太陽はまた昇る 上
第一章 東園寺一郎、尾崎秀美と「アジア」で時局について談合をなすこと
第二章 尾崎、秘書宮田キヌ子を映画に誘うこと
第三章 尾崎、ゾルゲに会い、それから桑井に行くこと
第四章 犬丸賢、桑井で近衞新党をしきりに要望すること
第五章 松岡洋右、近衞に秘書官にでも使つてくれと申入れること
第六章 岩瀬龍雄、遠藤勇之助と近衞公の前で口論をなすこと
第七章 杉山陸相、米内海相を閣議の席で呶鳴りつけること
第八章 近衞公、政変の報をうけ、急ぎ軽井沢を降ること
第九章 近衞公、浴槽に浸りながら三階節を鼻歌でうたうこと
第十章 近衞公、細山邸に病める次女を見舞いそれから重臣会議へ赴くこと
第十一章 松岡、荻外荘のテント村で見得を切ること
第十二章 尾崎、女秘書と映画見物の約束を果すこと
第十三章 尾崎、ゾルゲ宅で若い日本婦人を見かけること
第十四章 犬丸賢、内閣書記官長を買つて出てつまみ出されること
第十五章 犬丸、自動車を駆つてサロン・春に赴くこと
第十六章 犬丸、桑井で東園寺達からなぐさめられること
第十七章 板垣、近衞公をペテンにかけ、自ら板挾みにあうこと
第十八章 松岡、オット大使に大見得をきること
第十九章 尾崎、朝飯会で三国同盟に反対意見をのべること
第二十章 三谷速子、ゾルゲの机からドイツ婦人の写真を見つけ出すこと
第二十一章 ゾルゲ、オートバイ事故で大怪我をすること
第二十二章 犬丸、対蔣秘密工作の情報をきゝ大いに立腹すること
第二十三章 尾崎、犬丸より日華基本条約案をひそかに借り受けること
第二十四章 尾崎、娘にダヌンチオの詩を口吟できかせること
第二十五章 吉田海相、一陸軍将校につきまとわれ病気になること
第二十六章 東条、四相会議で日本の主要目標が対米戦であることを発言すること
第二十七章 有馬伯、荻外荘を出て立ち小便しているところを新聞記者に見つかること
第二十八章 松岡、スターマー特使と秘密会議をなすこと
第二十九章 園公、三国同盟成立を知つて天皇の周囲に人がいなくなつたと慨嘆すること
第三十章 尾崎、外務省で東園寺一郎より情報を得ること
第三十一章 近衞公、三国同盟に対する海軍の胎を知つて愕然とすること
第三十二章 尾崎、レストラン・リッツでゾルゲと情報の交換をなすこと
第三十三章 近衞公、天皇の前でいけぞんざいであること
第三十四章 某新聞記者、おトキを四ッ谷駅まで自動車で送りいろいろきゝ出そうとすること
第三十五章 近衞公、赤坂の待合篠井で新体制の難航を尾崎に話すこと
第三十六章 尾崎、満鉄ビルから提灯行列の火の海を見て、日本の終末を感ずること
第三十七章 近衞公、園公危篤の報をきいて静かに涙すること
第三十八章 近衞首相、大政翼賛会の憲法違反問題で窮地におちいること
第三十九章 松岡外相、近衞公に枢軸国訪問を申し出ること
第四十章 松岡外相の訪欧、世界じゆうの注目をあびること
第四十一章 松岡使節、関東軍の一将校から注意されること
第四十二章 松岡、車中で早くも対クレムリン外交をなすこと
第四十三章 藤村海軍中佐、三人の給仕男の中に日本語を解する者がいることを感づくこと
第四十四章 松岡、スターリン会見、日ソ不可侵条約を提案すること
第四十五章 ドイツ側の歓迎ぶりのあざやかなこと、しかし料理の貧弱でまずいこと
第四十六章 リッベントロップ外相、松岡に対ソ関係の悪化をひそかに告げること
第四十七章 松岡、ヒットラーに日本の政情を打明け、時がくれば日本の指導者になると豪語すること
第四十八章 松岡、リッベントロップに対英攻撃を打ちあけ、対ソ策について腹をさぐり合うこと
第四十九章 松岡、ローマ法王を啓蒙したと威張ること
第五十章 松岡、独軍のユーゴー進撃の報をきいて泰然自若たること
第五十一章 松岡、日ソ交渉が暗礁にのりあげ、気を腐らせてレーニングラードへ観劇に赴くこと
第五十二章 松岡、スターリン書記長に直接書簡を書きおくること
第五十三章 松岡、芸術座で英首相チャーチルの密書をうけとること
第五十四章 スターリン、調印式後松岡使節一行を歓待これつとめること
第五十五章 スターリン、駅頭に松岡を見送り、外国使臣を驚倒させること
第五十六章 近衞、松岡外相の帰朝を一刻もはやく促がすために電報をうつこと
第五十七章 近衞公、松岡の帰朝がおくれるのでいらいらすること
第五十八章 松岡、人造石油の話で満鉄の人々を煙にまくこと
第五十九章 松岡、悪天候にはゞまれて帰朝を一日のばすこと
第六十章 近衞公、松岡の宮城遙拜をさけてたゞ一人さきに帰ること
第六十一章 松岡、日米交渉が近衞の筋でなされていることを知り激怒すること
第六十二章 近衞公、松岡の反対にあつて気を腐らせ「病気」になること
第六十三章 尾崎、ゾルゲと独ソ戦必至の見透しについて情報を交換しあうこと
第六十四章 松岡、武力南進をせぬという日本の確言を削除すること
第六十五章 松岡、荻外荘に近衞公を訪問し、野村大使の「越権」を難詰すること
第六十六章 松岡、汪主席と歌舞伎座で観劇中独ソ開戦の報をきゝ少しも動ぜぬこと
第六十七章 松岡、対ソならびに対米英開戦論を言上して天皇を驚愕させたこと
第六十八章 尾崎、東園寺から御前会議の模様を巧みにきゝだすこと
第六十九章 尾崎、北方の危険を予測して動員兵力の配置をつぶさに調べること
第七十章 松岡、近衞公の書簡に感激し、夜中荻外荘に電話をかけること
第七十一章 東条、松岡に「馬鹿」よばわりされ、激昂してつめよること
第七十二章 近衞、葉山御用邸に伺候、委細奏上のうえ鎌倉山の別荘に泊ること
第七十三章 近衞公、鎌倉山の別邸にひとり感懐にふけること
第七十四章 近衞公、自動車のなかで富田書記官長に総辞職の心境をのべること
第七十五章 松岡、辞表提出ののち御殿場の山荘に引きこもること
第七十六章 豊田、外相就任そうそう日米交渉の難局にあい、夜もロクロク眠れぬこと
第七十七章 近衞公、ルーズヴェルト大統領との直接会談を決意し、陸海両相にうちあけること
第七十八章 野村大使、努力に努力を重ね、近衞・ルーズヴェルト会見にやゝ曙光を見出すこと
第七十九章 東園寺、参謀本部が対ソ行動を起さぬことを決定したことを尾崎にもらすこと
第八十章 尾崎、娘をつれてゾルゲと会見に赴くこと
第八十一章 天皇、励声一番杉山参謀総長をキメつけ、永野軍令部長助け船を出すこと
第八十二章 天皇、御前会議の席上で異例の発言をなし、明治大帝の御製を朗々と読上げること
第八十三章 近衞公、細山邸でひそかにグルー大使と会見し、心懐を吐露すること
第八十四章 近衞公、アメリカ側につくすべき手をつくし、運を天に任せて鎌倉山に赴くこと
第八十五章 尾崎、満洲で対ソ戦中止の状況をつぶさに視察し、眼を日米交渉の見通しにむけること
第八十六章 近衞公、東条陸相から、人間一度は清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要だ、といわれること
第八十七章 尾崎、検挙をばくぜんと予感し、要するに死ねばいゝだろうと覚悟をきめていること
第八十八章 宮城、国際諜報網の発覚をおそれ、築地署の調べ室から飛び降り自殺をはかること
第八十九章 東条陸相、鈴木企画院総裁を使者として近衞首相に辞職を勧告すること
第九十章 尾崎、警視庁特高課員らの手により、目黒署へ拘引されること