石原莞爾の変節と満州事変の錯誤
はじめに
第一章 「つくられた石原莞爾像」―カリスマ神話の形成―
1 石原莞爾の生い立ちと郷土
2 日露戦争と世代的位置
3 日露戦争と戦略研究―最終戦争史観の成立―
第二章 「八紘一宇」と日蓮主義
1 近代日蓮主義運動の勃興
2 日蓮主義にとっての日清・日露戦争―教義の普及と浸透―
3 「八紘一宇」―田中智学の国体論―
第三章 「最終戦争」と「予言」―日蓮主義運動と入信過程―
1 国体問題と日蓮主義信仰―「日本国体論」と「天皇主権説」―
2 入信の経緯と動機としての「予言」
3 対米感情と排他的教義の共鳴
第四章 陸軍の課題としての対米戦略
1 対米戦争の可能性
2 石原莞爾における対米戦略の形成
3 日蓮主義運動の可能性―震災と予言―
補論1 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』に見る日蓮主義信仰と社会変革
1 『銀河鉄道の夜』の生い立ち
2 贖罪意識と「二つの天上」にみる死後の世界観
3 ジョバンニの切符に見る「現実世界の優越性」
4 革命への期待とその変遷
おわりに―ジョバンニにだけ持たせた切符―
第五章 満洲侵略の前提状況
1 陸軍将校とその世代
2 関東軍の経歴―独走する現地日本軍―
3 張作霖爆殺事件
第六章 満州事変の決行
1 満洲領有の合意形成―「北満参謀旅行」―
2 満洲領有の理由と満洲観
3 陸軍中央の満蒙政策―南次郎陸軍大臣の訓示と「中村震太郎事件」―
4 満州事変の決行
第七章 満洲国建国にともなう変節
1 新国家樹立案
2 満洲国建国と変節
3 変節の表明
4 石原莞爾研究と信仰問題
① ナポレオン研究に見る分析と戦略
② 信仰問題―満洲と国防の関係―
補論2 石原莞爾の「発心」についての推論
第八章 参謀本部改革と「国防国策」
1 満州事変後の人事
2 二・二六事件
3 戦争指導課の設置
4 「五カ年計画」の可能性と意義
第九章 構想の破綻と変節
1 盧溝橋事件と近衛文麿内閣
2 構想の破綻と「第二の変節」
3 「最終戦争」構想の放棄―「第三の変節」と敗戦―
4 石原莞爾の戦後
第十章 満州事変と予言信仰の錯誤
1 戦争計画の変更にともなう石原の変節
2 「顚倒の論理」―「最終戦争論」における失敗の原因―
3 満州事変の影響
おわりに―「石原莞爾神話」の虚構性―
あとがき
参考文献
事項索引・人名索引