーチャン嘱託尋問」
運命の日――元首相逮捕/逮捕の波紋と憎悪/弁護団が見た人物像
七年十カ月に及ぶ法廷闘争はじまる/自民大敗でも新潟では圧勝
田中の執念が生んだ日本の悲劇/戦後社会の強さと弱さを知る者
終章 田中政治の終焉とその残像
キングメーカーという歪み/アメリカによる陰謀論
用済みになった日本社会の「亜流」/首相の職務権限と受領否定
客観性を失わせた過熱報道/懲役四年、追徴金五億円
田中派膨張の蔭で/不安と不信の日々のなか、創世会旗揚げ
ついに田中倒れる/すべてを失ったあとの二審判決
「いささかの悔いもなし」/巧妙な戦後大衆の姿
あとがき
『田中角栄の昭和』関連年表