新修神戸市史 産業経済編Ⅰ(第一次産業)
第一章 明治前期の第一次産業
第一節 明治前期の第一次産業
1 概説
新しい時代の幕あけ 開港と都市化 神戸市の誕生と発展 江戸時代の市域農業 維新期の制度改革 明治前期の第一次産業
2 農業構造
自然的差違と農業構造 経済的差違と農業構造 制度的差違と農業構造 米麦中心の生産物 大幅に変動した米の反当収量
地域差が顕著な被害状況 ほぼ自給できた米 西神と北神の米 西神と北神の裸麦 西神のサツマイモ 北神のジャガイモ
第二節 地租改正と地主制
1 貢祖の金納化と旧明石藩領石代金騒動
旧慣踏襲の維新期粗法 廃藩後に推進された貢祖金納化 旧明石藩領の石代金騒動 壬申地券の発行 壬申地券の意義
2 地租改正の実施
兵庫県での開租経過 改租収穫高をめぐる官民の対立 地等調整を重ねた飾磨県の改租 地租改正の影響
3 松方デフレと地主制
農村に深刻な松方デフレ デフレ期に重なった農業災害 勤倹貯蓄の励行 村外地主への土地移動 地域差の残る小作慣行
第三節 近代農業政策の開始
1 西洋農法の移植
西洋農法の移植 神戸オリーブ園の開設 神戸植物試験場の開設 植物試験場の三大機能 種苗分配と郡試植場 比較試験中心の植物試験場 農業通信も兼ねた勧業報告
2 老農組織の活用
第一回勧業会の開催 地域に農会を開設 不況下の勧業策とさぐる諮問会 国産奨励の共進会と品評会 勤倹貯蓄の奨励
3 近代的科学的農政の萌芽
近代的農法による米麦作 近代的農法と農業巡回教師 私立兵庫県勧業会の創立 郡区町村私立勧業会の活動
4 水利慣行と水利紛争
市域に多い溜池灌漑 水利団体と水利慣行 水利をめぐる紛争
5 淡河川疏水
疎水計画の発端 疎水に二一ヵ村が加盟 淡河川疎水と御坂サイフォン 工事費を上回る水害復旧費
第四節 農業経営と農業物流通
1 神戸の農業地域
明治初期の物産調査 八部郡菟原郡の農業生産 有馬明石美嚢各郡の農業生産
2 農業経営の展開
多品種を試みた水稲経営 デフレ期の経営危機
3 農産物流通の展開
都市的発展と特用農産物 有馬郡の農産物流通 明石郡の農産物流通
第五節 林野
1 林野の官民有区分と地租改正
林野の所有と利用 官林の創設と士族への払下げ 公有地の官民有区分 民有林野の多い市域 林野の地租改正
2 改租期の林野紛争
さまざまな入会紛争 中一里山訴訟 中一里山の官民有区分 摂藩入会山の入会慣行 曲折を経た入会山の民有化 六甲山の入会慣行 六甲山の入会権紛争 地方巡察使復命書と民林保護
3 神戸の鉱業
高取の石炭 丹生六甲山地の銅山 六甲の御影石 六甲の天然水
第六節 漁業
1 漁業制度の推移
維新後の漁業紛争 雑税廃止と海面借区制 漁業採藻税規則
2 神戸市域の漁業
兵庫県漁業慣行録 イワシとイカナゴ漁中心の漁業 魚市場と入会漁船
第二章 明治後期大正前期の第一次産業
第一節 明治後期大正前期の第一次産業
1 概説
工業化の時代 工業化と神戸経済 神戸の都市的発展 都市機能の整備 農業生産基盤の整備 市域農業と漁業の特色
2 農業構造
地域差の顕著な産業構成 人口急増の神戸市周辺 人口増と市域産米の不足 地主制の展開と小作地の増大 増加する蔬菜等食用農産物 減少する麦比率 壊滅の綿と菜種 急増する明石郡の葉タバコ
第二節 地主制の展開
1 地主的土地所有の地域的展開
市域での地主制の展開 市域の農家構成の状況
2 不在地主の支配
明石郡神出村の状況 伊藤家の土地集積 大西家の土地所有の推移 松方デフレ期の土地集積の特徴
3 地主経営の構造
小作地経営と小作料 明治三十二年の小作証書 小作証書の改定状況 小作料収取の実態 小作米販売と米価の動き 貸金業の展開 株式公債投資の動向 賃家および賃地経営 地主経済の動向
第三節 官僚型農業政策の確立
1 官僚主導型農制の確立
農事試験場の設立 農会の誕生と農事指導 産業組合の設 園芸場の開設 米麦作改良十六項目の奨励
黄色タバコの創始とアダムス 日露戦後の食糧増産強制 害虫駆除予防へ強制的指導 共同苗代設置の強制 米穀検査の実施 米価下落と農業倉庫の設置奨励
2 農会と産業組合 237
神戸市農会の設立 幅広い農会の活動 産米改良の奨励 大正はじめの米価低落対策 急増した産業組合 機関誌『兵庫支会報』
3 耕地整理と水利
よみがえる山田川疎水 疎水支線と溜池の増設 村と町の耕地整理 市街区造成の耕地整理 呉錦堂の小束野開拓 労力過剰対策の耕地整理
4 水利調整の展開
市営水道の創設と農業水利権 工業用水と農業水利 農業用水の紛争 湊川付替えと水利補償
第四節 農業経営と農産物流通
1 農業経営の変化
商品化の進んだ蔬菜と米 耕耘は犁肥料は鰊粕 商品米生産の自作経営 葉タバコ作の経営 中規模自作農に厳しい経営環境
2 農産物流通の整備
神戸の青物市場 兵庫米穀肥料市場の開設 産業組合の販売購買事業
第五節 林野
1 町村合併と部落有林野
財産区と旧慣使用権 部落有林野の管理組織 林野の管理と利用
2 部落有林野の整理と開発
固有森林原野の下戻 部落有林野統一の目的 兵庫県の林野政策 上淡河村の行財政と林野 入会の整理と部落有林の分割
第六節 漁業
1 沿岸漁業の停滞
地元漁業の停滞 朝鮮出漁と遠洋漁業 第二回水産博覧会神戸で開催
2 漁業権と漁業組合の成立
漁業法の成立と漁業権 漁業取締と山田巾着網紛争 駒ヶ林浦漁業組合の活動
3 都市化と漁業
漁業被害の拡大 魚市場の発達
第三章 大正後期昭和戦前期の第一次産業
第一節 大正後期昭和戦前期の第一次産業
1 概説
激動の四半世紀 激動の時代の神戸経済 市域の拡張と人口増加 都市的生活 様式の形成 慢性的不況期の第一次産業 戦時経済期の第一次産業
2 農業構造
急騰し暴落した米価 農業成長および所得の停滞 小作地率の上昇と下落 神戸市周辺の都市化の進展 東部地域の都市化と農業の変化
急減の武庫郡の米麦生産 増加の小麦減少の裸麦 増加のジャガイモ停滞のサツマイモ
第二節 農業政策の転換
1 農政の転換
米騒動の勃発 戦後不況と米価の下落 政府の米価調整策 拡大した新農会 動力農具と化学肥料の普及
大正十三年の干害 蔬菜園芸農業の発展 中央卸市場の開設 農業恐慌と農村の疲弊 自作農創設維持事業の展開 米穀統制法と米の自治管理
2 農会と産業組合の活動
神戸販売斡旋所の開設 農政団体の創設 戦時恐慌下の投売防止運動 農村改善と農会是 自力更正運動の提唱
国指定の経済更正計画 八多村の経済更正運動 産業組合の拡充
3 耕地整理と水利
都市型の耕地整理 農村型の耕地整理 山田池の築造 淡河疎水への増水努力
4 多発する水利紛争
明石郡の水利紛争 農業用水と明石市営水道の創設 明石郡農業水利改良計画
第三節 小作争議と地主制の動揺
1 初期小作争議の展開
初期の小作争議の特徴 大西家農事組合の設立 市域での地主小作人組合の設立 西部農民互助会の設立と活動
日本農民組合の結成 市域の小作争議と調停 武庫郡の作難料 六甲村の作離料調停条項 神出村の小作料減免調停条項
2 農会と産業組昭和恐慌と農村危機合
世界恐慌の波及 農業恐慌の進展 農村構造の変貌
3 恐慌期の小作争議
市域の小作争議の位置付け 武庫郡の争議状況 神戸市内の争議状況 市街近接地での争議状況 明石郡の争議状況
4 農民運動の分裂
恐慌下の農民運動 農民運動の分裂
5 地主制の解体
地主制の解体 大西家と土地会社
第四節 農業経営と農産物流通
1 農業経営の変容
蔬菜栽培と機械化 山田村の農事状況 農業恐慌下の蔬菜栽培 米価に左右される恐慌期の経営 経済更正運動下の農業経営 山田村の菊栽培 垂水のイチゴ栽培
2 農産物流通の整備
市内での販売機構の整備 出荷組合の活動
第五節 林野
1 統一政策の展開
公有林野の整理 有馬郡長尾村の林野統一 美嚢郡淡河村の林野統一 有馬郡有野村の林野統一
2 背山の市有化と摩耶山
背山の市有化 摩耶山の変化
第六節 漁業
1 昭和恐慌経済
恐慌から戦時体制へ 昭和恐慌と漁業 工業排水と漁業 中央卸市場の開設と魚市場 漁業組合の協同組合化
2 漁業組合と網元
網元の経営 漁業組合の協同組合化 水産団体の統合
第七節 戦時体制下の第一次産業
1 農業
農業生産力の衰退 戦時下の労働奉仕 化学肥料の不足 米穀配給制の実施 生鮮食料品の配給 米麦集中作への移行 一坪農園一鉢農園の奨励
2 林野
森林法改正後の林野統一 森林組合の設立 木炭用材の増産 帝釈鉱山の再興
3 漁業
水産物の統制 漁業用資材の統制
第四章 大正後期昭和戦前期の第一次産業
第一節 昭和戦後期の第一次産業
1 概説
復興期の第一次産業 高度成長期の第一次産業 安定成長期の第一次産業 市域農業の特徴と展望
2 農業構造
農業構造の六大都市比較 農業構造の西神と北神比較 ほぼ均等の米と野菜と畜産 急増後停滞し再増する野菜生産 着実に増加する果樹と花卉
第二節 復興期の農業
1 終戦直後の食糧危機
台風の襲来と食糧危機 米の強制供出 未利用資源の粉食化 ヤミ市とヤミ食糧 増える栄養失調者 インフレの激化
2 食糧増産と農園化
戦災跡地の農園化 多聞農場の開設 食用兎および山羊の増殖 新市域の拡大と食糧の確保 肥料として重要な都市屎尿 神出開拓
3 農地改革
第一次農地改革の開始 地主の抵抗と農民運動 第二次農地改革の推進 市町村農地委員会の改租 県農地委員会 県下の改革進行状況 神戸市域の進行状況 農地改革の結果
4 神戸市農政の発足
神戸市農政の目標の推移 神戸市農業経営審議会の設置 家庭農園協会と種苗のあっせん 土地改良と水利施設の整備
農業委員会の誕生 六甲山牧場の開設 多角農業総合計画の樹立 北部指導農場の開設
第三節 高度成長期の農業
1 都市化の進展と農家経済
宅地化の波と農地の減少 土地利用の混在と公害 兼業化による農家経済の向上 市民と農業
2 農業経営と農産物流通
農業経営の変化 経営規模の両極分解 兼業化と基幹労働力の流出 農業機械の導入 農産物流通の状況 低下した青果物市民供給可能率 低い神戸市場への出荷割合 低下する青果物の共同出荷
3 農業政策
新しい村づくり 市農業構造改善対策審議会 農業構造改善事業の導入 圃場整備事業等の推進 神戸市農業振興計画の策定 農業振興地域の指定 米の生産調整の始まり 畜産公害対策 東播用水事業の着手 地域(まち)づくり計画 緑農開発公社の発足
第四節 安定成長期の農業
1 都市と農業の調和
土地利用の定着化 ニュータウンと農業地域 市街化区域内農地と宅地並課税 兼業所得が謙著な農家経済 市民に親しまれる農業
2 農業経営と農産物流通
農業経営の変化 経営規模の一層の両極分解 基幹労働力流出の歯止め 農業機械化の一層の進展 農産物流通の状況 高まる青果物市民供給可能率 高まる神戸市場への出荷 増加の青果物共同出荷量
3 農業政策
野菜の契約栽培事業 神戸市農業基本計画の策定 水田利用再編対策 農業構造改善事業の推進 園芸振興基金協会等の設立
農地の流動化への取組み 広大な樹園地の造成 神戸ワインと農業公園 圃場整備事業の進展 土づくり―堆肥銀行の設立 農村総合整備モデル事業の実施 農村下水の整備着手
第五節 農業協同組合の変遷
1 農業協同組合の設立
農業協同組合の制度化 総合農業協同組合の設立 農業協同組合の再建整備 専門農協と農協の連合会
2 近代化政策の進展と農協合併
近代化政策と農協の高成長 購買事業の成長 販売事業の成長 信用事業の拡大 農業協同組合の合併
3 都市農協の経営の変化
都市化への農協の対応 合併後の農協事業の展開
第六節 漁業と林野
1 漁業制度の改革
戦後の市域漁業の推移 漁業協同組合の設立 漁業制度の改革 神戸市水産会の結成
2 漁業協同組合の合併
神戸市水産振興五ヵ年計画 西部漁業協同組合の設立 東部漁業協同組合の設立 とる漁業からつくる漁業へ
3 漁業が生き残るために
狭まる漁区と漁協の解散 海づり公園の建設 漁業の発展をめざして 栽培漁業センターの設置
4 林野
林野の荒廃と緑化運動 林野所有形態の変遷 都市空間の創出と林野
[巻末付録]