戦時下の経済学者 新版
まえがき
第一章 河上肇―戦時下の経済思想の「先駆け」
ナショナリスト・河上肇
河上が体験したドイツの戦時経済体制
「奢侈を廃止して資本を生み出す」
貧乏退治のための総力戦
戦時下に引き継がれた河上の思想
第二章 陸海軍と経済学者
国防に利用される経済
陸軍秋丸機関(陸軍省戦争経済研究班)の結成
有沢広巳の総力戦観
秋丸機関が研究した経済抗戦力
よく知られていた日本経済の脆弱性
陸軍は経済学者に何を期待したのか
英米とドイツの経済抗戦力
研究報告はどのように受け止められたか
海軍に集った経済学者たち
戦後への遺産
第三章 経済新体制をめぐって
イデオロギー対立のなかに置かれた経済新体制案
柴田敬―一般均衡理論とマルクス経済学の東郷
柴田が批判したケインズ理論の問題点
資本主義の矛盾の克服へ
なぜ日本経済を革新しなければならないか
柴田による日本経済革新案
新体制運動とその挫折
山本勝市―社会主義者からその批判者へ
ハイエクに先駆けた社会主義への批判
資本の稀少性を出発点として
経済計算のできない社会主義の非効率性
国家のための経済自由主義
統制経済への批判
経済新体制は「旧体制」
政治利用された経済計算論
戦後の柴田と山本―独占資本主義の克服と新自由主義
第四章 思想戦のなかの経済学
思想対策の手段とされた経済学
『国体の本義』の経済思想
「純粋経済」と「政治経済」の対立
方法論としての「純粋経済学」
イデオロギーとなった「純粋経済学」
経済学の「政治化」と「革新派」の登場
大熊信行の「政治経済学」―ラスキン評価と形式論
難波田春夫の「日本経済学」―神話・風土と講座派マルクス主義
日本の特殊性という呪縛
自由と統制のダブルバインド
イデオロギーからの自由?
第五章 「近代経済学」とは何だったのか
「近代経済学」が意味するところ
高田保馬の苛立ち―日本の社会科学の低水準
経済学の混乱から体系化へ
行政官のための経済学
「道具」としての経済学の発展
言論統制下での経済理論書の翻訳
国策に沿っていた経済理論書の出版
ある忘れられた経済学者の果たした役割―荒木光太郎
マルクス主義からの近代主義批判
「近代経済学」が現代に示唆するもの
あとがき
新版あとがき
人名索引