図書アメリカ キコウ080001584

アメリカ紀行

サブタイトル1~10
編著者名
コクトオ ジャン 著者/佐藤 朔 訳者
出版者
中央公論社
出版年月
1950年(昭和25年)5月
大きさ(縦×横)cm
18×
ページ
100p 図版[1]枚
ISBN
NDC(分類)
955
請求記号
C955/C82
保管場所
地下書庫中公新社
内容注記
Lettre aux Americains.の翻訳 著者の肖像あり
和書
目次

フランスへ帰る飛行機の中で、私は君たちへの手紙を書いている
ニューヨークでは、一切が矛盾している
ニューヨークは坐っている都会ではない
ニューヨークは秘密をとても嫌う
とろとろまどろんでいる婦人を私は眺める
私は君たちと書いて来たが、これはアメリカ国民全部を指すのではない
ニューヨークの公衆は世界で飛び切りの公衆だ
アメリカの人たちよ。人間の尊厳が賭けられているのだ
フランス人が禽小屋に住み、アメリカ人が浴室に住んでいることを知らないのではない
ニューヨークの懺悔聴聞僧でも、精神病医でも、人間の良心の重荷をおろすには不十分である
物の過剰は魂を軽薄にするということをみとめたまえ
ここで私は君たちに礼をいわなければならない
ニューヨークの昼は、空が海洋的だ
ニューヨークが人を迎える場合は、家の人みたいにしてくれる
ヨーロッパではもう理解されなくなつていることを、君たちはもう少しで理解できるのだ
君たちは真実の世界をかすめている
君たちの使命は、君たちを愛し、また君たちから愛されている
私が君たちにこのような文章を書いているのは私の愛情からである
言葉に実行力のある二、三のヨーロッパ人の言葉を聞きたまえ
フランスではアメリカの本にしか興味を持たず
私は初期の映画を見たこともあるし、初期の蓄音機を聴いたこともある
私の思い違いでなければ、アメリカの輿論調査書は「アメリカの女をどう思うか」という質問で始まつている
君たちのエドガー・ポーを私たちにあたえたシァルル・ボドレールは
フランスは絶えず自己と闘つている
創造精神とは最も高次な形態の矛盾の精神に他ならないと私はしばしば書いた
われわれの世界は波となり、結び目をつくつて発展する
フランスにおける一種の自己軽蔑癖はやはり秘密武器のひとつである
フランス人はなかなか話相手と別れるのがあきらめ切れず
地球は普通に考えているよりもはるかに若いのに違いない
私はなおも書きつづける。薄明りの中で、旅客たちは体をまるめて、眠りこけている
では、お寝み