唱歌「蛍の光」と帝国日本

モースが聴いた「蛍の光」―プロローグ
「音楽に対する耳」／高嶺家の晩餐と東京女子師範学校の卒業式／音楽教育改造との遭遇
　
「蛍の光」の誕生　「国民国家」日本の成立
『小学唱歌集』初編と「蛍の光」
『小学唱歌集』初編の版権届と発行時期／音楽取調掛の設置と伊澤修二／伊澤と目賀田種太郎の唱歌上申書／音楽取調掛における学校唱歌の構想／音楽取調掛としての稲垣千穎／唱歌掛図と音楽伝習人
『小学唱歌集』初編の成立経緯
歌詞の成立過程分析と前提／文書番号「十三」「唱歌指令ニ依リ再調ノ伺」／文書番号「十四」「唱歌掛図拾四葉撰定ニ付伺」／文書番号「十三」と「十四」の関係／「改正増刪」と「唱歌本」草稿／出版差止めと修正要請
「蛍の光」歌詞の成り立ち
「唱歌掛図」第十二図の歌詞／初案に対する検討／第二稿の「蛍ノ光」／第三稿「蛍」に対する修正要求／『小学唱歌集』初編の「蛍」
“Ａｕｌｄ Ｌａｎｇ Ｓｙｎｅ”と脱亜入欧
メロディーの来歴／ロバート・バーンズの「遠き昔」／「オールド・ラング・サイン」の普及と讃美歌／『小学唱歌集』による“脱亜入欧”
「蛍の光」と「国民国家」日本
「ほたるの光　窓の雪」／「書よむ月日重ねつつ」／「とまるも行くも　限りとて　明けてぞ　けさは別れゆく」／「筑紫のきわみ　みちのおく　海山とおく　へだつとも」／「千島のおくも　沖縄も　八洲のうちの 守りなり」／「至らんくにに　いさおしく」／
「つとめよわがせ つつがなく」
　
「蛍の光」の拡大　「帝国」日本への道
「ふみよむ月日　かさねつつ」―学校教育
卒業式と「蛍の光」／華族女学校の卒業式／「蛍の光」の広がり／唱歌教育と「蛍の光」／教育勅語と儀式唱歌
「至らんくにに　いさおしく」―軍隊と戦争
軍備拡張と軍隊の編成／「つとめよわがせ」の構造／「国民」としての「男子の務と女子の務」／「男子の面目」と「義勇奉公」／「出征兵士」と「忠勇の精神」／「わがせ」の「つとめ」
「蛍の光」の広がり
「筑紫のきわみ　みちのおく」の〝外〟／「千島のおくも　沖縄も」の〝外〟
「千島のおくも　沖縄も」から「台湾の果ても　樺太も」へ
吉田一人氏による追跡／いつ「台湾の果ても　沖縄も」になったのか／その後の「千島のおくもおきなはも」／唱歌教科書・唱歌指導における「蛍の光」
『小学唱歌集』後の唱歌
唱歌集と軍歌・唱歌／「文部省唱歌」の登場／「日の丸」と「富士山」―台頭する「日本」／「われは海の子」と「冬の夜」／文部省唱歌のなかの戦争／「出兵兵士」と「同胞すべて六千万」
　
「蛍の光」の膨張　東アジアのなかの日本
東アジアのなかの唱歌
『小学唱歌集』初編後の東アジア／「大日本帝国」の「国民」／韓国・朝鮮の唱歌／台湾の唱歌／中国の唱歌／学堂楽歌の成り立ち／唱歌「惜春帰」
台湾植民地化と唱歌教育
伊澤修二による唱歌導入／台湾国語学校講習員卒業式／台湾総督府国語学校の「蛍の光」／台湾公学校における唱歌教育／『公学校唱歌科教授細目』のなかの「蛍の光」／台湾総督府『公学校小学唱歌集』と「蛍の光」／台湾における「蛍の光」／式日唱歌「蛍の光」／
「蛍の光」の「締め出し」
韓国・朝鮮における「蛍の光」
独立門定礎式と「愛国歌」／尹致昊と朝鮮の開化・独立／韓国保護国化と唱歌教育―『普通教育唱歌集』第一輯／愛国啓蒙運動と「愛国歌」／植民地支配下の「愛国歌」／朝鮮総督府による唱歌教育
　
「蛍の光」の崩壊　「大東亜」日本の幻想
「蛍の光」と〝大東亜〟
「殊に第四節は面白くない」／さよなら〝蛍の光〟／〝新しい蛍の光〟を／「花かをる」と「学びの庭に」
「蛍の光」と〝鬼畜米英〟
米英音楽一掃と「蛍の光」／「敵国の曲を追ひ出さう」／「蛍の光」の〝運命〟
「ひとつに尽くせ　国のため」―「尽忠報国」
「昭南の果ても　アリューシャンも」／「やしま」の「まもり」と「わかせ」
　
「蛍の光」の戦後　敗戦後の日本
戦争終結と「蛍の光」
〝敗戦〟日本の「蛍の光」／〝解放〟朝鮮の「蛍の光」
戦後処理と「蛍の光」の「日本」
「八洲」の〝そと〟の沖縄と千島／沖縄は〝そと〟か、〝うち〟か／どこまでが「日本」なのか
「国民国家」と「蛍の光」
「国民国家」から「帝国」へ／現在の「国民国家」日本
世界のなかの「蛍の光」―エピローグ
「蛍の光」と中国の「地久天長」／台湾の「驪歌」と卒業歌／イギリスにおけるスコットランド
　
あとがき
参考文献