金融生活二十七年
第一 銀行初歩時代
何がチャンスとなつて銀行入りしたか
現金扱の失敗して反省の第一歩
第二 十五銀行時代
十五銀行前身の浪速銀行へ轉ず
客へのサービスが送金小切手の誤記を生ず
大阪控訴院の爲替事件鑑定人に指名
なじみ深い爲替事務と別れる
株式相場に手を出して失敗
獨りを樂しむ道樂に轉換する
田舎支店への轉任問題が起る
銀行員氣質はサービス本位に變りない
田舎落が實現して德山出張所へ轉出
得意先開拓に狂奔して預金を增加す
銀行を發展させつつ晴耕雨讀を味ふ
「銀行研究」誌上で水野淳二氏との當座口爭ひ
五大銀行の一を誇つた十五銀行の休業
十五休業の報で預金者に押しかけらる
涙に送られて廣島支店へ現金屆け
大風一過後の店内は超閑散
他からは想像できぬ休業行員の辛さ
朝鮮煙草會社への轉職問題起る
漸くにして不利な整理案發表さる
先手を打つて預金者大會を開く
寒風の中を預金者調印に飛び廻る
預金者調印は全般的に難航を續ける
十五銀行の和議は漸くにして成立
漸くにして待望の再開業の日決定
又しても有力な轉職問題起る
後始末を片付ける爲に私費で上京する
轉職問題につき野村銀行重役に面接
遂に心ならずも十五銀行を去る
第三 野村銀行時代
十五銀行から野村銀行に移るに當りて
野村銀行就職第一日の印象
新參者の悲哀をしみじみと味ふ
野村銀行創業時代を回顧して見る
野村の人事變遷の種々相を見る
形式主義の域を脱せぬ野村の職制
生活に窮して質屋通ひを始める
荷爲替拔取事件で疑惑を受ける
若干の希望を抱いて調査課へ轉ずる
大阪府の協力で信用保證協會の創設
調査課から市内支店へ轉出する
多年の關西生活から東京支店へ轉任
ウソのやうな不況のビルデイング界
愈々野村銀行を去る時機到來する
自信なきまゝ京都無盡界への轉出
第四 無盡業時代
其頃の東京無盡業界は恐慌狀態
勇を鼓し無盡會社の經營に乗り出す
無盡ブローカーの跋扈に惱まされる
あきれる程内紛が續出する會社
スト二重奏で危機寸前に迫る
事業方法と内部機構の改革に着手する
豫期よりも早く經營が軌道に乘る
デコボコを是正して職員待遇改善
手を燒いた使ひ込み職員の處置
整理一段落を機に常務取締役就任
東京無盡協會理事に選擧せらる
會社合同の氣運を釀成する事に努む
大多數の會社は合同問題におびえる
合同に依る不良重役ふるひ落しの要
大藏省支持の大合同に急轉する
大日本無盡會社の名稱で大合同成る
自ら閑職を求めて常任監査役に廻る
故山への疎開を志し遂に業界を去る