べらんめぇ言葉を探る
まえがき
1 そもそも「べらんめぇ」なる言葉は
1――「べらんめぇ」のルーツ
生まれは大阪道頓堀/安定・平和の世の生まれ/馬鹿者の意味事始め/「べらぼう」の書き方いろいろ
2――江戸で流行る「べらぼうぇ」
初登場は平賀源内から/宝暦という時代/源内笑う宝暦の世/江戸っ子意識芽生えとともに/流行始めは明和の時代/いよいよ広まる「べらぼう」/ついに登場、「べらぼうめ」/流行の花開く安永時代/ますます盛んな天明時代/
山東京伝の「べらぼうめ」/江戸っ子意識と「べらぼうめ」/花の吉原好み「べらぼうめ」
3――「べらぼうめ」庶民日常語となる
『浮世床』の「べらぼうめ」/小僧も使う「べらぼうめ」/流行語から日常語へ/「べらぼう」表現自由自在/「べらんめぇ」のご登場/「べらんめぇ」の背景は
4――世に言う「べらんめぇ調」の正体は
「べらんめぇ調」、音の中身は/「べ」の正体を見る/「ら」の正体は/「ん」の正体よく見れば/さて「めぇー」の正体は
5――「べらんめぇ調」のふるさとは
「べらんめぇ調」は江戸特産か/江戸の根は関東/「・・・・・てやんでぇ」よく見れば/共通手形「エー」の訛り/根は神奈川か埼玉か/「わりィ」ももとは関東育ち/「新宿」(しんじく)にも関東の血/江戸の言葉は諸国のブレンド/
江戸特性は十八世紀も末/特製江戸言葉の中核は
2 「べらんめぇ」の相続、東京下町言葉
1――東京下町言葉ライブな姿
江戸から東京下町へ/変わる母音の訛り/「遊ぶ」か「あすぶ」か/「指」か「いび」か/いささか変わる「エ」の長音/大工(でえく)も細工(せえく)も・・・・・/高い(たけえ)・うめえも/「金がねえ」は生き残る/「仕様がねえ」の生存力/
「「お愛想」(おあいそ)は今もなお/日比谷と渋谷/昔は昔、今は今/江戸の「やっぱり」・・・・・/東京下町の「やっぱり」
2――職人衆のことばは動く
職人言葉の気っぷというが/職人ことばを調べる/浮かび出た世代差/世代差は母音訛りに/職種が語る言葉の差/作りて静まり、売り手栄える/職人ことば、商人ことば/カドのとれた職人ことば
3――サラリーマンとは一味違う
職人ことば、サラリーマンと比べれば/それでも残る職人ことば
3 威勢のよさの表現法
1――ことばの威勢は
花川戸透六の啖呵/荒さ・強さは江戸好み/強さのもとは、接頭語/一九や三馬の接頭辞/もとはみな関東方言/見本市は、『雑兵物語』/江戸は初期、東ことばは花盛り/互いに見合わせ、方言直し/江戸町方ボスは男伊達/突っ張り表現男伊達/言葉こそ男伊達の武器
2――あずまことばも、よそおい新たに
奴詞のご登場/奴詞と関東方言/奴好み、荒若好み「すてっぺん」/「す~」がなぜもてる/「す」の持つ音の特色/「おったてる」か「おっちらかす」か/お江戸で嫌う「ひっかさねる」/江戸好み「ぶんなぐる」
4 東京下町女とその言葉
1――下町女、「べらんめぇ」は今
女は確かに強くはなった/下町女の「べらんめぇ」を調べる/女の「べらんめぇ」、男の三分の一/元禄育ちの女らしいことば/歯切れの良さは下町女の願い/江戸ッ子女の開き直り/下町女の「べらんめぇ」/「べらんめぇ」も時と場合
2――下町女のことばの折り目
下町女の日常語は・・・・・・/下町女と古風な女性語/下町に、なぜ女房ことばの縁か/「水」より「おひや」/好きになれない女房ことば/丁寧表現「お」の使い方/下町女の「お」離れ/「お洋服・お履物」嫌い/一味違う食べ物の「お」/家事は大事に「お」をつける
3――「テヨ・ダワ」ことばと下町女
壊れた「テヨ・ダワ」ことば/下町女の「ワ」の使い振り/「食べるワ・かっこいいワ」/「買ったワ・すてきだワ」、後退/不人気理由は語形から/おしやかさはちと弱い/気になるモダンとハイカラ/「ですワ・ますワ」大嫌い
5 変わる東京下町
1――変わりゆく下町の暮らし
下町に夢を求める人は多いが/今の下町よく見れば/変わる生活の基本構造/昔は長屋、今は鉄骨/みんな揃って事業主/腕一本の道はさびれる/増える背広族/恐るべき教育普及
2――家並みは一変
九十パーセントが一戸建て/むっくり起きた土地への欲望/土地切り売り事始め/いよいよ土地が職人衆に/表通りは三階建て
3――移り行く人
ザラにはいない三代続き/地元小学校の名簿から/古きは去って新しい町が/下町古い味と新たな光
6 移り行く下町気質
1――世の中変われば人情も動く
人情厚き女性の半分/人情話は残りはするが・・・・・・/屋根は聳えて人情低く/残るは小さなおせっかい
2――人情薄れて義理も軽く
忠臣蔵の義理/義理も恩義もほどほどに/昔と今の使い分け/神器は堅い同業者
3――イキな下町江戸の味というが
意気地を立ててイキとなる/江戸ッ子の誇り/イキの磨きは遊郭から/服装(なり)も形も野暮嫌い/本格修業はイキな心/遊び心のバイブル/今の下町振り返れば/なくなるイキな遊び場/ゆとりも暇もあらばこそ/イキな心へ願いは強く
7 江戸・東京下町好みの言葉
1――東京下町に江戸言葉を拾う
あいそ(そう)/いいぐさ/いけすかぬ(ない・ねえ)/うっちゃる/えっちらおっちら/おっつけ/くたばる/こけ/ごたいそう/ごたく/しっぽり/しゅび/ぞっこん/そん所そこら/ちりっ葉(ひとつ)/とんちき/ねっから/ぶらりしゃらり/ふる/りょうけん
2――比喩・ことわざに注目すれば
見立て遊びとたとえの心/流行始めの時代/江戸好みのたとえ方/江戸ッ子のことわざ好き/始めは元禄、普及は安永・・・・・・/東京下町ッ子のことわざ好きは