昭和とわたし
- サブタイトル
- 文春新書 1231
- 編著者名
- 澤地 久枝 著
- 出版者
- 文藝春秋
- 出版年月
- 2019年(令和1年)9月
- 大きさ(縦×横)cm
- 18×
- ページ
- 260p
- ISBN
- 9784166612314
- NDC(分類)
- 910
- 請求記号
- 910/Sa93
- 保管場所
- 地下書庫和図書
- 内容注記
- 昭和館デジタルアーカイブ
序 その仕事を貫くもの
時間が忘れ去った人びとを書きとめる/責任の所在をもとめて/かなしみを抱いて/歩きぬくという手法/「昭和」を書く人間になって/基点は「一九四五年の少女」だった私自身/なぜ戦争にこだわるのか/歴史の裏糸として生きた人びとに思う
Ⅰ わたしの満洲 戦前から戦中を過ごして
遠っ走りのチャー坊/祖母は人生初の教師/祖母の汗の結晶をうばった昭和二年の大恐慌/昭和はじまりの十年間/満洲事変につづく「作為」の道/昭和の要人テロを人びとはどう受け止めたか/新天地満洲へ/満洲に渡る前のお正月/裸ん坊で遊んだ日々/最高の美味を味わった夏/満洲の広さと厳しさ/馴れ親しんだ土地/新京小学校同級生の小田島雄志/本のとりこになったのは/先生がもてあますような/満洲にあった配給「カースト」/満鉄の社宅/社宅の庭の百日草/夏の日のアムール河畔/はじめて直面した死/三歳の弟が死んだあと/
植民地のほんとうの顔/平頂山の悲劇/わたしのノモンハン事件/朝鮮半島の加藤清正/開戦の翌日、祝賀会でうたった歌/かわったことがはじまった/女たちは被害者のみにあらず/日本人と中国人で異なった食糧事情/徴兵されたらどうなるか/多産を奨励したドイツと日本/内地の「資源狩り」/心にひろがってくる言葉/M先生のこと/昭和二十年三月、授業停止という国策/敗戦前に死んだ祖母/敗戦の予感もなかった日に
Ⅱ 棄民となった日々 敗戦から引揚げ
わたしの八月十五日/敗軍兵士たちの下着/兵士の集団の匂い/捕虜たちの行進/空疎な〝戒律〟『戦陣訓』/武装解除のすぐあとに/わたしは忘れない/シベリアから来たロシア兵/売り食いのとき/辞書の紙でまいた煙草/中国共産党軍の支配になって/敗戦の翌年春に見た少年/少年開拓団員のにおい/他人事でなく/収容所に辿りつくまで/日本政府、国民のいのちを顧慮せず/苦い歌/帰還船から見た景色/十六歳、人間の誇りが崩れ去ったとき/帰還船の船尾で/帰国のときの「証明書」/わが人生の飢え/責任は問われず/あのとき父は/余計者だったということ/知人から言われた言葉/「在外居留民はなるべく残留すべし」/「満洲観」の根づよさ/「日本がやってなぜ悪い」という理屈/騎手はただ一人だった/私の原罪
Ⅲ 異郷日本の戦後 わが青春は苦く切なく
引揚げ先で火事に遭い/異郷だった日本/戦後に拒絶した三つのこと/防府で出会ったバーグマン/戦後出発資金をどう得たか/東京中がこうだった/大ヒット曲「リンゴの歌」を歌ったひとは/女学生たちがしびれた三船敏郎/敗戦体験としての「麦受難」/陰欝な荒廃にとりかこまれて/丸ビルに行った日/中野重治の詩「歌」に出会って/はじめてこの手にふれた男性は/経理部ではたらいていたとき/「都の西北」の空は美しかった/入党勧告を断って/核兵器廃絶署名をしなかった/無用の人間と思っていたころ/成人式の日にやったこと/二十歳前後に読んだ本/小説は魔力をもって/若き日の証言者/新憲法を受け入れたとき/敗戦で崩壊した「帝国憲法」にある言葉/あの日皇居前広場で/婦人雑誌の編集部への転属/父の責任を受け継いで/夜更けの改札口で/速達で送った退職願/ハンカチーフに慰められるほどに/澄んだ過去
Ⅳ もの書きになってから 出会ったひと・考えたこと
五味川純平の資料助手になって/五味川の父いわく/昭和史研究の教師は新聞縮刷版だった/大江健三郎の忠告/母の突然死/二・二六事件の刑死者がのこしたもの/流血のあとで/テロのほんとうの怖さ/悪玉は軍人のみか/味わった複雑な感覚/それは鍋にのこされた/ためらいながら注文した原稿用紙/昭和四十七年、外務省機密漏洩事件で/若者をかくも大勢死なせた日本/少年兵たちの死が語る実相/ある特攻隊員の遺書/少年特攻兵の血の叫び/ミッドウェー海戦の日米の戦死者を追ってみて/死んだ男たちへの報告/アメリカが認めた仕事/死者と親しくなったとき/敗走兵士が恐れた味方兵/戦地の〝栄養失調〟とは/抱きあう遺骨/座間味の「村民自決」/日本陸海軍にとっての真の恥辱とは/俳句に命を救われた戦争末期の石堂清倫/昭和二十年七月、内閣情報局が削除を命じた箇所/「黙殺」とスターリン/原爆投下を正当化する「口実」/ポツダム宣言の受諾がひきのばされた理由/原爆投下に問う/松本重治の「男だて」/石川啄木に祈る/節子が完成させた啄木の人生/ものかきとしての誇り/身についたヨロイ/話を聞くコツ/混沌をくぐりぬける確かな方法/「自分史」を書くならば/人生の案内人/志村喬夫人の忠告/志村喬がたどりついた境地/高倉健のひと言/青山通りで見かけた藤原義江/平林たい子の断言/佐多稲子の「終の衣裳」/柳家小三治に惚れて/井上ひさしへの約束/小田実が繰り返し言ったこと/北御門二郎が愛したトルストイの言葉/中村哲を誇る/巨きな人、中村哲/大岡昇平への追慕/大岡昇平の口調/日の丸と大岡昇平/大岡昇平の涙の粒は/戦争を知らない人間は/譲れないもの/自分に課したこと/高度成長の人柱/働き者の悲しい祈りに/そんな繁栄はいらない/「知る権利」をから念仏にせぬために/アメリカの同盟軍ということは/貧しさの裏返し/「誰が産むか」と思ってほしい/茨城県東海村臨界事故に寄せて/フクシマを失って/おなじ過ちを繰り返す国/官庁の体質は変わらず/トルストイの言葉/鶴見和子が死ぬ前に言ったこと/今よき日本人は/息するかぎり
Ⅴ 心の海にある記憶 静かに半生をふりかえる
過去は心の海に/自らに問わなくなったこと/温かい場所/赤ちゃんに思う/子供は知っている/その子の父と母へ/子供たちに伝えてほしい/子供たちの報復/親子の合性/神が祝福するいっとき/女の人生の節目/ひそかな思いとかさなった歌/
たとえ有能で経済力があったとしても/五十代に姿をあらわすもの/わたしの癖/「泣き顔」につけこむものあり/どん底から這い出すとき/人は変れる/わたしの心が血を流しているとしたら/傷が刻印されるとき/人生も飛行機も/「苦役」のさきを彩色すれば/ダサくたって結構/「人生の時」に出会ったら/AB型ではあるけれど/心は弱く脆いから/悪魔もすんでいるけれど/それはオパールに似て/時が過ぎてみれば/おんなが人生の囚人になるとき/頼りない絆だから/男女のあいだで稀なこと/結婚にも安泰などない/「時間の学校」の卒業証書/「幸福」という名の虚像と罠/手紙はいのちをもっている/わたしのリクツ/きものを着る効用/きものの手入れをしていると/生きていることが重く感じられるとき/鬱を救ってくれた言葉/悲しいことがあったときほど/リンドバーグ夫人の知恵/「ひとりの繭」に暮らす/ときに「他人の眼」を入れて/一人暮しの赤信号/象眼の鶴と会話する/芸術のもつ力とは/心ときめく器/旅先で逸品にめぐりあう愉しさ/わたしがサンタクロース/標識のない道/結願のとき/言えばよかった/心の底の悲しみは/涙の捨て場所/病むこと老いること/死は怖くないですか、という問いに/死によって/二月の宵の独り問答/祈りの八月/生きのこるひとはいつも/静かに肯定する/わたしの遺言
Ⅵ 向田邦子さん 生き続ける思い出
彼女の特技/電子レンジをもってきて/骨董のわが師匠/いっしょに見たルドン/先輩もの書きとしての助言/真夜中の長電話/「ウルサイッ」と即答し/美味求真のひと/彼女に告げたある後悔/一度きりの対談で/最後の電話/墜落事故の報せを受けた夜/向田せいさんは言った/弔辞の草稿から/あの夜も素足だった/春を知らせてくれる靴/思い出す言葉/銀がしっとり輝く夜に/生きていることがむなしい日には/彼女は時をさかのぼる/よみがえる表情、言葉、その声/届かない土産/ニューヨーク五番街の向田さん/いまでは妹のように/もう一度逢いたい
あとがき
澤地久枝略年譜
澤地久枝・主要作品
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