絵はがきの大日本帝国
序章 絵はがきと「大日本帝国」のイメージ
メディアとしての絵はがき/日露戦争とニッポン/多様性と国際色が豊かだった大正期/帝国の拡大と縮小するイメージ/自画像か虚像か
第一章 勃興する島国―北清事変から日露戦争へ
北清事変と欧米列強/北清事変以降の満洲と朝鮮/日本は「小国」か「大国」か/日露戦争の勃発/欠かせなかった神頼みと借金頼み/描かれた戦場の「現実」/旅順を巡る日露の攻防/奉天会戦と日本海海戦/戦勝に沸く日本人と三越/ルーズベルトとポーツマス講和条約/
ロシア兵俘虜収容所と「マツヤマ」/日英同盟の結実/黄禍論とサンフランシスコ大地震/第二の黒船「白船」
第二章 広がる帝国の版図―台湾・樺太・朝鮮
初めての海外植民地、台湾/台湾の東西分断/理蕃政策による「近代化」と「皇民化」/台湾からの内地観光団/台湾の砂糖とバナナ/盤石となる台湾統治/地獄の島「サハリン」の行方/北緯五〇度の国境線/樺太発展の象徴/内地とつながる最北の島/樺太の北方先住民/
内地樺太間の電話開通/韓国行啓から韓国併合へ/新しい日本と古い朝鮮/朝鮮航路と朝鮮博覧会/朝鮮総督府の宣伝媒体/三越に迫った三中井
第三章 極東の覇者―第一次世界大戦とシベリア出兵
先の大戦から得た教訓/短期戦と予測された世界大戦/青島攻略戦の光と影/ドイツから見たニッポン/戦争のアイドルたち/日本艦隊の地中海派遣/戦犯扱いにされたUボート/世界大戦下の俘虜収容所/南洋の珍客と日本観光/「暗黒南洋」から「宝の島」へ/
身近なヨーロッパの街、ウラジオストク/戦争だったシベリア出兵/日本人の大量虐殺「尼港事件」/ポーランド孤児の救済/出兵が招いたロシア難民
第四章 近代日本の可能性―産業発展と豊かさ
人車鉄道と温泉旅行/国際電信の一大転換/製鉄所の黒煙と快適な炭鉱/東北大飢饉と孤児たち/ハンセン病患者をめぐる隔離と隠蔽/世界に羽ばたく加古川の大企業/消費社会の幕開け「三越」/天皇陛下と東京大正博覧会/醸造界の革新とブランド/
世界大戦と震災と「カルピス」/世界に就航する日本の海運会社/南米ブラジル移民からの挨拶状/スポーツ国際交流の源流/家電ブームを牽引した扇風機
第五章 破綻する繁栄―関東大震災の「前」と「後」
第一回国勢調査と多民族国家/平和記念東京博覧会と文化国家への道/皇太子裕仁親王のヨーロッパ歴訪/東京のランドマーク「浅草十二階」/首都圏を襲った巨大地震/被服廠跡の惨劇、吉原の悲劇/被災者と皇室の一体感「天幕村」/国内外に伝播する震災/
震災を打ち消した御成婚/復興から現れた「新しい東京」/「大正十六年」と「昭和三年」/日本初の地下鉄開業/東京オリンピックを震災復興の象徴に
第六章 二つの帝国―満蒙特殊権益と満洲の軌跡
古いロシアから新しい日本へ/満洲大豆と山東移民/日本の大陸都市、大連/張作霖と満洲某重大事件/柳条湖事件から満洲事変へ/名誉ある孤立とリットン調査団/シカゴ万国博覧会の「満鉄館」/満鉄コンツェルンの出現/高速の看板列車「あじあ」/ロシア人の街だった哈爾濱/
ハルビンの白系露人事務局/偽装される「帝国」/強まる日満一体化/笑顔の満洲移民/二つの〝顔〟を持つ満洲航空/二回あった「建国十周年」
第七章 戦争か平和か―「昭和」という名の振り子
日露戦争の残像/聖地としての「旅順」/躍進する大阪と京都の地下鉄/創られた英雄「三勇士」/代理戦争となったオリンピック/関東防空演習を嗤った言論人/イベント化する防空演習/ニューヨークからの人形使節/オリンピックと万博で観光客誘致へ/
親米と親独が混在した「大毎フェア・ランド」/ナチスに魅了された日本人/「反共」と治安維持法/戦前最後の災害報道となった「阪神大水害」/戦争で潤い、軍縮に揺れた舞鶴
第八章 欺瞞と虚栄―日中戦争と太平洋戦争
盧溝橋事件から第二次上海事変へ/兵士に尽くす従軍看護婦/情報統制下の日中戦争/速報された「南京入城」/画家の戦争協力「彩管報国」/戦時下の女性「銃後は私の手で」/迫り来る空襲と防空展/日独伊三国防共協定と鬼退治/援蔣ルートと日独伊三国同盟/
虚飾される「大東亜共栄圏」/家庭のスパイに御用心/米国で描かれた「ジャップ」/金属回収で消えた風景/日本最後の空襲の地
補章 ラップナウ・コレクションから見た「大日本帝国」
ラップナウ夫妻と京都/絵はがき収集の世界と魅力/描かれた「大日本帝国」のイメージ
あとがき
参考文献