戦後日本文化再考
序論(坪井秀人)
第1章 〈戦後〉とは何か
ポスト戦後日本 ベンヤミンの歴史概念を手がかりにして(シュテフィ・リヒター)
近代のなかの「戦後」/「戦後」のなかの明治(成田龍一)
奇妙な併置 マキシミリアノ・コルベと長崎被爆者の神聖化(林志弦)
第2章 占領と検閲
再演される「東京裁判」 一九七〇/八〇年代の江藤淳と映画『東京裁判』(野上元)
コラム 民間情報教育局の調査対象になった文芸雑誌と占領期検閲をめぐる序説(十重田裕一)
三味線と「間の山節」 内田吐夢における「中国体験」の痕跡(紅野謙介)
反転する井伊直弼 「花の生涯」執筆理由と戦争体験(石川肇)
地方を語る/地方で語る 地方雑誌から見る占領期(大原裕治)
第3章 開発主義とアジア
開発主義と東南アジアへ向かう知(辛島理人)
松本清張『北の詩人』再読 林和と朝鮮文学(渡辺直紀)
李珍宇の文学的形象と「半日本人」の思想と(佐藤泉)
歴史の開発 『月の輪古墳』をめぐって(鳥羽耕史)
第4章 戦争の記憶と戦後社会
敗戦後の記憶を掘り起こす 未来の「引揚げ文学」としての津島佑子『葦舟、飛んだ』(木村朗子)
美しき遺品たち 石内都『ひろしま』と戦後日本(五十嵐惠邦)
戦後日本映画の記録と記憶 映画『君の名は』(一九五三~一九五四)の生産/消費のプロセス(北浦寛之)
〈踏絵〉と〈転向〉の交差 遠藤周作『沈黙』と大阪万博キリスト教館出展問題(増田斎)
第5章 セクシュアリティの戦後
マゾヒズムと戦後のナショナリズム 沼正三「家畜人ヤプー」をめぐって(河原梓水)
「オルガスムス」をめぐる「神話」の解体 三島由紀夫[音楽」論(片岡美有季)
傷ついた男性性を問い直す 谷崎潤一郎「残虐記」におけるクィアな欲望の動態を手がかりに(田村美由紀)
大江健三郎『セヴンティーン』と「トルコ風呂」 〈政治〉と〈メディア〉と〈性風俗〉の時代(光石亜由美)
コラム 日本におけるエイズ文学(服部徹也)
第6章 継続する〈戦後〉
自己参加型〈観察/監視〉医療の誕生 戦後日本の健康診断(北中淳子)
女たちの記憶と翻訳政治 多和田葉子『飛魂』を手がかりに(高榮蘭)
足尾銅山と暗闇の修辞学 「負の遺産」をいかに語るか(五味渕典嗣)