図書セダイ ノ ショウワシ000068937

世代の昭和史

サブタイトル1~10
「戦争要員世代」と「少国民世代」からの告発
編著者名
保阪 正康 著
出版者
毎日新聞出版
出版年月
2022年(令和4年)10月
大きさ(縦×横)cm
19×
ページ
222p
ISBN
9784620327341
NDC(分類)
210.7
請求記号
210.7/H91
保管場所
閉架準備棚
内容注記
和書
目次

なぜ世代論なのか―まえがきに代えて
 
第1章 戦争要員世代へのレクイエム
青春を戦争に奪われた「大正11年生まれ」
日本近現代史に世代論を持ち込む理由/戦争でもっとも数多く死んだ世代/「お母さん、やはり悲しいですね」/戦死した仲間に見つめられている
「我々は戦争のために生まれたのではない」
「われわれの世代の記録を残そう」/学徒兵は市民兵の一員である/軍事指導者の戦争責任を問い直すべき
大正10年代生まれは「戦争と死」をどう表現したか
戦死者の87%は大正生まれが占める/「遠い他国でひょんと死ぬるや」/水木しげるの「生か死か癖」/戦争を調べずには死ねないという執念
前世代の戦争責任を問うた司馬遼太郎
ある世代の苦しみは前世代がつくった/何と愚かな時代に巡り合わせたのか/「昭和史を書くことは精神衛生上悪い」/「戦争のない時代に生まれてこいよ」
 
第2章 戦争の時代を動かした先行世代
「特攻世代」を死地に向かわせたのは誰か
なぜ陸軍の軍人は戦争へと突出したのか/東條英機には戦場体験がなかった/軍事を政治に下の据えた山本五十六/石橋湛山の「生きる軸」/「国家」か「個人」かという対立軸
「特攻世代」は軍国主義国家に身を捧げたのではない
暴力と謀略がセットになっていた/「帝国海軍のためには戦争はしない」/東條と山本の国家観はなぜ異なるのか/息子を戦争で失った石橋湛山
鳩山一郎はなぜ東條英機に屈服したのか
戦時下の政治家の3タイプ/反軍的姿勢を貫けなかった鳩山一郎/国定教科書はどう変遷したか/「大正デモクラシー世代」が数多く戦死/世代の知性は先行世代の教育がつくる
 
第3章 戦後75年、歴史の教訓
鶴見俊輔の「転向」と遠藤周作「信仰」
鶴見俊輔が掘り下げた「転向」体験/戦時下のキリスト教徒・遠藤周作/古山高麗雄が描いた真のリアリズム/戦場には人間の裸の姿が露出する/現代史の過酷な運命を受容した世代
天皇による平和へのメッセージ
政治的にならずに時代状況を語る/コロナに対峙する国民に覚悟を与える/平成の天皇を継承する平和メッセージ/天皇は積極的に戦争に賛成していない/戦争忌避の感性と皇室への信頼
 
第4章 裏切られた「感受性豊かな世代」
渡邉恒雄、野中広務、品川正治の「非戦」
渡邉恒雄の戦争への怒り/戦争要員世代にこそ憲法を語る権利が/戦争を起こす側か、止める側かを問う/「左翼」よりも強い非戦意識/村山談話を支えた野中と後藤田
小田実と野坂昭如の戦争体験
聖戦と民主主義のはざまで/「私が見たのは無意味な死だった」/権力は事実を捏造し、国民を欺く/焼夷弾の落ちる音を描写/妹を一人で看取るという戦争体験
子どもたちを国策の生贄にしたのは誰か
野坂昭如の人間洞察の深さ/皇民教育の異様さを受け入れた世代/世代を代表する、山中恒の怒り/修身の教科書が生き方を規制していた/級友の半数は陸軍幼年学校を志願/戦後は瞬く間に「民主主義礼賛」へ
山中恒、本田靖春、渡辺京二の戦中・戦後史
人間性を侮辱された状態/「天皇のために死ぬ」ことを受け入れた/外地で敗戦を迎えた世代/2等兵の遺骨を掲げた中学生/学童疎開による心理的負担に苦しんだ
映画監督・篠田正浩らの思想的な闘い
児童を玉砕の道連れに考えていた軍部/「以来、私は歴史の教師を失った」/皇国史観と唯物史観には共通点がある/「国家の虚構」を克服する姿勢/児童を義勇軍に追い立てる歴史の暴挙
 
第5章 少年たちは戦争の残酷さに直面した
「満蒙開拓青少年義勇軍」と「海軍特別年少兵」の悲劇
過酷な運命を強いられた少年たち/中学人への暴行、少年兵の自殺も/海軍少年兵3200人が戦死した/東條英機と辰巳栄一との対立/疎開による深刻な心理的後遺症
少国民たちは「価値観逆転」をどう生きたか?
戦時下の皇国少年の覚悟を問われる/「聖戦必勝」に収斂していった学校教育/次世代の子供たちを嘘から解放しなければ/「神国日本」は完全に払拭されたのか?/「黒塗り」を笑いながら見る米軍将校
軍国教育によって負った「心の傷」
少国民世代が書き残す現代史/子供たちの心の傷は戦争体験継承の要/戦時下の教師は国家の駒の一つだった/極端から極端へ動いた価値観
 
第6章 半藤一利を継承する
薩長支配の帰結が太平洋戦争だった
まず疑ってかかるという意識/ファシズムに通じる語彙に敏感になる/一勢力に利用された歴史/日本人はなぜ四文字七音が好きなのか/いつ戦争の時代に入るかわからない
「戦争の傷痕」はいかに継承されうるか
時流に巻き込まれる日本人の性格/各世代が戦争にどう向き合うか/「ノモンハン事件を書くことは、俺に死ねということだ」/司馬遼太郎が抱いた大本営への不快感/戦争の傷痕が折々に姿を現す
軍事優先社会は後代にいかなる「波動」をもたらしたか
半藤一利の「日本近代史40年周期説」/軍事教育は児童に伝わっていった「波」/復興、成長、繁栄とその終焉、次は?/教育は単一色であってはいけない/日露戦争の成功体験が錯誤の起点
戦争への恐怖という「歴史的遺産」
世代を超える鼎談の試み/軍隊についての無知は左右とも/軍事をより論理的にとらえる/平和を誓うことが戦死者たちへの追悼/半藤一利から青木理への申し送り