高見順の「昭和」
まえがき
一、 高見順って、こんなに面白い
高見順没後四十年
厳冬酷暑・未完の生涯
東大英文科卒の「私生児」
生涯消えぬ転向の傷痕
迷いに迷う心の襞を描く
最後の文士は癇癪もち
「左翼くずれ」の出発点
『雪国』と『太陽の季節』
「転向」とは一体なんなの
いつまで続くぬかるみぞ
「治安維持法」と「特高」
欠落した「日記」の謎
うらぶれ果てた「プライド」
苦悩を茶化す「軽み」
「日記」の中の饒舌体
様々なる崩れ願望
生涯に三百十一点の単行本
深間に嵌る苦と楽と
頭で書く人・体重で書く人
ふる里喪失とふる里回帰
都会浮遊の「宇宙人」
巻貝の奥の真珠とは
二、 『いやな感じ』は恋愛叙事詩
昭和から昭和への連環
「いやな感じ』は恋愛叙事詩
「いやな感じ』その時の評判
批評家と編集者と実作者
一人称のアンチ・ロマン
三つ児の魂は死ぬまでも
四郎さんは、いいひとです
四郎と照子の一途な愛
愛の持続と無償の愛
たった一枚の置手紙
「すまねえな」「なに言ってんのよ」
斉田慷堂と北規中尉
登場人物の絵ざらい
三、 「昭和思想史小説」三部作の連環
現実は腐るということ
時代と心中する文学
根も葉もある嘘八百
≪日暦≫時代の熱気
わが胸の底にある粉飾
事実は小説よりも酷い
比喩と感性の面白さ
四、 ジャンル別おすすめ三点
私小説
『私生児』の居直り的告白
『わが胸の底のここには』の自虐
『生命の樹』のモデル的興味
転向小説
『空の下』女郎屋での思考
『嗚呼いやなことだ』何が?
『工作』は党が生んだの?
インテリ小説
『外資会社』での青春賛歌
『インテリゲンチア』の憂愁
『あるリベラリスト』の悲惨
ロマンス小説
『今ひとたびの』の永遠性
『胸より胸に』の芸術性
『都に夜のある如く』の寂蓼感
「売り絵」小説
『捨てた女』は不倫願望
『駄目な夜』の譫言
『プラトニック・ラブ』の乱倫
長編恋愛小説
都会令嬢を描く『三面鏡』
愛する彼女は『遠い窓』に
『愛が扉をたたく時』の一瞬
戦後風俗小説
『貝割葉』敗戦直後の日本人
『草のいのちを』で「文化批判」を批判
『甘い土』戦後を生きた女
五、 高見順の「昭和」-『いやな感じ』を中心に-
「左翼くずれ」の酔中狂態
「二重構造」の底のここには
テロリストによせる無償の愛
魔窟の女にひと目惚れ
「俺」になついた京城の猫
枝豆のにおいがする女・波子
不発の後 豚箱から根室へ
みんな死んだ 女は生きる
横丁での長あいひとり言
『いやな感じ』の実在人物たち
あとがき
参考資料