欧米映画史 上
一、アメリカ無声映画史(南部圭之助)
映画の誕生(エディスンとリュミエール、米仏のスタート争い)
編集による映画作劇の発見
新旧勢力の争いとスター・システムの発生
イタリア長篇映画の世界征覇とアメリカの驚愕
グリフィスの偉大な技法開発
トライアングル社とインスの功績
映画の構成(ショットからコンティニュアティーに至る)
大スペクタクル「イントレランス」と興業惨敗の悲劇
スター群の展開と映画会社の新旧交替
スターと監督の関係
デミルとトゥールヌールの業績
一九一九年の代表的作品
一九二〇年の絢爛たる展開(モーション・ピクチュア・ニューズ誌のベスト・33)
内からの目と外からの目による作品評価の相違
新しい三会社の鮮明な画面。霊魂映画の流行
三角関係とモラルの解決
舞台裏の映画化が多い―それがアメリカ映画の伝統の背景になる
文芸映画が占めるエリート的位置とヨーロッパ文芸の映画化
海洋映画の流行。アメリカ映画の独占ジャンルとなる
北(カナダ騎馬警官物)はアクション・メロドラマ 南(南海映画)は楽園とロマンス
ダグラス、ピックフォード、ナジモワの独立プロ作品
一流スター群の独立プロ流行。そして無字幕映画「懐しの泉」の出現
シナリオ・ライターは殆んど女性
時代劇映画の流行と剣戟
四人の大監督の凋落と失敗
チァップリンの「巴里の女性」(スポークン・タイトルの例証)
ロマン派の名匠たちと「第七天国」
ジェイムズ・クルーズ。監督による喜劇の開発と偉大なる「幌馬車」
ハーバード・ブレノンの二つの傑作
ルビッチ、そしてヨーロッパ名監督たちの成功と失敗
スティルレルとムルナウの輝やける映画芸術
キング・ヴィードアの大戦争映画「ビック・パレード」
中堅監督の躍進とトーキー時代へ移行の実力
パラマウント新人監督群像とウェルマンの大作「つばさ」
フォン・スタンバーグの三つの力作
絢爛たるスター・システムの展開
無声映画幕を閉じる
二、喜劇の発生と展開(淀川長治)
コメデイ、ファース、そしてスラップスティック
マック・セネットとキーストン・コメデイズ
チァールズ・S・チァップリン
ハロルド・ロイドの世界
バスター・キートン
三、アクションの世界(南部圭之助)
猛闘から始まる。「スポイラーズ」の五回映画化の記録
連続映画がブームとなる
警視庁きびしい取締りで映画観客をチェック抑制
パール・ホワイト、世界のアイドルとなる
アクション映画の衰退
西部劇の興隆とウイリアム・S・ハートの出現
主流路線から疎外された西部劇の二〇年
四、トーキーの発生とアメリカ映画の新展開(南部圭之助)
二つの型式をもった発声映画三〇年の道程と完成
史上空前の経済恐慌時代に映画だけが繁栄し、アメリカ第三位の輸出企業となる
トーキー・初年(一九二九)の混乱と新旧スターの入れ替え
無声・発声交替期のベスト・テン
パラマウント、第一ラウンドを快走「モロッコ」の日本的大ヒット
「市街」と一九三一年の形勢
トーキー体勢を確立し、作品群が多彩化する
五、ギャング映画ブームの背景(岡俊雄)
ギャング映画ブームの背景
ザナック、ワーナーの製作部長となって、ギャング映画にアクテュアリティーを展開
「暗黒街の顔役」ヒットの背景
ブーム以後のギャング映画と新しい角度
六、ミュージカルの世界(南部圭之助)
トーキー初年度はレヴューの全盛
ルビッチのミュージカルとエロティック・タッチ
パラマウントの感覚的ミュージカル。そしてラジオ歌手の導入
「四十二番街」とワーナーのミュージカル群
その他の会社のミュージカル
アステア=ロジャーズの踊るミュージカル
ルビッチの「メリー・ウイドウ」、アメリカ・ミュージカルの最高作品の一つ
MGM二〇年にわたるミュージカル征覇の基礎をつくる
オペラ歌手からディアナ・ダービンに至る
七、ハリウッドの再黄金時代
撮影者(フォトグラファー)の世界
一九三〇年代・中期の情勢
「或る夜の出来事」とフランク・キャプラの台頭
MGM男性派監督とウェルマンの世界
ジョン・フォードと「男の敵」の周辺
ヘクト・マッカーサーの独立プロ
文芸映画が大作の主流となる
アメリカ文芸と映画消化。田園と南部の世界
主流監督の後退とディレクター・システムの退勢
MGM、完全なプロデューサー・システムをとる
演劇との強烈な連帯感
戯曲映画が大作化し、アメリカ映画の強力なバック・ボーンとなる
トーキー時代の喜劇の世界
キァプラの世界とドイツ派二人の名監督の活躍
アメリカ産監督の作品群と三〇年代末期の様相
プロデューサー企画がヒットした二つの話題作
後記(南部圭之助)
著者経歴