戦後日本の傷跡
序論 身体としての戦後日本そしてその傷跡 坪井秀人
第一部 戦争の傷跡とアジアの中の戦後
傷痍軍人の語る「傷跡」-直井潔の作品とケアの様相をめぐって 市川遥
生者を傷つける死者との回路-川端康成『虹いくたび』 葉暁瑶
宮尾登美子の満州体験と帝国の傷跡-語られる引揚げ、想起する苦しみ ニコラス・ランブレクト
台湾先住民を日本人にさせる殖民暴力とその傷跡の分有-日本のおかげと恩という語りとの出会い 中村平
移住者たちの「在日朝鮮人文学」-「密航」と収容所、そしてアメリカ 宋恵媛
「留用」と「引揚げ」-加藤幸子『夢の壁』にみる少女の記憶 解放
在韓被爆者支援と文学-深川宗俊と御庄博美 川口隆行
第二部 傷の記憶と表象
脚本家水木洋子と戦後社会派映画再考 キツニック・ラウリ
母の死とオリンピック-吉田幸『おかあさんのばか』のメディア展開をめぐって 鳥羽耕史
レイプの位相と男性セクシュアリティ-大城立裕『カクテル・パーティー』と大島渚『絞死刑』のあいだから 高榮蘭
戦争記憶を民話として継承するということ-松谷みよ子等による第二次民話運動の頃を中心に 高畑早希
完結する物語、完結しない声-崎山多美「ピンギヒラ坂夜行」から考える 田村美由紀
第三部 戦後民主主義-運動と傷跡
中野重治「雨の降る品川駅」の同時代史 黒川伊織
カスバ“とよばれた街-一九六〇年代の雑誌メディアにおける<釜ヶ崎>の表象 石川巧
<無力なイエス>と戦後キリスト教界-遠藤周作『イエスの生涯』批判をめぐって 増田斎
全共闘運動の傷跡-東大闘争参加者の「その後」から 小杉亮子
日本特殊論とトランプ政治-一九八〇年代の傷 辛島理人
第四部 ジェンダー、生政治と傷跡
傷を重ねる-森崎和江の聞き書きにみる語り/沈黙/無言 奥村華子
森崎和江『からゆきさん』-傷跡のインターセクショナリティ 佐藤泉
敗戦のトラウマと性的不能、あるいはエロティックな戦争 光石亜由美
サリドマイド事件の傷跡 ホワニシャン・アストギク
妻の崩壊-傷跡としての『成熟と喪失』 坪井秀人
戦後日本の「ケアの危機」-津島佑子「ある誕生」「壜のなかの子ども」にみる子殺しと障害の交差 飯田祐子
社会距離という傷跡-COVID-19の風景 美馬達哉
あとがき 坪井秀人
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