図書グンジ ギジュツ ノ タチオクレ ト フキンコウ080006399

軍事技術の立遅れと不均衡

サブタイトル1~10
日本近代と戦争 6
編著者名
長谷川 慶太郎 責任編集/近代戦史研究会 編
出版者
PHP研究所
出版年月
1986年(昭和61年)10月
大きさ(縦×横)cm
20×
ページ
298p
ISBN
4569218547
NDC(分類)
210.6
請求記号
210.6/H36/6
保管場所
開架半藤文庫
内容注記
和書 半藤一利氏旧蔵資料
目次

はじめに
 
第一章 日露戦争の勝因と陥穽(稲垣武)
一、 火力の重視
種子島の急速普及/薩英・馬関戦争の衝撃/火力で西郷軍を圧倒/機動性重視で欠陥野砲/射程不足に泣く/苦肉の策も裏目に/数は多かった機関銃
二、 野戦砲を過信し要塞攻撃に苦杯
トタン屋根に霰/教訓無視した旅順要塞攻撃/効果の少ない野砲弾の浪費/現場の創意を活かせず
三、 ワンセット輸入で勝った日本海海戦
確固不動の教科書/六・六艦隊建造に全力/イギリス海軍の雛形/実質的砲力で圧倒/照準望遠鏡と測距儀/下瀬火薬と伊集院信管/勝因の解析誤り陥穽に/日露戦訓を生かした英海軍/攻撃力に偏り防禦力軽視
 
第二章 第一次大戦の戦訓軽視(長谷川慶太郎)
一、 近代戦の現実直視を阻んだもの
戦争の様相を一変させた第一次大戦/観戦武官は何を得たか/すさまじい火力戦の実態/ドイツ軍の装備刷新の努力/日本陸軍の立ち遅れ/欧洲出兵要請を拒否/日英関係悪化の遠因/前車の轍を踏むおそれ/近代戦の経験を自ら放棄
二、 国家総力戦の実態認識に欠ける
軍事制度改革の流れに反して/体制老朽化と経済政策の失敗/近代化へ着想及ばず/初めから捨てた自動車化/企画力なき情熱の悲劇
三、 軍事組織の改革停滞
組織一新の世界軍事情勢/軍事評論分野の成立/マルクス主義軍事理論への注目/一律的軍縮の失敗/効果少ない日本の学校教練/海軍も体質改善に失敗/偏狭な艦隊決戦一本槍の思想/軍事学上の研究努力の欠如
四、 陸海軍学校の整備不十分
各国軍学校の拡充/新時代に即する高等軍事教育/ナチス・ドイツ成立の波紋/日本は教育で立ち遅れ/民間人を生かせぬ硬直した人事制度/歴然たる日米の技術力の差/視野の狭い経営戦略/絶えず動揺した外交政策/戦訓を生かし得ず世界の大勢に逆行
 
第三章 軍の近代化構想の動揺(桑田悦)
一、 貧乏国の悲哀と大陸戦場の制約
最も近代化の遅れた火器・戦車・輸送力/自動火器開発を防げた貧乏意識/輓馬と悪路が野砲の威力を減殺/重砲開発の挫折と航空重視/〝軽・薄〟を重んじて対戦車威力を犠牲に
二、 世界水準の軍備か、満洲・中国戦場か
統帥綱領と想定敵国との矛盾/世界水準を追求した日露戦争までの軍備/想定戦場に応ずる陸軍軍備への傾斜/支那事変の影響とノモンハン教訓の特殊化/海軍に依存した対米戦意識/予想外の戦場で予想外の敵と戦う
三、 現実軽視の観念論的精神主義
第一次大戦の教訓の受け取り方の問題/観念的攻勢至上主義の進展/現実無視の観念論の悲劇/論争の不徹底と自由闊達な論議の消滅/統帥権の独立・国防方針の魔力の制約/長期の戦略的思考を妨げたもの
 
第四章 富国強兵から強兵富国へ(長谷川慶太郎)
一、 工業技術の後進性
すべてを犠牲に軍事力強化/乏しい技術開発力/総力戦遂行能力の欠如/輸入依存のほか道なし/ソ連工業力躍進の原因/経済に無知の軍部指導者/高級指揮官の能力の差/兵器使い惜しみの風潮
二、 産業基盤の未成熟
牛車で運ばれた零戦/道路整備に無関心/交通・通信網の弱体/視野狭窄症が敗戦を招いた/技術者養成の立ち遅れ/技術者を無駄使い/技能工養成法の誤り/第一次大戦の苦い教訓
 
第五章 社会と軍隊の隔絶(稲垣武)
一、 官僚制のもたらした硬直性
零戦と戦艦「大和」/一冊だけの教科書/陸軍の潜水艦、海軍の戦車/陸海軍内部でも縄張り/規格すら不統一/部品標準化怠る/民間活力を利用できず/度を起した機密/技術行政の拙劣と悪平等
二、 用兵者は技術を知らず、技術者は用兵を知らず
個艦性能の向上に専念/巨大な海獣/用兵と技術の乖離(かいり)/兵器開発の目的教えず/戦訓も無視
三、 空想的兵器開発に走る
バズーカ砲開発の遅れ/ロケットと組み合わせた米/すばやいドイツの対応/大口径ロケット砲を優先/悲痛な沖縄の戦訓/貧乏人の大穴狙い/毛嫌いされた追撃砲/凝りすぎて虻蜂取らず/質と量のバランス崩壊
 
第六章 航空技術のひずみ(柄沢英一郎)
一、 機体設計の偏重
短時日で世界水準に/神経の行き届いた設計/大馬力発動機の開発遅れ/勝敗を分けたエンジン技術の差/余裕のなさが改良を生む/日米技術者の常識の差/凝りすぎと量産性軽視
二、 的はずれた用兵思想
パイロットの格闘性好み/源田・柴田の戦闘機論争/ノモンハンの戦訓生きず/旋回性能に固執し戦局を誤る/貧弱だった爆撃機/欲張りすぎと細かすぎ
三、 周辺技術のレベルの低さ
通ぜぬ無線/貧弱な火器/照準器の差/防弾タンクの遅れ/整備技術は適切だったか
 
第七章 眼と耳の不自由な勇士(稲垣武)
一、 システム思考の欠落
通信重視の日露戦争/無線に対するすばやい対応/全艦に無線装備/無線不信のロ提督/無線通じぬ太平洋戦争/電子技術の立ち遅れ始まる/輸入技術に狎れる/航空機用無線通信機の不備
二、 殺人光線に走ったレーダー開発
短波の利用と電離層の確認/実験せず先入観/メートル波レーダーの開発逸す/システムに敗れたドイツ/英の技術学んだ米/闇夜に提灯論/独自開発技術にそっぽ/強力マグネトロン開発/艦船探知に成功/ドイツから技術導入/
日本初のレーダー/アメリカ製は「兵器」/信頼性欠く艦船用/「強力電波」に迷う/軍人教育と科学/レーダー戦への米のすばやい対応/日本艦隊、レーダーに完敗/オートダインに固執/やっとできたスーパー受信機/方向精度に苦しんだ陸軍の電波警戒機/
レーダー不備で航空隊全滅/ウルツブルグの図面を潜水艦で輸送/ドイツ式と日本式/陸軍雷撃機出動/ B29のレーダーに脱帽/粗製濫造の真空管/陸海軍の協力欠如
三、 日本の息の根を止めた対潜兵器の不備
ソナーへの認識不足/マニュアルの不備/猫が鼠に食われる/間に合わなかった新鋭機/指導者不在と科学的思考の欠如
 
第八章 技術開発と兵器量産失敗の本質(長谷川慶太郎)
一、 軍事理論の否定がもたらしたもの
五世紀間変わらなかった火薬/第一次大戦における兵器革命/技術開発に不可欠な軍事理論/兵器改良に各国独自の方針/軍備の近代化と新軍事理論/研究を怠った日本陸軍/航空機開発における海軍の頑迷
二、 経済学の無視と量産体制の崩壊
統計は不備、情報は不足/すべて後手の戦時経済政策/管理なき工場、規律なき職場/前近代的〝名人芸〟の悲劇/絶対に越えられぬ身分格差/規律紊乱も黙認のほかなし/軍需生産の完全な崩壊/勤労意欲の過大評価は危険/敗戦の一因は社会制度の不備/
戦後の西ドイツと比較して/日本に課せられた責任