大衆新聞と国民国家
はじめに 大衆・新聞・国民国家
大正一三年元旦/大衆社会の形成/国民の大衆化/客分と国民/国民国家の中の新聞
第一章 「桐原式」の時代
1 挫折した民権家
小紋縮緬のしゃれ男/忘れられた新聞人/慶応義塾に学ぶ/大阪商業講習所所長/改進党の活動家として/衆議院選で二度落選
2 「桐原式」
月給百二十円の営業主任兼広告部長/大阪朝日に追いつけ/大相撲優勝力士に懸賞/「素人義太夫」人気投票/「俳優投票」が大当たり/新案妙趣、諸人の意表に出て/感性の均質化/「桐原式」の射程
第二章 大朝VS大毎
1 懸賞投票大論争
筆戦を開く/自ら抹殺すべき暴言/富籤類似の行為/論戦エスカレート/投票用紙を大量に販売/大阪府知事らの仲裁で和解
2 代議士予選投票
最初の地方版/「桐原式」代議士版/筆戦ふたたび/朝日は何故に狼狽せるか/約束を破った毎日?/投票辞退の広告/社長・社主を名指しで糾弾/今回も突然の調停決着
3 大阪瓦斯問題
文明開化の象徴・ガス灯/大阪瓦斯創業記/市有主義対報償主義/論説の争い/雪堂本多精一の活躍/報償契約で決着/競争のダイナミズム
第三章 均質化される「感性」
1 家庭小説
「家庭小説」とは」何か/理念としての「家庭小説」/「己が罪」の大ヒット/「読者」はだれか?/流行語としての「家庭」/趣味のある上品なもの/プレ大衆小説
2 慈善と健康
慈善という感性/大阪大洪水の義捐金募集/応分の出金/ノルマントン号の沈没/五社連名の「義金募集広告」/イベントとしての慈善/健康という領域
3 日本新八景
風景の発見/われ等の新しい好尚/投票総数九千三百四十八万枚/国民的風景の誕生/観光のまなざし/観光地・上上高地の誕生
第四章 「報道新聞」という虚構
1 天国に結ぶ恋
始まりはベタ記事/良家の令息令嬢/遺体盗掘の衝撃/全身一糸も纏わぬ・・・・・・/ふたりの恋は清かった/メディアが作った「物語」
2 爆弾三勇士
一九三二年という年/上海事変/一等工兵三人の戦死/「神話」の誕生/血染めのハンカチ/軍歌・映画・演劇・・・・・・/廟巷鎮で何が起きたのた/大衆新聞の生理
おわりに―総力戦体制下の新聞
総力戦体制/軍歌の募集と慰問運動/新聞の「一九四〇年体制」
あとがき