職業作家の生活と出版環境
はじめに―文学研究の方法とリソースの可能性(和田敦彦)
一、 〈不純文学〉研究の可能性
二、 日記資料の可能性
三、 本書の構成
第1部 論考編―作家とメディア環境
作家とカストリ雑誌のせめぎ合い
第一章 カストリ雑誌に消費された純文芸作家―榛葉初期作品における「性」と肉体―(須山智裕)
はじめに
一、 「蔵王」における男女の「復活」
二、 「蔵王」評―「肉体文学の新版である」
三、 『りべらる』の稿料の代償
おわりに
モデル小説の権利問題と影響力
第二章 モデル小説の応酬とその批評性―榛葉英治『誘惑者』と四条寒一「縄の帯」―(加藤優)
はじめに
一、 榛葉英治と四条寒一
二、 四条寒一をモデルにして―榛葉英治『誘惑者』―
三、 榛葉英治をモデルにして―四条寒一「縄の帯」―
四、 若者をまなざす視線
おわりに
戦後の文芸メディア変動の力学
第三章 純文学を志向する中間小説作家・榛葉英治―文芸メディア変動期における自己像の模索とその帰結―(田中祐介)
はじめに
一、 「中間小説」登場期の文芸メディア変動
二、 「通俗」「中間」「純文」の狭間の自己像
三、 更なるメディア変動のなかで―直木賞志向への転換
おわりに
文学と映画の関わり
第四章 一九六〇年映画と文学のすれ違う共闘―榛葉英治『乾いた湖』の映画化による改変をめぐって―(中野綾子)
はじめに
一、 『乾いた湖』の映画化経緯
二、 映画『乾いた湖』の改変
三、 『太陽の季節』の影響
四、 映画原作者としての榛葉英治
おわりに
戦争の記憶とその継承
第五章 作家が描いた引揚げ体験と南京大虐殺事件―『城壁』との関わりから―(和田敦彦)
はじめに
一、 『城壁』の成立
二、 資料の扱い
三、 描き方の特質と忘却
四、 引揚げ体験という靱帯
おわりに
「美しい日本」の懐古と追憶
第六章 作家はなぜ「釣り」を書くのか―榛葉英治『釣魚礼賛』を起点に―(河内聡子)
はじめに
一、 趣味としての「釣り」、 主題としての「釣り」
二、 書く対象としての「釣り」の意識
三、 文学における「釣り」の系譜
四、 「釣り」を書くことをめぐる葛藤
五、 『釣魚礼賛』の受容と評価―「日本の原風景」の記憶と記録
六、 懐旧の回路としての『釣魚礼賛』
おわりに
人生から引き剥がせない記憶
column 引揚げ作家の満洲経験を紐とく(大岡響子)
第2部 データ編―日記資料から何がわかるか
日記への関わり方―日記のなかに書かれた「日記」の記録
[一九四八年(三六歳)~一九九二年(八〇歳)]
表1 日記を記した日数
表2 日記の執筆日数、量(字)の推移
表3 一日平均の執筆量(字)の推移
作家の経済活動―金銭収支の記録
[一九四六年(三四歳)~一九九八年(八六歳)]
表 榛葉英治の著作リスト一九五五―五六年(原稿料記載ありの抜粋)
図 日記紙面に設けられた「作品録」
文壇グループの動態―人脈の記録
[一九四九年(三七歳)~一九九二年(八〇歳)]
十五日会・十日会/下界の会・波の会/魚と遊ぶ会/宴の会/物の会
雑誌メディアへの言及の変遷―雑誌に関する記録
[一九四六年(三四歳)~~一九九八年(八六歳)]
図 日記中に貼られた雑誌広告
「癌」という病―癌に関する記録
[一九四九年(三七歳)~一九九七年(八五歳)]
飲酒・節酒と職業作家―飲酒の記録
[一九四七年(三五歳)~一九九八年(八六歳)]
表 酒類の語彙の頻度、及び共に現れる語彙
図 禁酒打開策『日記』(一九七一年一月二一日)
作家の日常に見えた戦後史の風景―時事に関する記録
[一九四六年(三四歳)~一九九七年(八五歳)]
図 『日記』一九九二年三月二〇日「北方四島問題」など時事の関心事について紙面を割く。
日記に基づいて生成される自伝
column 日記と自伝の間(河内聡子)
日記人名リスト―出版メディア関係者一覧(康潤伊)
あとがき(和田敦彦)
執筆者一覧