大東京繁昌記
1 表玄關東京驛
誰が建てたか建てさせたか
「世界一拙劣」と專門家が折紙
今ぢや通用門乘降客日に十二萬
2 中枢神經丸の内
近代日本の財界盛衰縮圖
漸く充實した財界の心臓
金詰りの政府が兵營跡を競賣
坪十二、三圓也で三菱外引受け
「一丁倫敦」に曙光、報知社の進出
新舊様式とりどり建築界の豪華版
日本一の大家主三菱の懐具合?
ビルは活き物そこが經營の難點
三菱の税金こそ市、區のドル函
ビル街の仇敵市役所に大不滿
ビルの壽命は三十年止まり
通勤者實に八千名大世帶「丸ビル」
地下食堂街が物語る「丸ビル」の食慾
ビルの繁榮も頭打ちのかたち
財界お歴々の夢の跡を忍ぶ「東商」
「東商」醜爭の繪巻に衰微の兆現る
戰時繁榮時代の記念碑「工業倶樂部」
「會社製造所」から有閑倶樂部に轉向
目腐れ金不要?
銀行の風格較べ
金をいだいて「與銀」かへつて憂鬱
臺鮮兩行浮上るインフレと滿洲景氣
3 お膝元の麹町
責任も重し氏の誇・家柄の自慢
江戸の繁昌を語る國府路町由來
「ももんじ屋」から牛肉文化發祥
歐化インフレと鹿鳴館舞踏の跡
町名地名に偲ぶ城下町の職制
維新荒廢の後繁榮は九段に勃興
巨頭連を網羅しさても賑やかな人國誌
政治のシンボル議事堂の大工事
堂々世界第二の議院だが中身は?
「勸債を出せ出せ」に痛し痒しの勸銀
4 商業街日本橋
富力に根ざす江戸三百年の傳統
繁昌の原動力、深い綠の魚市場
「二兩二分の初鰹」を幕府が彈壓
虫のいゝ幕吏泣かせた魚屋に賴る
金よりも暖簾「江戸の名物」が目標
どつしりと落付く老舗の家並み
維新の獻金に三井斷然偉功を立つ
越後屋の開業看板は「現金掛値なし」
一石二鳥の商略越後屋の貸傘サービス
兩替店の經營に三井黄金の芽をふく
三井爲替組が海運橋に旗擧
小野、島田組の沒落で三井の制覇成る
三井の大改革に傑物中上川の登場
全三井産業網にインフレの花開く
三井本館の名物米國製大金庫の不思議
反對論を押切り越後屋から三越へ
御婦人の殿堂デパート斷面圖
景氣の鍵は日銀の手中に
明治の代表建築、銀行の本山「日銀」
膨れゆく日銀金庫の中味反映?
國際金融戰の作戰指導本部「日銀」
榮華の夢圓ならぬ天下の「カブト町」
ボロさもボロい「天下一」の東株手數料
血統は爭はれぬ東株の投機性
時勢の逆轉は取引所に一番の苦手
人情理事長岡崎君東株を去る
舅澤山の東株理事長又難いかな
東株の興廢は理事者の腕次第
兜町五十年の繁榮大阪に狙はる
米屋街の繁昌蠣殻町に集る客種?
買占も今は夢、科學戰の蠣殻町
統制法を恨み米屋街の泣き事
深い縁の杉の森、錦糸人絹市場
開設一周年、人絹市場の盛況
更正運動に搖ぐ「人形町情緒」
土地ッ子も覺る「霞町」氣質の缺點
白木屋の創業と彦太郎立志美談
觀音様と「名水」白木屋の宣傳政策
灰燼の中から更正した白木屋
高島屋進出の礎兵亂の京都に固めらる
初代新七の豪膽と高島屋の人氣
宮内省御用と、十錢店進出の高島屋
5 京橋から新橋へ
「銀座」の前史町人文化をはぐゝむ
風呂屋の二階に大江戸繁昌の源
江戸の華萎み明朗な商家繁昌
海面へ伸びゆく都會の膨張線
廣汎なる權限に八丁堀與力の誇り
猿若狂言から歌舞伎の發祥
新富座に輝く瓦斯文明の驚異
演劇史を飾る歌舞伎座の沿革
松竹の進出に歌舞伎殿堂成る
卍巴の混戰に多難な歌舞伎座
いさゝか過ぎた「異人さん」の歡待
新島原の繁榮は維新の過渡的仇花
移轉説も吹飛ばし本願寺全く復興
築地の門跡發展は宗派分裂の賜
築地に培かはれて銀座モダニズム
現代文化悉く映ず萬華鏡「銀座」
平價切下で「銀座」座員に?職事件
廣重も目こぼしにした當時の「銀座」
伊藤公の大英斷銀座の瓦斯化
「引張り」横行し煉瓦の銀座幻滅
汽笛一聲の新橋に地下鐵が開通
地下鐵進出で銀座商店街に異常?
「銀ブラ」の初期プランタン時代
銀座享樂の絶對多數は婦人群
ネオンの銀座に反し老舗、影薄らぐ
銀座の大衆化と夜見世の強味
カフエー四百軒、享樂の「銀座」を形成
ネオンの銀座憂鬱の影くまどる
行詰つた銀座、カフエー企業も惱む
舊幕時代に始まる新橋絃歌の音
時代の要求に敏感な進歩的な「新橋」
魚問屋、仲買合せて千三百軒
一日の取引ざつと八百噸
取引魚族二百種
微妙な駈引暴騰、暴落さて原價?
新制度の下に取引方法大變革
6 春・淺草は招く
淺草の横顔
中心地觀世音
興行街の今昔
景氣を打診
7 花の上野と廣小路
江戸城の鬼門除
廣小路發展史
松坂屋と廣小路
8 新宿の膨張力
薄暗い宿場時代の新宿
顧客層が示す場末氣分
新宿商店街の發展力
9 工業地帶本所深川
旗本の町から勞働地帶へ
根津財閥の據城東武鐵道
東武・松屋・地下鐵のタイアツプ
強味が弱味ともなる機業地との聯繋
堅實一方の老大國借金が拔けてホツと一息
今も殘るか辰巳藝者の意地と張り
10 新市域の横顔
イーストエンドの迷路
お鷹野の小菅にモダン刑務所
宿場は亡びたが賑ふ品川
カニ料理と砂風呂の大森
文化的に開けゆく西郊
雜工業の街蒲田
寂れた澁谷百軒店
建て込められた中央線沿線
御役所式銘名の荒川區
中仙道の板橋宿
丘陵の豐島と瀧の川