家の履歴書 今は亡きあの人篇
高峰秀子
その時の自分の身丈に合った生活をするのが理想
天本英世
彼女と住むはずの家で三十年一人暮らし
川谷拓三
乗っ取ったも同然だった家内の実家
古今亭志ん朝
一つ屋根の下に赤の他人三人が住んた少年時代
丹波哲郎
祖父の家は2万坪、生家は3千坪、広い家はイヤだね
中野孝次
青春の苦渋に満ちた二畳間を一昨年書斎に再現した
淀川長治
両親の寝室に並んだ枕を見て、父を憎み母を哀れんだ少年期
佐藤慶
嫌なものには徹底的に「NO」でも"家"はカミさん任せです
谷啓
新築の家が全焼。持ち出せたのはクレージーの衣装と楽器だけ
藤岡琢也
結婚後十年住んだ団地が僕の俳優としての哀歓を知っている
下條正巳
月八十本のラジオドラマに出演してようやく建てた世田谷の最初の家
久世光彦
お手伝いさんの部屋の天井裏に乱歩の世界を垣間見た初年時代
清川虹子
最愛の人の遺産相続を固辞、意地で買った7百坪の豪邸
梨本勝
座敷に積まれたピンクの座布団を見て母の再婚を痛嘆した小二の秋
名古屋章
今の家を建てる時、建築家にイメージを聞かれ「筵一枚橋の下」と即答
笠原和夫
転校先新潟で遭った同級生は代表作「仁義なき戦い」を暗示する"侠客"
山城新伍
父親が盲腸を施術する傍らで母親が糸繰り内職をする貧乏医院だった
夢路いとし・喜味こいし
十代の半ばで大阪・天王寺に定住するまで旅巡業の楽屋が家だった
藤田まこと
一年の三分の二を過ごすホテルが一番落ち着く。やはり僕は生涯、旅役者
小林桂樹
父の月給百円、広い庭付き家の家賃が八円。またそんな時代が来ないかなぁ
原ひさ子
明治、大正、昭和、平成、ゆったりしたペースでやってまいりました、はい
石井好子
パリの歌手時代、私の後ろで踊っていた娼婦たちの赤裸々な生き方が好き
飯田深雪
意に反する外交官との結婚は忍従の果てに五十二歳で解消
双葉双十郎
僕の引越しは青大将にはじまりネズミに終わる高輪界隈ウロウロです
田村高廣
父・阪妻は静かな嵯峨の家に移り、これからという51歳の時、急逝
緒形拳
一家離散、他家の物置を転々とした俺の"実家"は大船の北条秀司先生宅
内藤ルネ
中原淳一に招かれ上京、ひまわり者の三畳半で東京生活が始まった
メイ牛山
美容界の先駆者は九十三歳にして時代の最先端六本木ヒルズ住まい「ここは歳とった人に最適よ」
川内康範
函館にいた少年時代。供物をホームレスに施す母の姿が僕の人生の骨格になった
あとがき