戦争記憶の継承
はしがき(松尾精文・佐藤泉・平田雅博)
[序章]戦争記憶を記憶する(佐藤泉)
1 「戦争記憶」への関心
2 「歴史」の認識論的転回
3 相対主義の時代と倫理の問題
4 「表象(不)可能性」「記憶の場」「継承」
5 日本社会の記憶の輪郭
6 記憶の記憶化への参与
7 「聞き手」の思想
8 本書の構成
[第1章]沖縄戦「集団自決」をめぐる「記憶」の抗争(宮城晴美)
一九四五年三月二五日夜の出来事
はじめに 法廷を利用した「記憶」の再構築
1 座間味島「集団自決」の概要
2 元戦隊長の「記憶」
3 A氏の証言
おわりに 歴史修正主義者の意図するもの
[第2章]沖縄県の戦争体験者のいま(吉川麻衣子)
戦争体験の捉え方の変化に注目して
はじめに 語り手のペースを大切にすること
1 沖縄戦の体験者との研究
2 沖縄戦を体験した二〇人の語り部たち
3 語り部たちへのインタビューの方法
4 戦争体験に対する捉え方の変化のきっかけとなった事柄・体験者の想い
5 語り部の語り
6 沖縄戦の体験者にとっての戦後の意味
おわりに 戦争体験を語ること・聴くことについての私論
[第3章]戦争記憶の戦後世代への継承(北村文昭)
心理学の視点から
はじめに
1 本章担当者について
2 継承について
3 継承の安定性について
4 メディアの信頼性について
5 目的的な語りについて 目的の変わりのなさ
6 いま、語りを継承する意義
7 調査について 戦後生まれのひめゆり平和祈念館の人々の思い
[第4章]映画に見る朝鮮戦争の記憶(宋連玉)
米・韓・日の比較において
はじめに
1 朝鮮戦争とはどのような戦争だったのか
2 朝鮮戦争を描いた映画(米、オランダ、北朝鮮、中国、韓国)
おわりに 朝鮮戦争の記憶を繋いでいくために
[第5章]加害記憶の伝達と継承を支える方法とは何か?(君塚仁彦)
「博物館」をめぐる「歴史戦争」の場から
はじめに
1 オットー・ヴァイト視覚障害者工作所博物館 「抵抗の拠点」の博物館化
2 加害記憶の継承を支える方法とは何か? 歴史の現場、そして「躓きの石」
3 東北アジアの「歴史戦争」「平和」「和解」を考える 一九九〇年代を見据えて
4 「戦争博物館」の復活と台頭
5 沖縄戦の戦争記憶を「伝える」ことを通して 忘却への抵抗としての歴史教育
[第6章]ロンドンの帝国戦争博物館(平田雅博)
はじめに 戦争記憶の風化と次世代への継承
1 帝国戦争博物館の常設展
2 博物館による戦争教育
おわりに 学校と博物館のつながり
[第7章]戦争の記憶と戦争犯罪追及(新倉修)
公衆の追憶と公的追及の狭間について
1 ホロコーストの史跡を歩く
2 追想の形 ワルシャワとクラクフ、ベルリンとラフェンブリュック
3 大きな物語と戦争体験
4 戦犯追及と戦争の記憶
[第8章]いま「戦争」を語ること(杉浦勢之)
1 「戦争」を巡る
2 「危機」を語る言葉
3 総力戦とその「外」
4 「戦争」を語る言葉
5 「死」を語る言葉
6 一九六九年、もう一つの戦争から
[第9章]学生たちは戦争記憶とどのように向き合ったか(松尾精文)
1 学内公開フォーラム開催の経緯
2 学内公開フォーラムの概要
3 一連のフォーラムから、学生たちは何を学び、また何を考えたか
4 戦争体験、戦争記憶と、どのように向き合うか
おわりに
[補章]私たちは戦争体験をどのように受けとめ、引き継げばよいのか
学内公開フォーラムの記録から
第1回フォーラム 歴史と記憶 過去を死なせないために(平田雅博)
第3回フォーラム①「歴史を逆なでする」博物館(君塚仁彦)
第3回フォーラム②ホロコーストを次世代に伝える(中谷剛)
第3回フォーラム③ひめゆり資料館を継承する(仲田晃子)
第3回フォーラム④パネルディスカッション
執筆者紹介