「戦意」の推移
第一編「戦意」の推移
はじめに
「戦意」を考えること
「戦意」に対するアメリカ側の分析
特高・憲兵による「民心」調査
明らかにすべき課題
I アメリカ戦略爆撃調査団の「戦意」調査
1「戦意」調査の実施
調査団の派遣と活動
一般民衆からの聞取り
日本側(機関・個人)の調査協力と資料提出
他の戦略爆撃調査団調査報告
「戦意」の定義
2「戦意」変容の分析
「戦意」の急騰から低下へ
空襲と「戦意」
原爆と「戦意」
「戦意」の統制
宣伝と「戦意」
降伏と「戦意」
調査報告から導かれる論点検証のために
Ⅱ 戦時下生徒の「戦意」―文教当局「思想動向調査」から
1 日中戦争期の「思想動向調査」
「思想動向調査」の意義
日中戦争直後の調査
一九四〇年の「壮丁思想調査」
静岡県思想対策研究会の調査
二五%の「厭戦和平待望気運」
九割の「堅実」と一割の「不堅実」
2 アジア太平洋戦争期の「思想動向調査」
開戦の「緊張」
「米英撃滅の意気亦熾」
「戦意」停滞・弛緩の兆し
青少年不良化の傾向
「国家と共に呼吸する態度」
Ⅲ 日中戦争期の「戦意」
1「挙国一体」の「戦意」:一九三七年~一九三九年
反軍気運の底流化
「戦意」の急騰
戦争批判・忌避意識の封殺
高い「戦意」の維持
「戦意」倦怠・低調の表面化
2「戦争倦怠、厭戦気分」の広がり:一九四〇年・一九四一年
「和平待望的気運」の醸成
「社会不安の底流」の広がり
「国民の士気」の発揚へ
Ⅳ アジア太平洋戦争期の「戦意」
1「戦意」の昂騰へ:一九四一年末・一九四二年前半
開戦直後の熱狂
「陰鬱日本の空から陽が照り始めた」
輿論の統制
「止むに止まれざる戦争」
「フサワシク」ない不平・不満への警戒
2「戦意」の弛緩化へ:一九四二年後半・一九四三年
時局認識の深まり
「戦意」弛緩への焦慮
分離する「戦争と生活」への警戒
「敵愾心」の一時的高揚
3「圧戦気分」の蔓延化:一九四四年
長期戦に対する疲労感
「戦意」高揚への焦慮
戦局悪化への不安
「民心の実相把握」へ
4 厭戦・悲観論の高まり:一九四五年前半
空襲本格化の打撃
「強力政治」待望論
「厭戦反戦」気運の濃化
「敢闘精神」の維持
愛知県の「民心の動向内査」
「総浮腰の観」
生産意欲の低下
「大衆思想の悪化」
「敗戦国」の絶望の強調
5「戦意」の急速な低下:一九四五年六月以降
空襲に対する恐怖感情の濃化
六月の御前会議報告
「決戦士気の昂揚」の高唱
「敗北主義的気運の浸透」
「行政査察報告書」にみる「戦意」
「戦意」高揚への最後の期待
「ポツダム宣言」への反応
「敗戦主義的、戦争サボの一般化傾向」
原爆投下とソ連参戦の反応
6 敗戦後の「民心」:一九四五年八月一五日以降
「呆然落胆悲憤慷慨」
軍・政府批判の高まり
「民心」の統制と誘導
無気力化する「民心」
敗戦一か月後の「民心」
「民心」動静視察の継続
V 「戦意」を攪乱するもの
1 経済犯罪
経済警察・経済検察の始動
経済犯罪の焦点化
「経済治安」の観点へ
統制経済崩壊の兆し
「経済治安」の危機
経済犯罪取締の機能不全
敗戦後の経済犯罪取締
2「流言蜚語」
「最も良き指標」
「普遍性、流通性」の認識へ
言論出版集会結社等臨時取締法
『臨時取締法違反事件報告書』
「何等根拠なきに拘らず」・「犯意を継続して」
八・一五前後の臨時取締法の運用
大阪「毎月会事件」
おわりに
「戦意」推移の図解
「戦意」の充満と侵蝕の様相
いかに「戦意」の沸騰を押しとどめるか
第二編 治安体制と現代的課題
Ⅵ「来るべき戦争遂行の準備」に抗するために―治安維持法の悪法性の視点から
はじめに
「来るべき戦争遂行の準備」のために
治安維持法の悪法性という視点
1 治安維持法はどのように悪法だったのか
「悪法もまた法なり」
拷問の日常化
山宣と多喜二の暴露
西田信春の「急死」
朝鮮における適用
「満洲国」治安維持法の猛威
2 議会通過という免罪符の虚構
「国会を通った」論の誤謬
「目的罪」限定の放擲
「法の蔵する伸縮性」の活用
「改正法案の趣旨に準拠」して
悪法性の極致へ
おわりに
治安維持法下の抑圧の失敗
「日本の民主化と治維法」
負の教訓の記憶
Ⅶ 現代の特定秘密保護法と戦前の軍機保護法・国防保安法
はじめに
破防法反対運動を糧に
戦前防諜法規から学ぶ
1 軍機保護法の成立
一八九九年の軍機保護法制定
新聞の批判的報道
「売国奴」報道
2 大正デモクラシー下の軍機保護法改正の試み
処罰規定緩和の試み
軍縮気運の高まりのなかで
3 軍機保護法の改正へ
防諜体制強化への転換
軍機保護法違反事件の頻発
軍機保護法の全面改正へ
新聞各社の批判的論調
改正軍機保護法の成立
総動員秘密保護法案の挫折
4 改正軍機保護法の施行準備
軍機保護法施行規則の施行と改正
新聞社への質問説明会
「軍民の離間」への憂慮
改正軍機保護法の解説書
「満洲国」軍機保護法
5 改正軍機保護法の運用実態
日中戦争本格化直後の運用活発化
『外事警察概況』の見方
「細鱗を捕うる」運用へ
「軍事上極めて高度の秘密を要するもの」の漏洩
軍機保護法違反事件の統計数値
運用「適正」化を求める憲兵隊通牒
軍機保護法の再改正
6「国民防諜」の徹底へ
防諜関係記事の頻出
写真撮影の違反行為
「防諜」観念の定着へ
防課パンフレット
7 レーン・宮澤事件
『外事月報』所収の防諜犯罪
突出した重罪
第一審判決
弁護側の上告理由
なぜ懲役一五年だったのか
北方関係の防諜犯罪
8 国防保安法の制定と運用
軍用資源秘密保護法の施行
国防保安法の施行
新聞の国防保安法協賛
国防保安法違反事件の実例
道徳律的な強制
おわりに
軍機保護法・国防保安法の廃止
軍機保護法・国防保安法の悪法性の記憶
Ⅷ なぜ東京裁判で「特高警察」は裁かれなかったのか
はじめに
1 ニュルンベルク裁判とその後の「ゲシュタポ」の断罪
組織としての訴追まで
ニュルンベルク裁判の開廷から判決まで
ニュルンベルク継続裁判と「非ナチ化」
2 東京裁判における「特高警察」不追及
「組織」の不訴追と「人道に対する罪」の追及の弱さ
法廷において
3 「人権指令」の画期性―「特高警察」廃止と罷免
アメリカの対日戦後政策の形成のなかで
「特高警察」罷免の意義
おわりに
【補論】中国戦犯裁判で「満洲国」統治体制が裁かれた意義
中国における戦犯処罰の構想
瀋陽軍事裁判
戦犯裁判史上の意義
あとがき
索引
「凡例」