商品盛衰記
1 自足を嘆く 糖界に皮肉な運命
2 大麥の沒落 生活行進曲
3 多難な染料 自立の日遠し
4 アマゾン河畔から ゴムの世界行脚
5 鮮かな逆轉 錦糸の輸出ぶり
6 暴利の峠を 辷りゆく自動車
7 建築界の立女形 伸びて行く洋灰
8 移りゆく 輸出絹織物の姿
9 洋紙踊る日 和紙凋落の悲しみ
10 世界の誇り 滅びゆく漆器の面影
11 速力の素 賑ふ國際石油戰
12 メリケン粉 粉で稼ぐ瑞穂の國
13 人絹時代 今後の飽和點は?
14 奈翁の涙 凝つて「罐詰に」
15 脅ゆる内米 鮮米の躍進ぶり
16 將軍と腰辨 氷が觀た今昔世相
17 ビール合戰 泡を吹く諸會社
18 樟腦受難 蛇のやうな合成品の眼
19 世界から敬遠 衰路を歩む本邦燐寸
20 北洋材立志傳 米材を押へた顔付
21 七難隠して 繰り出した鉛筆勢
22 石鹸の泡 磨き立てる衛生思想
23 無情迅速 見る影もない花席
24 鰻上り 鑛物質肥料の舞臺
25 舶來品以上 微笑める國産煉乳
26 新を誇る 低級なガラス工業
27 洋酒亂舞 都市文明、轉回の軸
28 色彩交響 水菓子連の自叙傳
29 本場は移る 野菜興亡のかずかず
30 兩切り時代 影、薄れゆく煙草入れ
31 瘻れた人形 共喰いに泪しつゝ
32 釣瓶落し 杢阿彌に返つた鐵鋼
33 泥路に佇む 自轉車の今昔、感無限
34 貴族の唇 除虫菊繁昌由來
35 樂聖のベソ 蓄音機のメロディ
36 スポーツ王國巡禮 横綱席に野庭球用具
37 化粧地獄 昭和百物語の女性
38 味氣ない塩 三割餘を輸入の惱み
39 斷髪長恨 ブラツシの横顔
40 變つた姿で 二度の勤めをする牛
41 チョコレート全盛期 キヤラメル時代去る
42 深山育ち 自動車に乘り込む木炭
43 殘壘一つ 和風文房具の溜息
44 烏帽子代り 儀容を作る中折れ
45 丸藥の手管 草根木皮の魅力
46 元帥長嘆 さまざまな樂器の音色
47 神風吹く處 寫眞器の喜憂こもごも
48 異郷の土に 陶磁器の世界遍歴
49 無縁のお化 素睛らしい毛皮需要
50 殘燭明減 行燈を戀ふ菜種油
51 養鶏濟國 内地卵と支那卵
52 明治を戀ふ 海外に浮ぶ人力車
53 光の使徒 不夜城の電球文明
54 大陸に遊ぶ 可愛いゝ羊の毛
55 禍福流轉 獵銃に搦む悲喜劇
56 紫の魅力 和蘭までも旅する醤油
57 本來空 復興工事で浮かぶ砂利
58 映畫の世界 脅かす新と奇の奔流
59 貝殻微笑 釦となつて世界を闊歩
60 盲龜浮木 眼鏡が越えて來た路
61 白百合の花 渡米して夜會に匂ふ
62 靴の歩み ゴム製品は露拂ひ格
63 古代の霧から 産まれ出た繪具
64 持味は染め 飛躍するモスリン
65 東京赤花 煉瓦に寄せた明治人の憧憬
66 玄關飾り プロには不用な金庫
67 朱子と別珍 足袋界にも大衆時代
68 兩刀遣ひ 戰火と平和を謡う火藥
69 米國遠征 萬年筆出世物語り
70 パンの皮肉 邦品に追随する歐米
71 異端者製麻 禍亂の日を慕ふ
72 Wの神秘 タイプライター誕生
73 雜木を擔ぐ 洋傘が嗤ふモガ姿