硫黄島に眠る戦没者

はじめに
第１章　硫黄島に眠る戦没者
一通のメールから-ＤＮＡ鑑定　厚労省の「門前払い」／差別的な対応／説得力の乏しい厚労省の言い分／沖縄では「遺品縛り」を一部解除／戦没者遺骨収容は「国の責務」／妻と幼児二人を残し硫黄島へ／鑑定ができるのに放置／遺族さえ自由に渡れない島で、米映画ロケ／
筆者が渡島できた理由／初めての渡島／遺骨収容で見た光景の衝撃／「見つかった骨はみんなお父さんだと思う」／硫黄島でも「遺品縛り」をほどくために／厚労省の方針転換-「毎日新聞のおかげです」／絶句した遺族／「遺品縛り」を外したとたんに出た成果
　
第２章　遺骨収容の戦後史
満州国建国と高まるアメリカとの緊張／願望だけの「終戦構想」で開戦／遺骨なし、空の箱さえ送れなかった政府／硫黄島を生き延びた兵士／「死の跳躍」／「白骨の島」／一万体の収容で「終了」-「象徴遺骨」／「終了」できなかった理由／
遺骨収容の根拠法-「戦後」七一年の成立／硫黄島での遺骨収容が進まない理由
　
第３章　「楽園」から「地獄」となった硫黄島
一〇〇〇人以上が暮らしていた戦前の硫黄島／平穏で豊かな生活の日々／幸せな子ども時代と違い戦争の影／教員一家の暮らし／島独自の共同体／迫る戦雲と島民の強制疎開／米軍占領下の硫黄島から日本復帰へ／かなわない帰島の願い
　
第４章　戦闘
開戦と「絶対国防圏」／硫黄島の戦略的価値／戦略的価値の変容／指揮官　栗林着任／戦局の悪化と海軍との確執／死を覚悟していた栗林／悪化する兵士たちの環境／万歳突撃の禁止／「水際撃滅」戦術の変更／「地獄の中の悪夢」を見た米上陸軍／
若い少尉が見た栗林像／栗林のいらだちの理由／侍従武官宛ての電報／最高指揮官への不信感とさらなる地獄／死体に紛れて「特攻」／補充された「竹やり」と訣別電報／生き延びた兵士たちの戦い／戦闘で死亡した島民たち／硫黄島を巡る東条の上奏-甘すぎた現状認識／
最前線で戦わされるのは庶民
　
第５章　遺骨収容-問われる国の本気度
「日本人」のはずが外国人と判明／報道によって明らかになった事実／遺骨収容にまつわる疑問／収容した「一ニ八万体」は日本人か？／繰り返された専門家による指摘／「墓荒らし」／厚労省の杜撰な対応／科学的指摘を無視／厚労省は嘘で科学者をだました？／
「とんでもないこと」と元抑留者／絶望的に立ち遅れた抑留研究／現地証言の信憑性／フィリピンでも行われていた取り違えと隠蔽／これが「情報公開」？／「すべて日本人」と虚偽の説明／早く収容を再開したかったから？／著しい専門性軽視／「遺族の心情に思いを」／
沖縄・遺骨が含まれる土砂を新しい戦争の基地に？／幻想の「一撃講和論」の犠牲になった沖縄／「マヨネーズ」状の軟弱地盤／具志堅の苦い思い出／繁華街となった激戦地／失業者とともに遺骨収容／沖縄に多い「破砕遺骨」／うねりを生んだハンガーストライキ／
南部には米兵の遺骨も-可能性を認めた政府／土砂埋立て取りやめへの「ターニングポイント」？／国によって異なる戦没者の遺体・遺骨の扱い／「のろわれた基地になる」-元米海兵隊員の訴え／土砂に紛れる遺骨／「遺骨はどんなに小さく砕けても人間」／
二度目のハンスト／衆議院議員会館で披露された破砕遺骨／なぜ「南部」の土砂を？／沖縄戦戦没者遺族の訴え／「しっかり検討」と繰り返す防衛省職員／「常識としてどうか」と担当相／採掘を容認した沖縄県／政府により分断される人びと
　
終章　戦没者遺骨収容の未来
沢村栄治投手の最期／海没遺骨／海没者は「水葬」-探さない、収容しないという国の方針／遺骨収容の優先順位／「水葬」方針の見直し／海没した父／海没地点が分かっているのに・・・／硫黄島で死んだ父を追って／硫黄島からの手紙／ＤＮＡ鑑定の周知が急務／
膨大な検体-何のための収容？／先行してＤＮＡの採取を／あきらめられたニ三万体？／鑑定体制の整備が急務／問題は人員不足だけではない／「推進法」の集中収容期間終了まであと三年／元島民たち　苦難の戦後史／三世たちが受け継ぐ思い／「世界的に特異な島」／
あきらめない-遺族たちの思い
主要参考文献
あとがき