図書クウキ ノ ケンエツ060006942

空気の検閲

サブタイトル1~10
大日本帝国の表現規制 光文社新書 ; 938
編著者名
辻田 真佐憲 著者
出版者
光文社
出版年月
2018年(平成30年)3月
大きさ(縦×横)cm
17×
ページ
304p
ISBN
NDC(分類)
070.12
請求記号
070/Ts48
保管場所
開架一般
内容注記
文献あり
和書
目次

はじめに

第一部 検閲の動揺

第一章 エロ・グロ・ナンセンス対検閲官(一九二八~一九三一年)
 検閲官は淫本の評論家?
 納本から発禁処分までの流れ
 検閲官は「閲覧地獄」で神経衰弱
 「筆端露骨淫卑に渉るもの尠からず」
 サディズム、マゾヒズム、獣姦の取り締まり
 接吻は「風俗を壊乱するもの」
 伏字をめぐる検閲官と編集者の駆け引き
 中国語で代用するも許されず
 露骨な性的表現がなくても「乱倫な事項」に抵触
 医学書でも「余りに実感を唆る」と禁止
 淫本なのに「軽妙なる筆致と剴切なる表現」と絶賛
 学生新聞や同人誌にも容赦なし
 検閲体制を裏から支えた便宜処分
 柔軟な非正規の検閲の功罪
第二章 世間と共振する検閲(一九三二~一九三六年)
 ミリとテロの時代へ
 批判的な引用さえ「尊厳冒瀆の嫌」あり
 「履仲天皇」の誤植に「これでは不敬である」
 検閲体制を支えた記事差止の効果
 コミンテルンの指令を『トランプ占法』で偽装
 日米戦争の小説は「戦争誘発」扱い
 自称「天照大神」の名刺はもちろん「不敬」
 権威づけで「賜天覧」と押すと削除処分
 「世間が動かされるから動かざるを得ない」
 キリスト教徒の自己主張は「建国精神を冒瀆」
 大本教は「不敬極まることは説明を要しない」
 古史古伝も「皇室尊厳冒瀆の畏れ」
 「何となく不自由らしい一般の空気」

第二部 広がる検閲網

第三章 植民地の独立運動を抑圧せよ(台湾、朝鮮)
 知られざる植民地の検閲体制
 内地より厳しかった植民地の検閲
 「火熱の陽具は彼女の其を目がけて直突せん」
 台湾の検閲官、熱心に淫本を筆者する
 朝鮮語の風俗壊乱はレアケース
 安寧禁止こそ植民地の検閲の本丸
 ガンジーやネルーの反英運動は「民族自決を高調」
 「霧社事件に関し誣述を逞しうせり」
 金九や金日成の活動も発禁対象
 日章旗抹消事件と『東亜日報』の停刊処分
 時局と結びついたエロ・グロ表現
 フルーツをえさに中国侵略を煽動?
 植民地の検閲官、詩心を発揮
 被支配民族も「賜天覧」を活用
 痕跡を残さない植民地の検閲
第四章 聴く検閲、観る検閲(脚本、映画、放送、レコード)
 東京検閲と大阪検閲?
 検閲官との独特なコミュニケーション
 谷崎潤一郎が描いた「検閲官」
 映画検閲は内務省警務課で実施
 「海を見たら要塞地帯と思へ」
 記録映画すら制限する危うさ
 逓信省の縄張りだった放送検閲
 レコードは長らく野放しだった
 レコード検閲係はたったの二名
 「ほんに悩ましエロ模様」は不問
 「此の豆 恋の豆 とても不思議な豆」は「多少猥雑」
 「忘れちやいやヨ」騒動の顛末
 「聖徳太子」や「靖国神社」を茶化してはならない
 素人評論家による「高度な検閲」

第三部 戦争と検閲

第五章 日中戦争と忖度の活用(一九三七~一九四一年)
 日本兵の残虐行為は掲載不可
 記事指導・内面指導の拡大へ
 図書課と主要紙の生々しいやり取り
 不利益を被った地方紙・業界紙
 石川達三の「生きてゐる兵隊」は司法処分に
 小林秀雄の「蘇州」は二重に削除処分
 「軍国女性の恥曝し淫乱マダムの出現」
 出征家族への夜這いは風俗禁止
 「長期聖戦」で性的広告を取り締まり
 盟邦指導者の尊厳を守れ
 発禁処分された「義勇軍行進曲」
 石原莞爾の『世界最終戦論』も削除処分に
 セクショナリズムの横行
 情報局の発足と内務省検閲課の誕生
第六章 太平洋戦争と軍部の介入(一九四一~一九四五年)
 ポジとしての大本営発表
 縄張りを侵された検閲官の不満
 内務省の検閲に「手ぬかりですね」
 陸軍の横暴、横浜事件を引き起こす
 検閲官、陸軍の介入に抵抗する
 陸海軍のせめぎあい、竹槍事件
 東条英機に「其れでよいのか犬よ」
 皇室関係の取り締まりは従来どおり
 用紙制限で淫本・奇書は激減
 「発禁処分」を過大評価してはならない
 「時局関係検閲標準」は敗戦の不安を反映
 内務省の検閲機構、解体へ
 帝国日本の検閲体制とは何だったのか
 正規の検閲と非正規の検閲
 来たるべき「システムの検閲」?

あとがき
主要参考文献