全国アホ・バカ分布考
まえがき
第一章
➊「アホ」と「バカ」の境界線
『探偵!ナイトスクープ』の誕生/アホ・バカ調査の発端
➋全国アホ・バカ分布図の完成に向けて
調査は続行されるべきか/最初の反響/第一次アホ・バカ分布図/視聴者からの情報提供/古代の国と一致する分布/郷土愛ゆえの情報提供/初年調査の終了
第二章
➊「バカ」は古く、「アホ」はいちばん新しい
調査再出発/アンケート調査の宛先/アンケート用紙の作成/方言周圏論の学習/古代王朝残存説/方言周圏論の地位
➋恐るべき多重の同心円
アンケートの整理/ぞくぞく見つかる同心円/番組制作へ動き出す/「アホウ」と「バカ」の文献/徳川先生の言葉/京都の地位
➌古典文学に潜むアホ・バカ表現
「私、タワケね」とは言わない/「タワケ」の成立時期/文献の信頼度/漢語の出現/中世の間抜けな動物たち/形容詞の台頭/奇妙な語群/方言の特別講義
第三章
➊「フリムン」は琉球の愛の言葉
伝播順位の推定/「ふれもの」説の衝撃/「ほれもの」ではないのか?/辞書の「フリムン」解釈/琉球方言の地位/琉球方言の「ハ行」の特徴/宮古・八重山の音韻規則/「ふれもの」は架空の熟語
/方言札の歴史
➋「ホンジナシ」は、本地忘れず
女子学生の電話調査/「本地」の民間利用/東北人の歴史/古語は辺境に残る/南九州人の新証言/「本地なし」のはるかな旅路
第四章
➊「アヤカリ」たいほどの果報者
アヤカリにも「者」がつく/瀬戸内海航路の役割/コンピューター・グラフィックスの作成/本番スタジオ収録完了
➋「ハンカクサイ」は船に乗った
春の学会に学ぶ/「ハンカクサイ」の伝播/北前船の寄港地/加賀の船乗りと新町の遊女
➌言葉遊びの玉手箱
報告書の作成/アンポンタンの川流れ/不足する分量/遺物としての群像/「ダラ」に先行する「小足りない」/江戸社会の成熟/九州北部の「フータンヌーリー」/競われた言葉のセンス
➍分布図が語る「話し言葉」の変遷史
「阿呆・賢い」と「馬鹿・利口」はセット/「~だけども」も多重の円/会津の弟たちは愚か者/「コバカ」から「クソタワケ」「ドアホ」へ/あるものに評価を与える表現
第五章
➊「バカ」は「バカ」のみにて「バカ」にあらず
「バカモン」「バカタレ」は関西弁/『日葡事典』が明かす「バカ」の謎/「バカ」は「狼藉」なり/『太平記』における馬鹿者の意味
➋新村出と柳田國男の語源論争
柳田國男の「ヲコ」語源説/新村出の漢訳梵語説/梵語説の吟味/「バカの「破家」説
➌周圏分布の成立
B音に始まる和語はない/「社会語源」の概念/「ヤンキー」が証す伝播のシステム/方言分布の成立時期と『物類稱呼』
➍学会で発表する
金沢の学会へ/「バカ」語源についての質問/アホとバカのメリークリスマス/
第六章
➊「アホンダラ」と近世上方
奇妙な岩手県人/「タクラダ」変じて「タレ」となる/「陀羅助」から生まれたアンポンタン
➋江戸っ子の「バカ」と「ベラボウ」
消えた「べらぼうめ」/べらんめえ調と「男はつらいよ」/「ばかあ言え」の興隆/「のっぺらぼう」と人気の見世物「べらぼう」/「べらぼう」は初めから愚か者/東京で消えた近世上方語
➌「アホウ」と「バカ」の一騎打ち
人を馬鹿にするな/「バカ」の偉大さ/「アホウ」から「アホ」へ/「アハウ」から「アホウ」へ/「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
第七章
➊君見ずや「バカ」の宅
天神祭りの宵闇/「馬鹿」と白楽天/大宮人の教養の源泉『白氏文集』/紫式部と「馬鹿の宅」/忘れられた「バカ」の語源/「馬家」と「狼藉」の関係
➋「アハウ」の謎
鴨長明『発心集』の疑惑/狂言における「アホウ」/京都五山・禅僧の講義録/鴨長明のアホ・バカ表現/『発心集』巻七・八偽作説
➌「阿呆」と「馬家」の来た道
中国江南・蘇州の「阿呆」/日本における「阿呆」の表記/中国における「呆」と「獃」/京都五山僧の活躍/元曲の中の「阿呆」/「アハウ」が漢語であったことの記憶/「馬家」と「阿呆」の日本文化
エピローグ
方言と民俗のゆくえ
神輿の掛け声/民俗の交代劇/東北・九州に貯えられる京のこころ/素晴らしき方言
あとがき
アホ・バカ方言全国語彙一覧
主要参考文献
索引