昭和史を歩く
第一章 夢野久作-近代のねじれを背負う
明治の圧力を脱して
死んだ魂の市場東京
玄洋社への共感
反功利主義としての天皇論
近代化路線への異議
第二章 土の教育-ある青年教師の苦闘
殺到する参観者
偉大なる劣等児よ
農民離村の背景にあるもの
学校を変え村全体を変える
教え子の四十七年目の命日に
第三章 爆弾三勇士-軍国神話の裏側
勇士もまた肉弾と化す
国民はなぜ熱狂したか
理想的庶民像
民衆から生まれた神
皇国民であることの証明
第四章 二人の天皇主義者-権藤成卿と葦津耕次郎
土着的心情から反体制へ
国は地図上の色分けに過ぎぬ
功利欲の戦争を排す
国は家族、天皇は家長
国家観を奇形化する
「社稷論」とは何か
第五章 消えたオルグ-ある共産党員の運命
「岡」はスパイなのか
十九歳の少女の役割
「西田は殺された」
死体解剖記録
スパイを突きとめる
第六章 定礼-国民健保の源流
共同体の知恵に学ぶ
「医は仁術」の時代
近代化で存続の危機
医師と患者との全人的関係
第七章 爆発赤痢-「軍部」という巨大な影
大牟田の街に地獄図
水道原因説への抵抗
衝撃の記録を発見
同じ時刻に軍需工場が爆発
赤痢予防錠とは何か
市長自ら人体実験
第八章 火野葦平-庶民にとっての戦争
運命を変えた芥川賞
「兵士」に生まれ変わる
土のような中国農民
戦争作家への上昇と堕落
兵士にとっての共同体
共に死ぬ、ということの意味
戦争責任者リスト
兵隊に何の罪があるか
戦友と自分との戦争
「庶民の戦争」の意味
病死と自殺の間
第九章 強制連行-思い上がった日本
受難の歴史の舞台・筑豊
「我らは皇国臣民なり...」
土地収奪と農民流転
「合邦」から「併合」へ
半日本人・半韓国人
第十章 兵役拒否-ある青年の抵抗と挫折
誰にも決意を告げず
個の意識に徹すること
真空管の中の思想
第十一章 小倉原爆-戦争というものの気まぐれ
第二目標、攻撃可
第一目標は小倉?
小倉がなぜ空襲を免れたか
四十五分間の意味
偶然という残酷さ
第十二章 引き揚げ-博多港での二つの戦後処理
秘密病院
「不法妊娠」
身も心も新しくなって
子供たちの苦難の旅
死を紙一重で免れた孤児たち
故国に帰り五十日の命
第十三章 地底の歌-三十年代筑豊の青春
転々とヤマ移り住み
生きる場に向き合う
燃えあがる恋
手を結ぶ以外に武器なし
無頼に身を投じる時
団結の一瞬の歓喜
入党をためらう
筑豊は全滅した
第十四章 孤立-あるカネミ油症患者の闘い
日本の病根が見えた
近代社会の落とし穴
近代の組織というもの
誰が弱い者の味方なのか
大岡裁きは現代に可能か
叫んでも声が届かぬ日本
第十五章 一揆未発-近代のジレンマの中で
敵は自分の中にある
時代全体に包囲され
金の連鎖から脱落する
ブラックユーモアとしての農業
風穴はあけられるか
終章 近代という迷路
出口はどこにあるのか