「月給100円サラリーマン」の時代
はじめに
第1章 お金の話 ―――基準は「月給百円」
1 物価はいかの二千分の一
デフレ後は物価安定期
住宅と教育費は暴騰
2 「サラリーマン大衆」の誕生
勤め人の生活パターンが定着
『サラリマン物語』の警告
「引き合わぬサラリーマン」
3 「月百円」の暮らし
五十銭とられて帰る詰将棋
家計調査の始まり
減俸の基準も「月百円以上」
景気回復から百円サラリーマンの消滅まで
月収百円はそのまま手取り
新婚なら月五十円でも十分
子供ができると大変
大学まで行かせると最低月四十円
4 いくらあれば「裕福」だったか
『細雪』姉妹の皮算用
年収三千円が「中流」の目安
実態は九割が年収六百五十円以下
総理大臣の年俸九千六百円
5 大格差社会 ―――月百円も遠い暮らし
加太こうじ少年の昭和ヒトケタ
「カード階級」から「月百円」へ
棺桶を買う金もなく
子供を使い回す乞食
第2章 戦前日本の「衣・食・住」
1 きものVS.洋服
きものでわかる身分
五百円ではすまない恐怖の嫁入り費用
洋服普及運動
洋服は貧乏くさい
2 「食」の実際 ―――コメをめぐる戦い
コメ消費はいまの三倍
「悲惨な農民の生活を踏み台にして」
農村は官吏の減俸支持
3 「住」には悪戦苦闘
婦人誌の「家賃調べ」をひもとくと
年金代わりの家賃収入
出世を見限った「恐るべきシャイロック」
家は買ったほうが得か?
昭和初年の不動産価格
郊外住宅の登場
4 借金 ―――戦前のサラリーマン金融
悪徳高利貸し横行す
定期券購入も借金で
第3章 就職するまで
1 学歴の男装
中学出は高学歴
大学に比肩する専門学校
帝大は圧倒的エリート
2 加熱する「お受験」
「子供を実力以上の学校に入れるな」
一番人気は七年制高校
創価学会会長の「お受験塾」
「戦に比べれば何でもない」
コネと裏口
3 就職難と知識階級の没落
大卒就職率五〇%
実業学校のほうが大卒よりまし
「いまの学生はダメだ!」
「米国型教育は素晴らしい!」
就職しか考えない学生
コネと実力
4 荒れるノンポリ大学生
早慶戦フーリガン
就職の好転とノンポリ化
英語もHまでしか知らない
第4章 サラリーと昇進の「大格差」
1 初任給と昇進・出世
超一流企業の学歴別初任給
新入社員の給料はほぼ手取り
どんどん開く格差
団琢磨のボーナスは四十万円!
ホワイトカラーは退職金も巨額
2 学歴差別解消の昭和維新
民間では次第に官私差別撤廃
官庁では圧倒的に官学優位
「判任線」の下に呻吟
「私学出は全く人ではない」
司法界に私立出身者が多かったわけ
3 大正バブル世代と昭和ヒトケタ世代
五十円から百円へ―――大正期の給与倍増
バブルで有頂天
学生の就職希望は贅沢か?
生保のセールスで月五百円
4 植民地の給与・外資の給与
植民地手当は三割
着物は三越に注文
百円以下の月給なし
一旗組を蔑視するインテリ
軍の機密費膨張と「転向右翼」
「外資」で働くサラリーマン
第5章 ホワイトカラー以外の都市生活
1 自立のコスト
喫茶店開業に千円
仲見世の家賃二十七円
タクシー運転手は月収五十円
2 貧乏サラリーマンとしての軍人
「貧乏少尉、やり繰り中尉、やっとこ大尉」
デーコロとピーコロ
裏長屋に住む将校
大尉になってもまだ大変
同年齢で官僚とは年収に倍の開き
軍人としてのサラリーマン
3 女性の生活
恐ろしく低い女性の給与
男よりさらに狭い教育機会
モダンガールの敗北
大売春王国
娼妓の前借り平均千百円
売春料金にもデフレ
戦前の「援助交際」
4 奥様のムダ使い
最大の敵は同性
月給百円以下で女中など使うな!
芸者のつく宴会は一回六十円
争って着物を仕立てる高級官僚の妻
終章 暗黙の戦争支持
左翼からのアジテーション
枠組み内の現実のみに目を向け
内に秘めた不満
プチブルの本能的卑怯
景気は回復、サラリーマンはさらにおとなしく
気づいたときは遅かった
おわりに
文庫版あとがき
参考文献
解説 戦前庶民文化史の名ガイド(パオロ・マッツァリーノ)