機密費外交
はじめに
ブラックボックスのなかの機密費/戦前は記録されたいた機密費文書/インテリジェンス・接待・広報/なぜ日中戦争は避けられなかったのか?/戦争でも平和でもない
第Ⅰ章 満州事変下の外交官
傍流の中国在勤外交官―満州事変前夜/三人の外交官/本省と現地の対立/特務機関の謀略/朝鮮軍の独断越境/居留民の離反―吉林/大橋の出兵要請/ハルビンからの機密費増額要求/半数が避難民に/関東軍の政治工作/機密費と緊縮財政/幣原外交への不満と批判/
拡大路線と不拡大路線の綱引き/若槻内閣の総辞職
第Ⅱ章 インテリジェンスと接待―ハルビン・上海・奉天
民政党から政友会への政権交代/好機到来/ハルビンの国際スパイ戦/ハルビン総領事館の諜報活動/ゲリラ戦/機密費の半分が接待費―ハルビン/諜報者への支払い/慰問・慰労・弔慰金/高級料亭での接待/コミンテルンへの警戒心/ハルビン総領事館書記生=杉原千畝/
「親軍派」大橋のソ連分析/公使館情報部の設置―上海/「ニューズの一大中心地」/軍部の宴会批判/軍部に対する感情の融和―「宴会招待関係費」
第Ⅲ章 上海事変と松岡洋右
日本人襲撃事件/田中隆吉と謀略/田中の証言/不穏な情勢/「死の街」/重光対白川/松岡特使の派遣/市場としての満蒙/上海の松岡/巨額の機密費/松岡の情報収集活動/上海の最高級ホテルが「御用達」/「絶対極秘」情報の漏洩―対軍部関係/上海の国際スパイ戦/
上海事変下の公使館/軍部との円滑な意思疎通のために/上海事変の戦禍/停戦協定交渉/天長節爆弾事件
第Ⅳ章 リットン調査団をめぐる接待外交
リットン調査団への日本の期待/宮中午餐会/上海の接待外交/リットンと重光の意見交換/認識のギャップ/顧維鈞の満州国入国問題/宴会疲れ/中国の接待攻勢/リットン調査団の再来日/外交と世論・政党/世論に覚悟を促す/満州国承認の遷延策/リットン報告書の前と後/
無効になった報告書/冷ややかな米英の反応/松岡洋右の起用/松岡の満州視察旅行
第Ⅴ章 満州国の理想と現実
関東軍の根城=「満洲屋」/理想と現実のギャップ/外からのクーデタとしての満州事変/事実の脚色―対ソ連インテリジェンス活動/低い信頼度―対中国インテリジェンス活動/大橋と杉原の緊密な連絡/にわか作りの満州国外交部/大橋対現地軍/日本の満州国承認/
満州国国務総理の動揺/祝賀ムード/多事多難/突出する諜報費―上海/ほど遠い安定―吉林/領事館も攻撃の対象に/熱河攻略の準備
第Ⅵ章 日中外交関係の修復をめざして
国際連盟脱退/日中停戦協定の成立/鎮静化する排日・排日貨運動/対日妥協路線を推進する黄郛/「親日派」との信頼醸成/山田純三郎への機密費/対中国情報収集網/在郷軍人会の国旗掲揚への断固たる態度―青島/有吉公使の対中外交/汪兆銘の二大原則/
二〇〇〇円の資金提供―上海における広報外交の展開/プレス・ユニオンと松本重治への機密費/雑誌『上海』への資金援助/白系ロシア人対策―ハルビン総領事館
第Ⅶ章 戦争への分岐点
一九三四年の日中外交関係/秘密結社・藍衣社/それぞれが抱える内部対立/天羽声明の波紋/ダメージ・コントロール外交/四つの問題/広田外相の議会演説/北満鉄道買収交渉/広田=王寵恵会談/大使館昇格/日中親善ムード/華北分離工作/土肥原・秦徳純協定の成立/
二つの三原則/華北情勢の急転
第Ⅷ章 戦争前夜
リース=ロス・ミッションの派遣/ない袖はふれない財政事情/中国の幣制改革/リース=ロスの再来日/華北分離工作をめぐるプロパガンダ戦略/諜報活動と謀略の準備/対中国政策の再検討/「防共」イデオロギーの強調/「日支反共協定」/日独防共協定の影響/西安事件/
対中国政策の軌道修正/外交関係修復の限界/戦争前夜の緊張感
おわりに
外交機密費の特徴/日中関係の歴史的な類似点/三つの歴史的な示唆
参考文献
あとがき