スポーツとナショナリズムの歴史社会学
はじめに
第一部 天皇制国家における大衆の国民化とスポーツ・身体
第一章 近代日本における国民形成と兵式体操
第一節 近代国民国家の形成と近代的「身体」の登場
第二節 森有礼の留学と教育思想の形成
第三節 国家主義の教育観と兵式体操の位置づけ
第四節 学校令の発布と兵式体操の成立―学校の兵営化と体操教員の軍人化
第五節 師範学校の「兵営化」と連合運動会における兵式体操
第二章 皇室のスポーツ奨励と明治神宮競技大会の誕生
第一節 国家のスポーツ・体育への関心と本格的な身体管理
第二節 戦前日本における皇室・皇族によるスポーツ奨励とその狙い
第三節 天皇杯・東宮杯の登場と「象徴」の政治
第四節 内務省と文部省の覇権争いと明治神宮競技大会の開催意図
第五節 明治神宮御造営事業と明治神宮外苑競技場の建設
第六節 天皇制絶対主義の強化と高まるスポーツ熱
第三章 近代日本のラジオ体操と「身体」の政治
第一節 国家にとって「身体」とは何か
第二節 公共事業としてのラジオ放送と日本放送協会(NHK)の創設
第三節 逓信省簡易保険局の簡易保険制度とラジオ体操の開始
第四節 学校教育とラジオ体操の国民生活への普及
第五節 ラジオ体操と近代的身体・社会的身体
第六節 ラジオ体操の思想善導と国家主義
第四章 「幻の東京オリンピック」の祝祭性と政治性
第一節 オリンピック招致を取り巻く国際的環境
第二節 東京オリンピック招致過程と東京市・大日本体育協会の対立
第三節 「帝都復興」とイベント都市としての「祝祭性」
第四節 東京オリンピックの政治的利用と皇国ナショナリズムの高揚
第五節 オリンピックの返上と「皇紀二千六百年」の奉祝記念事業
第五章 戦時下における国民体力の国家管理と健兵健民
第一節 戦争と求められる国民体力向上
第二節 総力戦体制下における陸軍の「衛生省」要求と厚生省の成立過程
第三節 厚生省の「健兵健民」政策と管理される国民の身体
第四節 健民運動と排除される国民身体
第五節 日本厚生協会の設立と厚生運動の実施
第六節 戦時下神宮大会の国家主義的支配と国民身体管理
第七節 大日本体育協会と各競技スポーツ団体の侵略戦争協力・抵抗
第六章 植民地朝鮮における皇国臣民化政策と秩序化される身体
第一節 朝鮮総督府による身体規律化政策の浮上
第二節 皇国臣民化政策と皇国臣民体操の普及
第三節 帝国日本支配のシンボル・ラジオ体操
第四節 朝鮮における健民運動と日常生活の規律化
第五節 戦後韓国社会への連続性
第二部 戦後日本におけるナショナリズムとスポーツの諸相
第七章 戦後初期スポーツ改革政策と国民体育大会の開催を通した戦後復興・民族再建
第一節 戦後初期国民体育大会をめぐる様々な思惑
第二節 GHQのスポーツ・体育改革政策
第三節 戦後スポーツ再建における戦前と戦後の断絶・連続
第四節 「象徴天皇制」の公認・浸透と大衆化・民主化構想の失敗
第五節 日本スポーツ界の国際復帰とナショナリズム高揚
第八章 一九六四年東京オリンピックの国民統合と国家意識の高揚
第一節 東京オリンピック招致過程と大規模な東京改造
第二節 東京オリンピックと戦後復興・平和国家の宣言
第三節 オリンピック国民運動と日本人としての自覚と誇り
第四節 「日の丸」「君が代」の浸透とシンボル操作
第五節 沖縄と広島における聖火リレーと祝祭空間の演出装置
第六節 東京オリンピックが残した遺産と変容した「ナショナル」な意識
第九章 戦後自衛隊のスポーツを通した国民浸透作戦と勝利至上主義
第一節 自衛隊の発足とスポーツへの介入
第二節 戦後自衛隊の広報・宣伝活動と東京オリンピック支援
第三節 東京オリンピックにおける勝利至上主義の形成と選手強化策の確立
第四節 自衛隊体育学校の設立と東京オリンピック下における選手像
第五節 自衛隊の国民体育大会協力と銃剣道・ピストル問題
第十章 国民総スポーツ運動の歴史的意味と国民主義エートス
第一節 高度経済成長と日本人の価値意識の変容
第二節 公害の深刻化と住民運動の拡散
第三節 「合理化」進行と国民のスポーツ・余暇要求の拡大
第四節 「新日本体育連盟」の誕生と国民総スポーツ運動の拡大
第五節 民主的スポーツ運動と労働者スポーツ大会
第十一章 日本スポーツにおける異質な「他者」と排外主義
第一節 スポーツ労働移民と「単一民族国家」日本
第二節 Jリーグにおける在日韓国・朝鮮人選手に対する眼差し
第三節 外国人力士に対する優越感と偏狭なナショナリズム
第四節 「品格」と求められる「日本人らしさ」
第五節 二〇〇二年日韓共催ワールドカップ大会と「嫌韓」感情の加速化
第十二章 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの政治性と国家主義
第一節 東京オリンピック・パラリンピック招致過程と日本再生
第二節 「復興五輪」の政治学とその虚構
第三節 オリンピックテロ対策を口実とした「共謀罪」の成立と皇室の政治的利用
第四節 日常化する愛国心・道徳教育と教育基本法の改正
第五節 「心の管理社会」とオリンピック・パラリンピック教育が狙うもの
おわりに
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引