図書アネチャ060008449

アネチャ

サブタイトル1~10
山形の農村に生まれ、満州に渡った叔母の記録
編著者名
秋葉 功 著者
出版者
文藝春秋
出版年月
2021年(令和3年)3月
大きさ(縦×横)cm
20×
ページ
269p
ISBN
9784160089884
NDC(分類)
913
請求記号
913/A34
保管場所
地下書庫和図書
内容注記
和書
目次

はじめに 或る女性の短い人生

第一部 キミヨとエサオ
キミヨとエサオの昭和十二年
相撲が得意のエサオだった/エサオはアネチャが大好きだった/婦人部のサイクリングで事故が発生/おごー姉さんは大けがを負ってしまった/おごー姉さんへの暗い噂をしぼませたアネチャの絵/エサオの大叔父と叔父たちは北海道に渡っていた/進叔父に呼ばればんちゃとエサオは二人で北海道へ/エサオは青森港の明かりの美しさに魅せられた/エサオは初めて共同風呂に入った/旭川の相撲大会で五人抜きを達成/触れ合いを重ねていくうちに与吉叔父が好きになった/北海道から山形へ帰る日が来た/アネチャは東京へ出稼ぎに行っていた

満州開拓団に憧れ、アネチャは大陸に渡った
アネチャが東京から帰って来た/ニックネームが「青助大根」だった小学校の担任/戦わずして勝つ”豪傑”八郎のエピソード/夏になるとエサオたちは最上川で毎日遊んだ/じゃが芋掘りに名を借りた軍事訓練の顛末/アネチャは実家の養蚕作業を担った/川向こうから流れる歌声にアネチャは聞きほれた/アネチャは満州開拓者の花嫁に憧れた/「おごー姉さんの役に立ちたい」/祭りの踊りでアネチャは大喝采を受けた/養蚕と稲刈りに家族総出で取り組む/運動会の五十メートル走で見事一着/おごーに「満州への憧れ」を見抜かれたアネチャ/おごーの見合い話に驚く/おごーの嫁入り/山形の夏を詠んだ詩にアネチャは魅せられた/満州家族移民の花嫁募集にアネチャが応募/開拓団員との見合いで、「この人なら」と決めたアネチャ/アネチャの結婚と満州行きはあわただしく決まった/婦人部の別れの会は涙、涙、涙だった/アネチャに別れの「オットー!」が贈られた/アネチャの婚礼会場で思わぬ騒動が起こった/生まれ育った家と故郷に「さようなら」を告げた/渡満への夫の意識に覚えた違和感

第二部 キミヨと満蒙開拓団
広大な開拓地で農業活動を開始
満州到着まで臨時の会名称、会長、副会長、幹事長を決める/岸壁が見えなくなるまで団員たちは手を振り続けた/船中の自己紹介でアネチャに番がまわった/イナゴ捕り競争の強敵と邂逅/清津港で下船し満州へ向け一歩を踏み出す/東満州ハルビン近く阿城の移住地に到着/耕作開始に向け作物分類・組織編成を話し合う/広大な分譲地を検分する/自分を「武装移民」に擬する夫/鍬、鎌、スコップだけではどうしようもない/耕運機導入を母村と交渉したのだが……/耕作地種蒔き第一号は、ナス、キュウリ、トマト/「この肥沃な土地が頑張らせてくれる」とアネチャは言った/母村から蔬菜・米の指導員、計十一人が到着/全班の協力のもと田植えに取り組む/母村の神社を分祀し社殿を建設

満州の肥沃な開拓地で初の収穫
青田にそよ風が吹き抜け稲をなびかせていた/入植初の収穫を祝す試食会が開かれた/おごーからの手紙はアネチャへの心遣いにあふれていた/自分の家庭に物足りなさと不安を感じるアネチャ/初の米の収穫。失敗は許されない/まず一反の田で稲刈りと乾燥の指導を受ける/米作りには”八十八”もの作業がある/阿城とハルビン、計五市場への産物出荷が決まる/市場に対する「信用第一」を貫くために/稲刈りに野菜全班からも人を出すことになった/力量による役割分担が稲刈りの日数を短縮させた/不慣れな脱穀作業をやり遂げた喜び/初年度最後の総会で報告。「キャベツ班」「大根班」/初年度最後の総会で報告。「豆班」「米班」「ナス班」/狩猟で得た鴨、雁を全家庭に配った孝四郎/稲田拡大に向けて渡辺班長の展望

戦争、満州、分村郷中村、そしてアネチャ
真珠湾攻撃により太平洋戦争勃発/青木事務局長が灌漑構築のために動く/技術陣の提案に従い灌漑設備竣工時期が決定/各班分担で初正月に向けての作業を進める/アネチャとさち子は故郷の正月話に興じた/極寒の凍った河で孝四郎は雑煮用の鴨を狙い続けた/分村郷中村の餅つき、雑煮、初詣/班ごとの自主勉強会が衆知を集めることに/副班長二人に臨時召集令状が……/アネチャが最初の子供を出産/班長以外は「全員副班長」体制での運営を決めた「キャベツ班」/自主勉強の報告会で次年度の決定方針を各班が披露/「ナス班」が温室での種の研究を提案/中国人を雇用することで耕作地、収穫ともに拡大/真っ赤で美味しいトマトを世界初で作りたい/アネチャは第二子の「ゆか」を出産/班長三人が相次いで招集され、臨時総会が持たれた/世帯ごとの個別生活への移行という議題が示された/アネチャの日常は二人の子供とともにあった/招集が続き、耕作面積の縮小を余儀なくされる/玉音放送で日本の敗戦を知る

第三部 キミヨ苦難の帰国、そして死
入植地に別れを告げる
満州移民送出数第二位の山形県/満蒙開拓団の志望者は十数万とされる/分村郷中村入植地からの撤退、故国への帰還を目指す/終戦から一年、やっと帰国が決まった/新京の収容所で団の子供がハシカで死亡/また子供の病死者が……/引揚船出港地を目前に長女が発病か/引揚船中で二人の子供を失うことに……

アネチャ、三十一年の生涯を閉じる
喪失感と呵責の念にアネチャの心は深く沈んだ/母村に到着した一行は大きな歓迎を受けた/エサオの成長に頼もしさを感じたアネチャ/帰国の翌年、アネチャは「ゆり子」を産んだ/「実家に顔みせて」とエサオがアネチャを誘った/アネチャの亡骸にとりすがってエサオは泣いた

あとがきに代えて 「戦争とアネチャの災厄」について